Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

エンジェル

2008-01-10 | 外国映画(あ行)
★★★★ 2007年/フランス 監督/フランソワ・オゾン
<テアトル梅田にて鑑賞>
「絶対にお近づきになりたくないオンナ」



大好きなフランソワ・オゾンの最新作。まず舞台がイギリスってことで、英語なんですよ(当たり前ですが)。やっぱりオゾン作品はフランス語で見たいなあ。というのも、言葉遊びってフランス語の方が豊かなイメージがあるのね。それに嫌みをいっても、フランス語の響きで緩和されるところがあるでしょ。オゾンのような男女の駆け引きとか皮肉めいた言い回しなどはフランス語で聞いてこそ、本来あるべき姿に感じられる。それから、女流作家の一生ってことで全編文芸作品的なテイストで、これがあまり私の好みではなかったかな。

さて、原作があるってことですが、主人公のエンジェルは、オゾンが彼女を描こうとするのも納得!というほど、女という生き物の嫌な部分だけを抽出したような人物設定(笑)。もし、私が近くにいたら、私なりの女の本能で彼女には絶対近づかないな。巻き込まれたら最後、とことん相手を振り回すような女だもん。エンジェルに一目惚れされたエスメは、一目会ったその時点から御愁傷様という感じ。

本作を見て私はガス・ヴァン・サイトの「誘う女」を思い出した。スザーンって言うすさまじい自己顕示欲の持ち主をニコールが見事に演じていたけど、エンジェルも今の時代なら間違いなく精神障害じゃないかしら。彼女の人生を支えているものは空想ではなく、妄想。実の母親が死んだ後、食料品店の店主だった彼女を「偉大なピアニストでした」と涙ながらに語るシーンはかなりイタいんだけど、見方を変えれば結局真実の何か、例えば愛とか友情を得ることは絶対にないわけで哀れな女とも見える。まあ、妄想だけでベストセラーが書けるんだから、文才はあるんだし、あれだけ奔放に生きるのもそれはそれで幸せなのかしらね。ただ、エンジェルというキャラクターが観客を強く捉えるには、主演のロモーラ・ガライは今一歩という感じかしら。

終盤、夫の愛人に会いに行く時のエンジェルはやつれ果てて髪の毛もボサボサで真っ青な羽飾りのついた帽子をかぶってまるで海賊のような出で立ちで出かけるワケ。ところがね、このエンジェルのファッションがとってもクールなの。それまでのエンジェルは大金持ちでいいもの着て、幸せの絶頂にいるんだけど、その趣味の悪いこと、悪いこと。不幸になってからイケてる女に見せるってのは、何ともオゾンらしいかも知れませんね。