うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

書き込み予告です。--天王洲アイルを訪ねる。

2009年01月22日 06時46分10秒 | 天王州アイル Project

先日の午後、思い立って天王洲アイル(TENNOZ ISLE)を訪れた。このエリアを都市再開発として計画し、工事が完了しすでに十数年経った。
  所在地:東京都品川区東品川二丁目地先

 わたしは、この計画に対し当時から不動産取得の経過、開発協議会の開催のながれ、総工事金額を含めていろいろな情報を持っている。また事業者が変わったり、所有者の移転、そしてこの地域の会社人事面、リピーター・来場者層、自然景観の変遷を見てきた。しかし、ここではわたしの担当分野である“植栽計画、施工”に限り情報をオープンにしていきたい。

 わたしは天王洲アイルの核心部分の開発計画にたずさわった。以下に、箇所名を竣工順に列挙してみる。なお、各敷地内、建物の地区公園、パティオ、屋上庭園、人工地盤緑地を含んでいる。()の名称は現在のもの。
 1.東京MIビル(天王洲ファーストアワー・TFT)
 2.中央広場(緑の広場)
 3.BCT=UBEプロジェクト(シーフォートスクエア・SFS)
 4.都道18号線
 5.三菱商事天王洲ビル・MCT(スフィアタワー天王洲・STT)
 6.区道3号線
 7.品川共同ビル(JALビルディング)
 8.天王洲ふれあい橋
 
 植物は塩分に弱い性質がある。そのために事前に大井競馬場内にスペースを借りいろいろな植物を集めその経過を数年がかりで観察した。その試験植栽のデータを天王洲アイルに反映させたものだ。わたしは、そのころの“植栽計画”の当事者であり、また、10年間はここの会社で日常的に仕事にいそしんだ所だ。
 この機会に、そのころまとめた技術資料をふくめてこれから10回ぐらいの連載でご紹介していきたい。天王洲アイルはどういう場所なのか、今はどうか、を画像と文章でくりひろげていきたい。

 ここは、上方を羽田空港とJR浜松町駅を結ぶ東京モノレールの軌道が走り、右手に各棟からのブリッジ、天王洲アイル駅があり地上部の入口である。手前が ≪緑の広場≫のゲートエントランス、高速道路横羽線の下の都道の横断歩道を渡ると、≪シーフォートスクエア(緑の砦・SFS)≫メインエントランスになる。
 言わば、この付近が天王洲アイルの中枢であり正面の顔である。


