『ハーランズ・レース』 パトリシア・ネル・ウォーレン著 北丸雄二訳
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先日読んだ『フロント・ランナー』の続編。
1974年に『〜ランナー』が発表された当時も熱烈な読者たちから続編を求める声はあったそうだが、実際にこの『〜レース』が書かれたのはそれを下ること20年も後のこと。
その間にアメリカのゲイをとりまく社会環境はがらりと変わってしまった。人権運動の沈静化、エイズの出現、世論の保守化、宗教過激派の台頭。70年代がアメリカのゲイ社会の春だとするなら、それ以後の20年(いやもっとか)は真冬に逆戻りするような時代だった。
『〜レース』では『〜ランナー』のラスト、モントリオール・オリンピック陸上男子5000M決勝の最後の直線で、主人公ハーランの夫ビリーが狙撃されて即死した、その場面から始まる後日談が描かれている。
ぐりは個人的には『〜ランナー』より『〜レース』の方が好きだ。
部数からいえば定石通り続編は一作目ほどには売れなかったそうだが、小説としては続編の方が遥かに成熟度が高い。文体も情景描写も『〜ランナー』とは比較にならないほど洗練されているし、とくに主人公の心理描写には同じ作家のものとは思えないほど深みが増している。20年ものタイムラグがそこにはっきり感じられる。
読んでいて単純に楽しかったのは明らかに『〜レース』の方だった。21世紀の今となっては、『〜ランナー』は読んでいて気恥ずかしさを感じさせられるほど爽やか過ぎる。
とはいえ、物語が直線的なのは前作と変わらず、後半になると構成がほどけてしまって感情移入が難しくなってくるのが残念には思った。前半が魅力的に描かれているだけに。
いいたいことはとてもよくわかる。ゲイをとりまく差別と暴力、ゲイの内にも秘められた矛盾、終わりのない長い苦悩。
けどそれを表現するなら、もっと多面的でかつ最後までしっかりとコシのある物語にしてほしいわけよ。どーしてもそこを期待しちゃうわけよ。読み終わって「え?終わり?」ってのはやっぱ虚しいのよ。
むむむむむ。
アメリカではこの続編のあとにもう一冊シリーズが書かれており、主人公は『〜ランナー』の最後、ビリーの死後に凍結精子で生まれた息子ということになっている。邦訳は未刊。
もし『〜ランナー』が噂通り映画化されるとするなら、ぐり的には『〜レース』と2本まとめて、息子の件は省略して1本に構成するといいんじゃないかと思いますが、いかがでしょー。
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先日読んだ『フロント・ランナー』の続編。
1974年に『〜ランナー』が発表された当時も熱烈な読者たちから続編を求める声はあったそうだが、実際にこの『〜レース』が書かれたのはそれを下ること20年も後のこと。
その間にアメリカのゲイをとりまく社会環境はがらりと変わってしまった。人権運動の沈静化、エイズの出現、世論の保守化、宗教過激派の台頭。70年代がアメリカのゲイ社会の春だとするなら、それ以後の20年(いやもっとか)は真冬に逆戻りするような時代だった。
『〜レース』では『〜ランナー』のラスト、モントリオール・オリンピック陸上男子5000M決勝の最後の直線で、主人公ハーランの夫ビリーが狙撃されて即死した、その場面から始まる後日談が描かれている。
ぐりは個人的には『〜ランナー』より『〜レース』の方が好きだ。
部数からいえば定石通り続編は一作目ほどには売れなかったそうだが、小説としては続編の方が遥かに成熟度が高い。文体も情景描写も『〜ランナー』とは比較にならないほど洗練されているし、とくに主人公の心理描写には同じ作家のものとは思えないほど深みが増している。20年ものタイムラグがそこにはっきり感じられる。
読んでいて単純に楽しかったのは明らかに『〜レース』の方だった。21世紀の今となっては、『〜ランナー』は読んでいて気恥ずかしさを感じさせられるほど爽やか過ぎる。
とはいえ、物語が直線的なのは前作と変わらず、後半になると構成がほどけてしまって感情移入が難しくなってくるのが残念には思った。前半が魅力的に描かれているだけに。
いいたいことはとてもよくわかる。ゲイをとりまく差別と暴力、ゲイの内にも秘められた矛盾、終わりのない長い苦悩。
けどそれを表現するなら、もっと多面的でかつ最後までしっかりとコシのある物語にしてほしいわけよ。どーしてもそこを期待しちゃうわけよ。読み終わって「え?終わり?」ってのはやっぱ虚しいのよ。
むむむむむ。
アメリカではこの続編のあとにもう一冊シリーズが書かれており、主人公は『〜ランナー』の最後、ビリーの死後に凍結精子で生まれた息子ということになっている。邦訳は未刊。
もし『〜ランナー』が噂通り映画化されるとするなら、ぐり的には『〜レース』と2本まとめて、息子の件は省略して1本に構成するといいんじゃないかと思いますが、いかがでしょー。