Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ブラック・ダリア

2008-01-24 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2006年/アメリカ 監督/ブライアン・デ・パルマ

「オンリー・ムード」


デ・パルマファンゆえにつまんない!という巷の感想に抗おうと思ったんだけど…。これは、やはりサスペンスクライムとしての形を取っている以上、つまらない評に対して擁護できない部分の方が大きいなあ。まず犯人探しにおいては、犯人を含めた人物関係の描写が浅くて、謎が明らかになったカタルシスが全然味わえない。これは、デ・パルマ作品だから見るという人ではなく、サスペンスとして本作に期待した方がつまらないと評するのも当然だろうと思う。

でね、このオチ、つまり犯人そのものに関しても、何だか時代遅れなキャラクターなんだよね。あんまりびっくりしないというか。あ、そうって感じでさ。

この物語が犯人捜しよりもむしろブラック・ダリア事件にのめり込んで行くリーと、ふたりの女に翻弄されるバッキーの心理状態を描きたい作品だというのは、十分わかる。でも、なかなかこの二人に感情移入できない。その徹底的な欠陥は、「殺された女とマデリンが似ていない」ということではないかと思う。

物語では似ているという設定だけど、どう見てもヒラリー・スワンクは似ていない。だって、私はケイのセリフで初めてマデリンが殺された女に似ているんだってわかったんだもん!惨殺死体に瓜二つの女と肉体関係を持ってしまうところがミソなんでしょ。だったらいっそのこと、ヒラリー・スワンクの一人二役にすれば良かったのに、と思う。リーがなぜこれほどブラック・ダリア事件にのめり込むのかも伝えきれていないし、出所してくるデウィットとリーとケイの関係もブラック・ダリア事件に絡むのかと思えば、そうでもない。

俯瞰のカメラやらせん階段のシーンはデ・パルマらしくてカッコ良かったし、レズビアン・バーなんて設定もエロティック・ムード炸裂で面白かった。でも、ここまで話の整理がつけられていないと、そっちに気持ちが集中できない。惨殺事件はあくまでも引き金であって、リーとバッキーの揺れる心をあぶり出す、そんな脚本がきちんと書けていたら、この仕上がりにはならなかったと思う。残念。ただね、同じ原作者の「L.A.コンフィデンシャル」は実に評判の高い作品だったけど、実はこれ、私はあまり好きでない。つまり、元々アメリカのこの時代背景の物語って、好みじゃないの。それも、楽しめなかった一因かもなあ。