闇に消える・4
「いいや 誘ってくれる気持ちは嬉しいが 俺は行かない
俺はーお前に絶対に必要な存在ではないよ
いつか必ずお前が絶対に必要で お前にも絶対に必要な者が現れる」
ー追想ー
親しい人間が確実に自分を襲ってくる化け物となったからと すぐさま殺せるだろうか
鳴海には即答できなかった
「大丈夫 お前ならできる」と桂は笑う
どこかで覚悟を決めたのか
ーと トントンと音がする 非常識にもベランダがある窓の外から
鳴海がそちらへ行くと ベランダにあの女性 橘緋真理(たちばな ひまり)が立っていた
「どっから帰ってくるんだよ」半ばぼやきつつ鳴海が緋真理を招き入れる
「起きた頃だろうと思ってな まだ喰われてないか」
冗談か判断しにくい真顔で言う緋真理
「せめて玄関から出入りしてくれ」
「いちいち階段は面倒だし 靴底が減る エレベーターより省エネだ 体力は使わないと落ちる」
「ここまで飛び上がるのを人に見られたら 何と説明する 撮影でもされたら」
「お前は心配性だな まるで年頃の娘持つ母親のようだ 」
鳴海と緋真理のやりとりを聞いていた桂が噴出した
「たいがい鳴海は大雑把だと思っていたが」
「・・・元気そうだ」挨拶するでもなく呟く緋真理
「おかげさまで まだ助けてもらった礼を言ってませんでした 有難うございます」
椅子から立ち上がり頭を下げる桂
近寄って その顎を指であげ 顔色を見る緋真理
「顔色はいいな」
緋真理とまともに目があった桂は少し目をそらす
見る人を畏怖させる美貌
かろうじて桂は尋ねる「僕は人間でいられますか」
「私は神ではない 人の運命はわからない あれらが人にどう作用するのか」
「おい!」
言葉を遮る鳴海に向かい片手を上げる
「私は まだ暫くここに居る 成り損ないを片付けなくてはいけない」
「失礼な言い方かもしれませんがー一体 あなたは何者なんです」
桂の言葉に緋真理は困ったような表情になる
「それが・・・私にもよくわからない・・・」
意外な言葉に疑うような表情になる男二人
ー飢えていた ひどく飢えていた・・・
それが止んだのは 飢えが消えたのはいつからだったか
足りない・・・何かが足りない
欲しい ひどく欲しい!!!!
焼けつくような身を引き裂くような苦しみ
もう それは この身のうちにはないー
「ふふふ・・・嘘ではないんだ 最初からこうした生き物であったのか
昔は人間であったのか
そもそもこの人に見える形が 本当に自分本来の姿なのかもわからない
取り敢えず 今は追う相手がいて それを消すべく動いている
私と全く同じ存在ではないが 普通の人間から見れば 異形といえる存在の者がいた
いつか共に行動するようになっていたよ
その者にはそれでは十分ではなかったのだろう
その者はどうしてか自分と同じ存在を増やそうとして 何を間違ったのか失敗し 相手に喰われてしまった
成り損ないは強い力を得て・・・仲間を増やしたい気持ちばかりは強く・・・さらなる成り損ないを増やし続けている
誰にとっても幸せなことではない」
緋真理の言葉を受けて桂は こう尋ねた
「ならば何故 あなたは僕達を助けてくれた 人間の側に立っているんです」
「昔 ある人間と出会った
私は自分と同じ存在を捜し続けていて
そこで今回のとは違う化け物に出会った
その化け物と渡り合っている強い人間が居た
その人間に 私は助けられたんだ
もう・・・死んでしまって この世には居ないけれど
それで 私にも護りたいモノができた」
ひどく美しい生き物がいて それは自分は人間ではないーと言う
しかし人の言葉を話すのだ
その目的は狩り 増える化け物退治
大元を退治するのだと
「僕達に何か手伝えることはないのか できることは」
二人の男は同時に同じ言葉を発し 互いの目を見た
「いや・・・居場所を提供してくれるだけでいい ここに居てもいいか」
「もちろん」と男二人は笑う
男二人は化け物たちを見た
「多分 役人達も化け物の存在は知っているんだと思う
だから出られないようにまではした
人が入れないように囲いもした
でも その先がどうしたらいいか決められずにいる
化け物の存在を人々が知ればパニックになる
しかしー方針は決まらないーと言ったところか」
桂の言葉を鳴海が受ける
「それでは手遅れになる 会議は踊り続け 犠牲者は増える」
「私は まどろっこしい見解とやらに従う必要はないのでな」
緋真理は鳴海が買い足しておいた期間限定ジュースを味わっている
その後 桂は人間のままでいる
桂は自分が調べた資料を緋真理に提供した
緋真理は立ち入り禁止区域を調べ続け そこを徹底的に破壊した
これまで立ち入り禁止区域になった場所の移動から 化け物の大元が出そうな場所を予測しようとも
少しずつ相手を追い詰め
それは相手にも 自分が追われていることを気付かせることになる
