Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

死ぬまでにしたい10のこと

2008-01-22 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2002年/カナダ 監督/イザベル・コイシェ

「もしも私だったら…を放棄した方が楽しめる」


医師から余命2ヵ月の宣告を受けた23歳のアン。病気のことは誰にも話さないと決心し、死ぬまでにやりたいことをノートに書いた彼女は、その一つひとつを実行していくのだった…。

これは、おとぎ話なんじゃないのかな。だから「もしも私だったら…」という思いが頭をよぎると、この作品の雰囲気を十分に味わうことは難しいのかも知れない。「私なら」と考えてしまう人が多いのは、タイトルのせいもあると思う。私だって思わずノートに書きそうになったもん。でもですね、あれあれ?と思ったきっかけは、「誰か他の男を夢中にさせること」って書いたら、すぐにお目当てのセクシーな男が現れるでしょ。それをきっかけに、そんなにうまいこといくかいなってくらい願い事が叶っていく。そこで思ったわけです。これはおとぎ話なんだと。

この物語のゴールは「死」なので、どうしても道徳的な判断をしてしまいがちだけど、そこはいったん横においておく。で、物語のありのままを受け止めながら見ていると、ささやかな日常、それも限られた時間の中で主人公が一つひとつの願いをクリアしていくことを微笑ましく見守ることができる。もうすぐ死んじゃう女の子なのに、いいなあ~なんて羨ましくなってくる。そう、この主人公は女性と言うよりも「女の子」と呼ぶべき少女性を持っている。これもおとぎ話だと思える一因。気持ちを落ち着けるために病院でお医者さんからキャンディもらうでしょ。こういうところも、実に少女っぽいの。

若くして結婚し、定職のない夫に子どもを抱えてトレーラー暮らし。すごくけなげに毎日を生きてる。なのに、余命2ヶ月。でも、彼女の願いは確実に叶えられていく。これは、まるでシンデレラじゃない?「むかし、むかし、あるところに貧しいながらも毎日を一生懸命生きている女の子がいました。でも、その女の子は不治の病になってしまいました。そこで女の子は死ぬまでに10の願いを叶えたいと思いました。すると魔法使いが現れて…」って感じかしら。

他の男の人と寝たことがないからしてみたい、なんてのも、考えてみれば実に子どもっぽい発想。だから、「もしも私なら…」という現実世界に引き入れずに、見る。そうすると、小さい女の子が夢を叶えていくようなロマンチックな雰囲気にあふれた映像にとても引き込まれる。願い事が叶うという女の子なら誰でも夢見るストーリーだけれど、お話の締めくくりは「そして、女の子は死んでしまいました」ってこと。だから、願い事が叶えられたことへの安堵と切なさがいりまじった素敵な余韻に浸れるのです。