夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「繭の見る夢」ー玲ー3´ー

2012-09-17 22:39:53 | 自作の小説

恨みはあるのか
呪う気持ちはあるか 私は自分に問うている
闇に沈んでから
無いとは言えない

闇は寧ろずっと傍らにあったような気さえする

だから差し伸べられた手を 引いてくれた手を 信用出来ず 自分から離してしまった

そうして落ちていく闇に

底へ底へ 沈んでいく

古い記憶に取り巻かれる

声 細い声 母の歌う子守歌

父の呟く外国語

姿すらよく覚えていない両親

カタカタ ミシンの音
音は消えて

姉と二人きり

やがて藤見夫妻が現れる

両親は死んだ 頼まれていたんだと

藤見夫妻の養子となり 穏やかに流れる普通の生活

優しかった藤見夫妻
普通の人間だと思っていた私

藤見夫妻が死ぬ瞬間が視(み)えた

彼らは何か黒いモノに襲われ殺された

私の体は変化し

私は罪を犯した

私は幸せになっては いけない

私のした事が 姉を殺した

誰かが闇に落ち それで 何とか 大切な人達を守れるなら それが私に出来る償い 贖いだ

秋の穏やかな日差し
公文の宿題を居間でしている真

優希さんが何かおやつを作っているらしく甘い匂いがする

私はデスクトップのパソコンを居間に持ち込み 仕事するふりして真を見ていた

歪んではいるが 私たちは家族だった

急に優希さんが走ってくると 真を抱え込んだ

部屋は暗黒に閉ざされ 神経に障る音が満たす

キィキィ
闇の中 何かが満ちてくる
みっしりと びっしりと

ひしめき膨れ上がるモノ達

息もできなくなる

体が締め付けられる

手足が歪む

ああ優希が戦っている

どうやってか闇と

優希の体が闇を弾く

真の体を抱えたまま

優希の体からどうやってか光が出ている
光が優希と真を包む
周囲の闇を焼く

優希の腕の中で真は眠っていた

何処かから助けに来た何かがいて それはまず優希を救い
私へ力を向けた

ーいらっしゃい さぁ こっちよ ー

ー玲 掴め 抜けるぞー

温かいモノが腕を掴む 白い光が伸びてくる

温かく力強いモノには 闇も僅かながら 波打っていた

ー玲 一緒に行こうー
私は逆に残っていた闇を この身に引き受けた

温かく力強いモノは父だった

闇が私達を襲撃する時の為に 闇の一部を残したままでいた

中から闇を弱らせつつ
掴まれた時に 伝わってきた様々な記憶

ああ お父さん!

私は父を闇から完全に吐き出させた

そこで力尽きた

暫く闇の中で眠っていたようだ

ぷっつり玲としての意識が途切れている

暗黒
かそけき微かな細く白い光

揺れて光る

小さな光は私の周囲に結界かバリアのようなものを作ろうとしていた

息をするのが楽になる

光は疲れるのか 時々休んだ

やがて光は話しかけてきたが 第一声は「は~い」だった

か 軽い
「笑いも必要かと思ってー」
第一声は冗談のつもりだったらしい

「あなたは お母さんを覚えていて?」と尋ねてくる

「あたくしはマツエの あなたのお母さんの姉妹よ
あなたから見れば オバになります
あたくしは この種の力がある為に 別の場所で育てられました」

光は自分の正体を明かした

知る限りの両親が駆け落ちした経緯

闇の前に命を投げ出した母マツエ

真と優希が無事なことを教えてくれた

巴弥都というちょっと特殊な家の歴史

闇のよりしろが ある念から狂い始め 見境なくなってきていること

ずっと闇の中に存在するのは疲れるらしく 消えて休んで回復してはまたやってくる

母の姉妹という白い光の操り手は 色々なことを物語り教えてくれるのだった


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