戦死公報(聞き書き)(その1)
パートでお年寄りの送迎運転をして一年近い時が過ぎた。
仕事を始めたばかりは、かなり身上調査をされたのは前述の通り。
しかし、時間の経過とともに警戒心も薄れ、友達付き合いになり気を許してくださる。
還暦を迎えようかと言う男と、平均年齢は八十歳をかなり超える人達とのお付き合いだ。
九十を過ぎても矍鑠とされ、毅然と一人暮らしをされている方もいる。
長い間には御気を許され、気安く話し掛けて下さることもある。
そんな話を記憶にとどめるために書いてみよう。
助手席のおじいさんが、乗ってくる顔なじみのおばあさんに声をかける。
「おはよう。元気だったか。」「あれ、お前さんだね。達者だったてー」
「そうか、そうか」そしておじいさんは誰ともなく話しかけるように私に話しかける。
「この人の弟と戦地で一緒でのう。切ない目をしたいやー」「なんだったの」
「俺が先に内地に帰還する事になってのう。届け物を頼まれたんだよ」
(続く)
(10年も前に忘れないためにと書いておいた文章です)