≪緑の広場≫から、北西方向≪天王洲ファーストタワー(かつての東京MIビル)≫、を望む。


天王洲アイルの最南端に位置する、≪JAL本社ビル≫の地区公園。

                                
【植栽計画・植栽工事--プランの要旨.監理上の留意点】     
 この天王洲アイルの開発計画は, 日通サービス㈱グループの不動産部門の会社である東洋土地建物㈱が扱った物件である。かつての東京油槽倉庫㈱の敷地を今のSFSと緑の広場とSTTとを, 東京MIビル用地と等価交換する土地のとりまとめと仲介事業が発端で開始された。 同グループの一員であるわたしたちも加わる。設計協力として設計事務所(㈱アール・アイ・エー), およびゼネコンの設計(佐藤工業㈱) に側面から造園計画を担当することになった。施工段階にも樹木材料の調達ととも, それぞれのゼネコンの協力施工業者として名をつらねた。
 法的な開発計画の天王洲アイルの全体設計のもとで総合設計制度が適用になり,用途地域. 飛行高度制限. 土地利用計画. 公開空地. などの規制があり,外構計画のなかに新規に緑地が設けられた。公共に提供する敷地として, 新設の公園. 道路, 既存道路の街路改良計画. 人道橋があり全て自費工事扱いである。
 この開発する敷地の外周地域は東京湾につらなる運河に沿って国土交通省(旧建設省)の管轄である。岸壁は近年造られた直立護岸と, いわゆるお台場は神奈川県の真鶴石, 静岡県の伊豆石を用いて江戸時代末期の幕府の戦略的な要塞目的で築造された石積護岸になっている。これは計画的に一部復元されている。
外構計画の意匠はアメリカ東部海岸のウォーターフロントに見るバッテリーパークとボードウォークを,JALビルディングは北海道の札幌市内の『サッポロファクトリー』に着想を得ているとおもわれる。
わたしども当社のあつかった工事物件は, 各ブロックの街路計画にもタッチしており,植栽計画を中心にして設計・施工の業務を担い, その内容は次ページ以降にまとめている。総合すると, 当社の受注工事金額は当時の3億4百万円になる。
`植物' が市民生活に及ぼす影響の度合いを考慮に入れる植栽計画は, 利用者. 鑑賞者の意識部分に対するパースペクティブ的扱いにより, 日常の生活上に本来あるべき植生を重視したり本来ない植物設計になったりするものである。植物設計の特徴としては, 悪く言えばごった混ぜ, 植物材料は亜寒帯から亜熱帯性の気候帯に生育する新樹種の採用など樹種数の多さは植物園と揶揄されたところであるが, 意匠の整合性ははかったつもりである。
 また樹木の耐潮性の問題については,台風被害の現場を西日本の各地で見かけたせいで造園樹木の代表的な樹種であるケヤキとクスノキは排除している。これに関連して東京都港湾局. 学会誌などで海浜植栽の資料. データを渉猟したり,東京湾岸の植栽地の現地踏査を重ねてきた。および精力的に日本各地の自生地である山林. 栽培地である圃場の樹木材料探しをおこなう。
北海道の札幌市近郊の北広島. 早来町ではかえで類の北方系樹木, 帯広市 .上士幌町ではハマナスなどとともにコニファーのグラウンドカバー, 国有林の山にてえぞやまざくらの株立ちを集める。パーゴラに這わせるやまぶどうは岩手県北部の山林で掘らせた。材料の集荷地でもある関東地方では千葉県の富里町. 成田. 八街. 木更津の各市, 東京都内では小金井市. 調布市では一般的なやまももなど,つつじの低木, 埼玉県狭山市では仕立物のあきにれ, また静岡県の富士宮市ではすだじいを見てきめる。西日本の岡山県新見市では赤松の山林に入りそよごの自生木を二度にわたり検分し, 四国では香川県高松市鬼無でオリーブ林を見学した。九州の宮崎県川南町でたぶのきとやまももを, 鹿児島県出水市. 高尾野町でほるとのき, 熊本県の天草下島. 牛深市でモリシマアカシア,フサアカシアを圃場にて確認した。
以上を踏まえつつ, 同時に各樹木の耐潮性の有無を検証するために試験植栽をおこなってきたが,この考察の内容は後ほど詳しく触れることにする。
 圧密変化を促す地下躯体がらみの盛土材の山砂以外は, 客土計画としては緑地への埋戻し用土を植物のための全面客土とし場外からの購入土とした。客土材料の設計について, 黒土は保水性に難があるために, 関東ローム層のなかの赤土を植栽基盤材料のベースにしている。その赤土にパーライト系( 真珠岩) の人工軽量骨材を20~30% 封入して土壌の団粒化を促し理学性を改善して, 地中微生物の活動の活性化を促進している。SFSにはバーク堆肥と保水剤を前記土壌に攪拌して使用した。
 支柱計画は, 季節風. 局地風に耐えて塩分による腐食が少ない頑丈な支柱形式にする。埋設しっ放しになる地中支柱については, 美観的に目立つところ. 人の動線に支障があるところに使用している。しかし植栽場所によっては強風によりそれのみでは支持できない樹木もあり,従来の二脚鳥居組合せ支柱などの強固な支柱と併用した。
 植物に対する散水計画は, 自動散水設備を植栽計画当初から導入を提案した。手撒き散水の所要時間. メンテナンスコストを検討すると, どの位合理的なことかとおもう。潮洗い用の樹冠散水とともに植物への水やりの形態として効率的な地表ドリップ(点滴)を採用した。このシステムは当時それほど普及していなかったとおもう。いずれも散水時刻は, 来訪. 集客タイムをずらしAM02:00 ~ 06:30の時間帯にセッティングして自動的に散水量が制御されて供用に至っている。
 また, 利用者の鑑賞上の便宜を考慮して樹名板を取り付けた。
 植物設計の可否, 施工時の苦心した点については以下の点があげられる。

  ・・全体・・
 * 一部の工事場所を除き, 植栽工事は全体工程のなかではどうしても後廻しになりがちであったが, 図面による綿密な植栽位置の確定と入念な施工打合せにより, 樹木の配植構成も当初の計画の狙いどおりにいき緑地表面もほぼ満足できるものになった。
 * 外構工程のなかで他の外構工事, 特に石張り.舗装. 電気工事にからんだ客土搬入時期の取り合いは仕上げのこともからみ気を使った。
 * ホルトノキは港区役所が天王洲アイルを見にきて新樹種として区内の街路樹として採用している。
 * 結果的に, 海浜部の植栽工事としては比較的枯損した樹木が少なかったと判断している。幾分, 密に計画した植栽数量も緑地全体にその後の自然淘汰による減少は見られない。内陸部の植物よりも厳しい気象のストレスを受け樹木の枝幹部の肥大スピードが遅いものとおもわれる。
天王洲アイルの植栽計画については,建築設計事務所のもとで全体設計に加わったが,わたしは設計方針として施主ごとに建築物の植栽計画においてそれぞれ異なるイメージ. 趣向をめざした内容にして個々の性格を持たせたつもりである。そのことを, 設計者という立場で言うことが許されるとしたら,例えとして日本文学の古典である万葉集の和歌で言う作者不明の『詠(よ)み人しらず』を意味している。

 現在の状況はどうなっているか、とりあえず、下のサイトをクリックしてみてください。
     天王洲アイル

◆◆建築設計、コンサルタント、ランドスケープデザインの事務所の方々へ◆◆◆
【手元の参考資料】
 ・「天王洲アイル・メモランダム 平成14年 3月28日発行 事業主へ提供」
 ・「天王洲アイル・品種名調査報告書(サクラ・ツバキ・オリーブ)平成13年 9月発行 事業主へ提供」
【出版書籍】
 ・「東京人- 東京湾ウォーターフロント特集号 緊急増刊 昭和62年10月1日発行 (財)東京都文化振興会」
 ・「新建築- 都市空間へ-RIAの計画と技法 臨時増刊 平成 8年11月発行 ㈱建報社」
 ・「都市再開発- 建築計画・設計シリーズ32 平成 8年11月10日発行 ㈱市ヶ谷出版社」

 ほかに、天王洲アイル開発計画に関する建築設計図書・その後の経過等の資料など、お問い合わせ、ご質問に際して、連絡方法は下段のコメント(0)をクリックするか、少々面倒ですがこちらのH・P 有限会社グリーンワークスから入り、お問い合わせフォーム、メール等でお願いいたします。
        
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