落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

桃色吐息

2008年10月06日 | book
『ゲイ・マネーが英国経済を支える!?』 入江敦彦著
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しばらく前からちょいちょい話題になる「ゲイ」な広告。
たとえばこちらは去年のラグビーワールドカップの広告ですがー。セクシーっちゅーよりちょっとオモシロになっちゃってますけど、遊びがあってぐりなんかけっこうスキですね。こーゆーノリ。
これも去年のですがトム・フォードのフレグランスの広告。そのものズバリ。ここまでズバリだといっそ潔くてよろしい。
これはヴァージン航空のTVCM。
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お、おかしい。涙出そう。

こちらはマヨネーズのTVCM。
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ニューヨークのデリの味が再現できるマヨネーズ、という商品コンセプトをおかあさん=デリのおじさんとして視覚化して表現してます。平和だ。

日本企業が日本市場向けにこういう広告を発表することはまずないけど、欧米ではもう10年ほど前から広告にゲイは欠かせない存在になってます。アパレルメーカー然り、自動車メーカー然り、医療品メーカー然り、コスメ、インテリア、不動産、保険、旅行業然り。なぜならゲイはとっても大切なお客さまであると同時に、「うちはゲイフレンドリーな企業です」というイメージ戦略が一般の市場にも大きな影響を及ぼすことが公然の事実になっているからだ。おまけに目立つという意味では広告のモチーフとしてこれ以上の効果はない。
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南米のコンドームのCM。7年か8年前のカンヌ国際広告祭入賞作品。こういうの観てるといかに日本の広告が子ども騙しかって気がしてくるよねー。

ここ数年好景気にわくイギリス経済を支えているといわれる、イギリスの全人口のうち6%を占めるゲイが消費する「ピンクポンド」。
なぜならゲイは高学歴高収入でかつ消費活動が活発だから。お金を使うのも好きなら貯めるのも好き。オシャレが好きで美食が好きで、音楽や映画や芸術にも造詣が深く、不動産運用や旅行も好き。そして気に入ったブランドはくり返し使い続ける。信用をなによりも大切に考える。
なんてのはただのイメージだ。それだけじゃないでしょー?マジでー?って思いますよね?思うよあたしゃ。
この本ではそのマジでー?を、具体的な数字を挙げて解説している。といっても著者は経済学者ではなくエッセイストなので、ごくごく一般向けに読みやすい軽い本です。
たとえば2006年のイギリスのゲイ・マーケットは700億ポンド(約18兆円)。18兆円ていくらだよ(爆)。何に使ってるかっつーとまずオシャレ。洋服とか靴とか時計とかバッグとかトワレとか。あとは旅行、コンサートや演劇、アルコール、外食、そして本。イギリスのゲイは出版物に年間8000万ポンド(約200億円)も使うという。マジでー?
ここまではこの本の冒頭25pまでの話。これ以降、イギリスのゲイがなぜそんなにリッチで、これほどまでに心置きなく楽しく消費生活に勤しむのかが、おもしろおかしく書かれている。ホントにおもしろいです。イギリスのゲイライフってそんなにステキなのー?うそーん。な感じ。あ、ちゃんとしたゲイ年表もあります。

アメリカでは2004年にマサチューセッツ州、今年はカリフォルニア州で解禁された同性婚だけど、ヨーロッパでは1989年にデンマークで市民婚が認められて以来、イギリスも含め多くの国で同性カップルを社会的に受け入れる法制度が施行されている。これもゲイの消費活動を多いに後押ししているらしい。
まあそれはわかるよね。だって結婚したらまず何を買いますか?指輪を買いますよね?結婚式、挙げますよね?パーティー、しますよね?新婚旅行、行きますね?生命保険も入りますよね?ついでにクルマも買い替えちゃいますかね?新居も買っちゃいましょうかね?おうちを買ったら家具も買いますね?カトラリーもファブリックも新調しますよね?
これらに使う金額がゲイはストレートよりもいちいち派手だったとしたらどうでしょう?しかもこれはゲイが結婚できるようになったから支払われるようになったお金です。これにとびつかない企業はアホですね?フツーとびつきますね?だってイギリスでは市民婚導入後わずか10ヶ月で1万5000組が結婚してんだよー。それも年齢層は20代から90代まで幅広い。この市場の可能性は無限大といっていいでしょー。
おもしろいじゃないですか。現象としておもしろいでしょ。同性愛は子どもを生めないから非生産的、なんていったいどこの誰がいってるんだか、これほど生産的な人々がどっか他にいますかっちゅーハナシですよ。わはは。

イギリスのゲイが何にいくらカネを使おうが、日本に住んでるわれわれには何の関係もないかもしれない。
でもこんな世界がいま現実に存在してるってだけでもおもしろいし、単に読み物として楽しむだけでも世界は広がる。
少なくとも、日本のゲイを含むマイノリティの人権問題は欧米諸国のそれとは比較にならないほど遅れている。どれほど遅れてるかなんてもうお話にならなくって笑っちゃうしかないくらいのドンガメっぷりですよ。それを笑うためだけでも、この本はなかなか読ませる。笑えることは確かに笑えます。間違いなく。ええ。あはあはあは。