『些細なこと』
夫婦生活に不満を持つ心理学者夫妻、便器についた他人の大便をオシッコで流すことを“公共マナー”とうそぶく男、断固として婚前交渉を拒む彼女を必死に説得する恋人、極度にビジネス化した大陸暗殺者集団など、香港社会独特の悲喜こもごもを描いた彭浩翔(パン・ホーチョン)の短編小説集を原作者自ら映像化したオムニバス作品。
えー。おもしろかったです。毎度のことながら。マジで、おもろかった。
予算がなくてやむを得ず短編集になったと監督は説明してたけど、大抵こういう「映画を撮る」ことが目的化した作品て凡作が多いんだよね。映画は基本は撮りたいテーマがあってつくられるからおもしろくなるものだからさ。
けどそこは天才彭浩翔、お金がなくたってやることはきっちりやります。しかもちゃんとスターが出てる。それも景気良くバンバンと。すばらしいー。こーゆーとこに香港映画界の自由さを感じます。資金不足が深刻化して大陸資本に支配されると同時に、中国電影局の審査に通過するためにどんどん過激さを失っていっているといわれる香港映画だけど、たぶん映画がつまらなくなるのは過激じゃなくなるからというだけじゃないと思う。心の自由は規則だけじゃ縛れないからね。正規の中国映画にだってちゃんとおもしろい映画はあるしさ。大体、ビーチクやらインモーやらまるだしの娼婦なんて香港映画には前から出てこなかったじゃん(この映画には出てくる)。少なくともぐりの記憶の中にはないし、そーゆーのはわざわざ出さずともおもしろい映画はつくれる。出したい彭浩翔の気分はわからんでもないですが。
監督もいちばん気に入っているという「おかっば頭のアワイ」がぐりもいちばんおもしろかった。
これは舞台が80年代、当時スーパーアイドルだった陳百強(ダニー・チャン)のヒットナンバーを歌ってカラオケ大会に出ようとする女子高生ふたりが主人公。タイトルのおかっぱ少女は相方を親友と思いこんで望まない妊娠を相談するのだが、相方の方は彼女にあまり関心がなく、堕胎費用惜しさに「好きな人の子どもなんだから結婚して産めば」と適当に励ましてしまう。本人はアルバイトして貯めたお金でボーイフレンドと日本に旅行に行き、やはり妊娠してしまうのだが・・・という、わりとリアルにありそうな話である。物語の背景にこの20年の香港社会の変遷がナニゲに反映されてるところも生々しい。
問題はおかっぱ少女を演じているのが鍾欣桐(ジリアン・チョン)というこれまたスーパーアイドルというところだろう。彼女自身TWINSというアイドルユニットで蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)とコンビを組んで活動している(現在活動休止中)。友だちの本心を斟酌せず、脳天気に自分の気持ちばかり押しつけるおかっぱ少女のキャラクターには、どこか鍾欣桐自身のパブリックイメージが重なって見えておかしい。
鍾欣桐といえば今年初めに香港芸能界を大混乱に陥れたわいせつ写真事件の被害者のひとりだが、この映画にはもう一方の当事者である陳冠希(エディソン・チャン)も出ている。酔っぱらってトイレでの公共マナーを延々とひけらかす彼の姿には、今となっては事件後だからこそのおかしみが漂っていてもうたまりません。おもしろすぎる。
あとぐりは最初の「不可抗力」もお気に入りです。彭浩翔はしばしばビックリするくらい女性心理を的確に捉えたシナリオを描くけど、今回の短編の中ではこれが秀逸でした。もー傑作っすよ〜。まいったねこりゃ。使えない殺し屋役の余文樂(ショーン・ユー)@「ジュニア」もサイコーでしたわん。
しかし毎年この映画祭に出て毎回大好評の彭浩翔作品なのに、これまで一本も日本では一般公開されていない。配給権は売れるのに公開されないのである。このクオリティを目にしてしまうと、昨今洋画は当たらないという日本の世論が完全に間違っているという現実を強く認識せざるを得ない。洋画が当たらないんじゃない。海外映画に罪はない。せっかくいい映画を買いつけてきても、内容に見合う客をきちんと呼ぶだけのスキルが映画業界にないのだ。
