出会いは大学の図書館
目を引いたのは白い指
書棚の前で何かが揺れていた
その少し上にある本を取ろうとしている事に気付く
取れそうで取れない
手を伸ばして取り「どうぞ」と手渡す
受け取り手は とんでもない美少女だった
黒髪こそ良けれ 緑なし輝くよ
昼に夜に 胸ときめかせ
我 恋うる 君のこと
アタシは まりいのまなざし一つで恋に陥落(お)ちた
その恋は 今も 続いている・・・
醒めることはない
そう たとえ
たとえ
「あ 抜かれた 生意気だわ あのバイク
抜き返してよ
あかんべぇしてやるんだから
タイヤ二つしかないのに負けないでよ」
「うう 何か棒 積んでない? 竹刀とかマジックハンドでもいいわ
それとも何かぶつけてこかしてやろうかしら」
「前の車 とろいわね
あ 黄色に変わったばかりなのに もう停まった
バカだわ
こっちが進めないじゃない」
そう 綺麗な上に こんなふうに とても愛らしい性格なんだ
こちらも慣れたもので半分聞き流している
「ああ疲れた お腹空いたわ」
そろそろ着く時間 軽食とる時間はありそうだった
「ホテル10階でスープでも飲むか」
「とりどりプチ・フールもつけるなら付き合ったげてもよくてよ」
ホテル地下の駐車場に車を入れ エレベーターで10階まで上がる
席に着いてからまりいはくすりと笑った
「入り口近くのテーブルに座ってる水色のシャネル風のスーツ着てるコ ツマコにみとれてた」
「気のせいだ まりい」
「ツマコは男としての自分に自信が無いの?」
断言した「無い」
「男としての人生なんて もうどうでもいいんだ 他の夢があるからね」
「他の夢て?」
「言えばかなわなくなるから教えない」
「ツマコの意地悪 意地悪」
まりいはぷっと膨れた その頬をつついてやりたくなる
まりいの予想通り?料理はたいしておいしくなかった
その分 まりいの知り合いの花嫁はとても綺麗で(まりいには負けてるが) 泥酔男もなかなかイイ男に見えたね
結婚式はいいものだ
まりいも・・・・素晴らしく美しい花嫁だったっけ
見にいったんだ
一度で幸福になってほしかったけどね
二次会で何人か物好きに寄ってきた女性を適当にあしらっていると男の輪の中から 不機嫌な表情のまりいが出てきた
「疲れたから帰る」
「お持ち帰り男性は無し?」
おどけて尋ねると睨まれた
「そういうの欲しくないから 虫よけにツマコに来てもらったのじゃないよ」
疲れたと言った割には 「どっかで飲みたい」と言い出す
一度車を置きに帰り タクシーを呼んだ
きょうび違反と罰金はこわいのだ
近場のホテルの中の店 景色のいい階にあるのへ入る
そこからは海に煌く明かりが美しい・・・そんな夜景が見える
なんでそんな話になったのかわからないが 気がつけば尋ねていた
「どんな男がダメなの まりいは」
「あつくるしく胸の上に手を乗せてくる男 寝息がうるさい男 こちらの気持ちが読めない男」
「でも それは 付き合ってみないとわからない」
「付き合わなくても分かる気がしてた 向こうが相手が分かって当たり前なんだと思っていたの
私は選ばれた人間ーそう信じて思い込んでいたから」
赤い色の酒がまりいの唇の中へ入り込む
「世界中が不幸でもわたしだけはシアワセでいられると思ってた」
そう言うまりいの横顔は ひどく寂しそうだった