夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

中山七里著「境界線」 〈宝島社文庫〉

2025-01-27 16:22:57 | 本と雑誌

 

映画化もされた「護られなかった者たちへ」に登場した笘篠誠一郎が再び事件を追う

遺体が発見され 笘篠に連絡がくる

震災から7年も経って 

女性の遺体は震災の時に行方不明となったままの笘篠の妻の名前の運転免許を所持していた

だが 遺体は妻とは別人

しかも運転免許証は偽造されたものだった

パニック映画のような大津波のニュース映像

この未曾有の災害で家族を喪った人間は多い

その心の傷口を抉るような事件

そして次に酷い姿で殺された男

顔は半分砕かれ 指は十本とも切り取られている

その男も 震災で行方不明のままとなっている人間の運転免許証を所持して 別人として生きていた

 

身内に犯罪者がいてそのままの名前では生活がしにくい

前科者ゆえ就職できない

ろくな仕事にありつけない

様々な事情で「違う名前で生きることができたら」そう思う人間がいて

震災で行方不明〈おそらく亡くなっている〉の家族の死亡届を出せない人間がいる

その名簿を入手した人間により・・・・・

 

目のあたりにした多くの犠牲者

天災をまざまざ体験

心の何処かが壊れてしまった人間がいる

それでも生きていこうとする人間

生活を立て直し 新しい基盤を築き上げようと

まともに生きていく困難さ

もしも震災が無ければ

家族を喪うことが無ければ

 

哀しい「if」

 

事件は解決し

笘篠は 妻子の死亡届を出すことを決心

彼は一歩進めたのだろうか

 

解説は作家の葉真中顕さん

 

 



最新の画像もっと見る