Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

マッチポイント

2008-01-26 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2005年/イギリス・アメリカ・ルクセンブルク 監督/ウディ・アレン

「ウディ・アレン、まだまだ現役!」


デ・パルマの「ブラック・ダリア」、そして本作ウディ・アレンの「マッチポイント」。奇しくも同じ「魔性の女」という設定でスカーレット・ヨハンソンが出演。デ・パルマの「ブラック・ダリア」がムード満点でありながらもサスペンスとしては肩すかしであったのに対し、本作はスカーレットの魔性の女像を存分に活かしつつ、サスペンスとしても最後の最後までスリリングに見られる。正直、ウディ・アレンがここまで上質なサスペンスを作れるなんて驚いた。

サスペンスと言っても巧妙なトリックがあるわけではない。でも、クリスとノラの行く末がどうなるのかラストの30分くらいは実にドキドキ。やっぱりサスペンスって、これくらいシンプルでいいんだよね、なんてことも再確認させられた。サスペンスたるもの、ラストにはしっかりオチをつけてくれないと、という当たり前の要望がなかなか叶えられない昨今。実に小気味いいオチがきちんと用意されている。しかも、ウディらしい粋な展開で思わずニヤついてしまう。

妻と愛人の狭間で言い訳づくしの男、クリス。もうちょっと計画的に将来を考えろよって、ことなんだけど、よく考えるとこの言い訳男ってウディ・アレン作品によく出てくるキャラなのね。ウディがしゃべればいつもの機関銃トークになるその場しのぎの口からでまかせ。だから、体裁はサスペンスだけど、振り回される男が主人公ってことを考えれば実にウディらしい作品なのかも知れないです。そして、スカーレットの魅力が炸裂。特に登場シーンの妖艶さはどんな男でもイチコロですな。

人生は「運」次第。それをネットにかかったボールで表現するあたりも洒落てます。成り上がり男が不倫して、言い訳三昧のあげく、女とどうケリつけようか、なんて泥臭いお話が、ウディの手にかかるとこんなに都会的で洒落たお話になるなんて。しかも、上流社会らしい気取った会話や美術館などのハコが物語にも存分に活かされていて、ロンドンでの撮影が初めてとは、とても思えない。ニューヨークを舞台に繰り広げられる男と女の物語、という彼の持ちネタ以外にまた新たな方向性が芽生えたようで、ウディ・アレン、まだまだやるじゃん!と見直しましたです。とっても面白かった!