畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

連載100-2「昔々の話」(続きその2終わり)

2017-02-24 12:37:18 | 暮らし

 

   昔々の話の続き

 

  明治十二年生まれの祖母の話です。


 他にも信じられない話しも聞かされた。

小出に用事に出掛けた曾祖父はあの「戊申戦争小出島の合戦」に巻き込まれたと言う話を聞いた。

戦が始まり、行き場を失った曾祖父は柳原に有った、ある料亭の傍の大きな柳の木の後ろに身を隠したそうだ。

 

 すると、官軍の赤熊(しゃぐま=薩長軍の冠りもの)を付けた指揮官と思われる侍と、

幕府軍会津藩士のこれまた立派な身なりの大将と思われる侍が、お互いに名乗りを上げて刃を交わし始めた。

 

 曾祖父はそれを柳の大木に隠れて見ていたと聞かされたが、本当の話で有ろうか。

史実から見ると、小出島戦争は慶応四年四月二十七日と有るから、時代的には間違いは無いだろう。

 

 この戦は明け六つ半(午前七時)から五つ半(午前九時)までと有る。

曾祖父は二時間余りの時間、柳の大木の後ろに隠れていたのだったろうか。

 曾祖父の話を知る叔父叔母たちもあの世へと旅立った人が多く、ことの真実を確かめるすべも無くなってしまった。


         (終わり)

   (おかげさまで地方紙と言うか町の新聞『越南タイムス』連載が100回になりました。)

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連載100「昔々の話」(続き)

2017-02-24 05:06:21 | 暮らし

   昔々の話の続き

 

 明治十二年生まれの祖母の話です。

 

その二

 昔、夜道を歩く人々を怖がらせる人魂があったそうだ。夜道の脇にくっきりと浮かび出て、

それを見た村人は震えながら、後も振り返らずに逃げ帰った。その夜道はしばらく人影が途絶えたそうである。

 

 祖母の父、私の曽祖父が繭を町場の問屋まで売りに行った帰り道の事である。

一杯やって帰路につくと山中の村に帰る道中は暗くなってしまった。

 

剛毅な曽祖父は期するところも有ったのであろう。

人魂が出るという噂の場所まで来ると、道から少し離れた林の中に噂どおりに出たそうだ。

 

 豪胆な曽祖父は「狐か狸の悪さに違いない。ここは一つ懲らしめて、

悪戯を止めさせよう」と考えた。持っていた、竿秤の分銅を風呂敷に包み、そっと人魂に近付き思い切り殴った。

 

 十分な手応えに良く見ると、殴ったのは狐でも狸でも無く、古びた木の切り株だった。

曽祖父のおかげで人魂の正体も分り、村人たちも安心して夜道を歩けるようになったと言う。

 

 想像するに、その人魂の正体は古い切り株に生えた、ある種のキノコか、

発光性の微生物だったのではないかと考えている。

今も昔も、話には尾ひれが付くし、つまらない噂話が信じられ、怪談になったりするのは同じ事だと、

怪談話を信じない私は思うのである。

                                       (続くその2あり)

コメント (2)
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