昔々の話の続き
明治十二年生まれの祖母の話です。
他にも信じられない話しも聞かされた。
小出に用事に出掛けた曾祖父はあの「戊申戦争小出島の合戦」に巻き込まれたと言う話を聞いた。
戦が始まり、行き場を失った曾祖父は柳原に有った、ある料亭の傍の大きな柳の木の後ろに身を隠したそうだ。
すると、官軍の赤熊(しゃぐま=薩長軍の冠りもの)を付けた指揮官と思われる侍と、
幕府軍会津藩士のこれまた立派な身なりの大将と思われる侍が、お互いに名乗りを上げて刃を交わし始めた。
曾祖父はそれを柳の大木に隠れて見ていたと聞かされたが、本当の話で有ろうか。
史実から見ると、小出島戦争は慶応四年四月二十七日と有るから、時代的には間違いは無いだろう。
この戦は明け六つ半(午前七時)から五つ半(午前九時)までと有る。
曾祖父は二時間余りの時間、柳の大木の後ろに隠れていたのだったろうか。
曾祖父の話を知る叔父叔母たちもあの世へと旅立った人が多く、ことの真実を確かめるすべも無くなってしまった。
(終わり)
(おかげさまで地方紙と言うか町の新聞『越南タイムス』連載が100回になりました。)