「いいや 誘ってくれる気持ちは嬉しいが 俺は行かない
俺はーお前に絶対に必要な存在ではないよ
いつか必ずお前が絶対に必要で お前にも絶対に必要な者が現れる」
ー追想ー
親しい人間が確実に自分を襲ってくる化け物となったからと すぐさま殺せるだろうか
鳴海には即答できなかった
「大丈夫 お前ならできる」と桂は笑う
どこかで覚悟を決めたのか
ーと トントンと音がする 非常識にもベランダがある窓の外から
鳴海がそちらへ行くと ベランダにあの女性 橘緋真理(たちばな ひまり)が立っていた
「どっから帰ってくるんだよ」半ばぼやきつつ鳴海が緋真理を招き入れる
「起きた頃だろうと思ってな まだ喰われてないか」
冗談か判断しにくい真顔で言う緋真理
「せめて玄関から出入りしてくれ」
「いちいち階段は面倒だし 靴底が減る エレベーターより省エネだ 体力は使わないと落ちる」
「ここまで飛び上がるのを人に見られたら 何と説明する 撮影でもされたら」
「お前は心配性だな まるで年頃の娘持つ母親のようだ 」
鳴海と緋真理のやりとりを聞いていた桂が噴出した
「たいがい鳴海は大雑把だと思っていたが」
「・・・元気そうだ」挨拶するでもなく呟く緋真理
「おかげさまで まだ助けてもらった礼を言ってませんでした 有難うございます」
椅子から立ち上がり頭を下げる桂
近寄って その顎を指であげ 顔色を見る緋真理
「顔色はいいな」
緋真理とまともに目があった桂は少し目をそらす
見る人を畏怖させる美貌
かろうじて桂は尋ねる「僕は人間でいられますか」
「私は神ではない 人の運命はわからない あれらが人にどう作用するのか」
「おい!」
言葉を遮る鳴海に向かい片手を上げる
「私は まだ暫くここに居る 成り損ないを片付けなくてはいけない」
「失礼な言い方かもしれませんがー一体 あなたは何者なんです」
桂の言葉に緋真理は困ったような表情になる
「それが・・・私にもよくわからない・・・」
意外な言葉に疑うような表情になる男二人
ー飢えていた ひどく飢えていた・・・
それが止んだのは 飢えが消えたのはいつからだったか
足りない・・・何かが足りない
欲しい ひどく欲しい!!!!
焼けつくような身を引き裂くような苦しみ
もう それは この身のうちにはないー
「ふふふ・・・嘘ではないんだ 最初からこうした生き物であったのか
昔は人間であったのか
そもそもこの人に見える形が 本当に自分本来の姿なのかもわからない
取り敢えず 今は追う相手がいて それを消すべく動いている
私と全く同じ存在ではないが 普通の人間から見れば 異形といえる存在の者がいた
いつか共に行動するようになっていたよ
その者にはそれでは十分ではなかったのだろう
その者はどうしてか自分と同じ存在を増やそうとして 何を間違ったのか失敗し 相手に喰われてしまった
成り損ないは強い力を得て・・・仲間を増やしたい気持ちばかりは強く・・・さらなる成り損ないを増やし続けている
誰にとっても幸せなことではない」
緋真理の言葉を受けて桂は こう尋ねた
「ならば何故 あなたは僕達を助けてくれた 人間の側に立っているんです」
「昔 ある人間と出会った
私は自分と同じ存在を捜し続けていて
そこで今回のとは違う化け物に出会った
その化け物と渡り合っている強い人間が居た
その人間に 私は助けられたんだ
もう・・・死んでしまって この世には居ないけれど
それで 私にも護りたいモノができた」
ひどく美しい生き物がいて それは自分は人間ではないーと言う
しかし人の言葉を話すのだ
その目的は狩り 増える化け物退治
大元を退治するのだと
「僕達に何か手伝えることはないのか できることは」
二人の男は同時に同じ言葉を発し 互いの目を見た
「いや・・・居場所を提供してくれるだけでいい ここに居てもいいか」
「もちろん」と男二人は笑う
男二人は化け物たちを見た
「多分 役人達も化け物の存在は知っているんだと思う
だから出られないようにまではした
人が入れないように囲いもした
でも その先がどうしたらいいか決められずにいる
化け物の存在を人々が知ればパニックになる
しかしー方針は決まらないーと言ったところか」
桂の言葉を鳴海が受ける
「それでは手遅れになる 会議は踊り続け 犠牲者は増える」
「私は まどろっこしい見解とやらに従う必要はないのでな」
緋真理は鳴海が買い足しておいた期間限定ジュースを味わっている
その後 桂は人間のままでいる
桂は自分が調べた資料を緋真理に提供した
緋真理は立ち入り禁止区域を調べ続け そこを徹底的に破壊した
これまで立ち入り禁止区域になった場所の移動から 化け物の大元が出そうな場所を予測しようとも
少しずつ相手を追い詰め
それは相手にも 自分が追われていることを気付かせることになる