字幕がどーとかテーマ曲がどーとかそーゆー問題じゃない。映画業界自身が積極的に観客層を育ててこなかった長年の怠慢の結果だと思う。けどだからってせっかく買った傑作をオクラにしとくのは勝手すぎます。他に上映したい企業が現れても手が出せなくなる。公開せんのやったら買わんでええやろがー。
夫婦生活に不満を持つ心理学者夫妻、便器についた他人の大便をオシッコで流すことを“公共マナー”とうそぶく男、断固として婚前交渉を拒む彼女を必死に説得する恋人、極度にビジネス化した大陸暗殺者集団など、香港社会独特の悲喜こもごもを描いた彭浩翔(パン・ホーチョン)の短編小説集を原作者自ら映像化したオムニバス作品。
えー。おもしろかったです。毎度のことながら。マジで、おもろかった。
予算がなくてやむを得ず短編集になったと監督は説明してたけど、大抵こういう「映画を撮る」ことが目的化した作品て凡作が多いんだよね。映画は基本は撮りたいテーマがあってつくられるからおもしろくなるものだからさ。
けどそこは天才彭浩翔、お金がなくたってやることはきっちりやります。しかもちゃんとスターが出てる。それも景気良くバンバンと。すばらしいー。こーゆーとこに香港映画界の自由さを感じます。資金不足が深刻化して大陸資本に支配されると同時に、中国電影局の審査に通過するためにどんどん過激さを失っていっているといわれる香港映画だけど、たぶん映画がつまらなくなるのは過激じゃなくなるからというだけじゃないと思う。心の自由は規則だけじゃ縛れないからね。正規の中国映画にだってちゃんとおもしろい映画はあるしさ。大体、ビーチクやらインモーやらまるだしの娼婦なんて香港映画には前から出てこなかったじゃん(この映画には出てくる)。少なくともぐりの記憶の中にはないし、そーゆーのはわざわざ出さずともおもしろい映画はつくれる。出したい彭浩翔の気分はわからんでもないですが。
監督もいちばん気に入っているという「おかっば頭のアワイ」がぐりもいちばんおもしろかった。
これは舞台が80年代、当時スーパーアイドルだった陳百強(ダニー・チャン)のヒットナンバーを歌ってカラオケ大会に出ようとする女子高生ふたりが主人公。タイトルのおかっぱ少女は相方を親友と思いこんで望まない妊娠を相談するのだが、相方の方は彼女にあまり関心がなく、堕胎費用惜しさに「好きな人の子どもなんだから結婚して産めば」と適当に励ましてしまう。本人はアルバイトして貯めたお金でボーイフレンドと日本に旅行に行き、やはり妊娠してしまうのだが・・・という、わりとリアルにありそうな話である。物語の背景にこの20年の香港社会の変遷がナニゲに反映されてるところも生々しい。
問題はおかっぱ少女を演じているのが鍾欣桐(ジリアン・チョン)というこれまたスーパーアイドルというところだろう。彼女自身TWINSというアイドルユニットで蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)とコンビを組んで活動している(現在活動休止中)。友だちの本心を斟酌せず、脳天気に自分の気持ちばかり押しつけるおかっぱ少女のキャラクターには、どこか鍾欣桐自身のパブリックイメージが重なって見えておかしい。
鍾欣桐といえば今年初めに香港芸能界を大混乱に陥れたわいせつ写真事件の被害者のひとりだが、この映画にはもう一方の当事者である陳冠希(エディソン・チャン)も出ている。酔っぱらってトイレでの公共マナーを延々とひけらかす彼の姿には、今となっては事件後だからこそのおかしみが漂っていてもうたまりません。おもしろすぎる。
あとぐりは最初の「不可抗力」もお気に入りです。彭浩翔はしばしばビックリするくらい女性心理を的確に捉えたシナリオを描くけど、今回の短編の中ではこれが秀逸でした。もー傑作っすよ〜。まいったねこりゃ。使えない殺し屋役の余文樂(ショーン・ユー)@「ジュニア」もサイコーでしたわん。
しかし毎年この映画祭に出て毎回大好評の彭浩翔作品なのに、これまで一本も日本では一般公開されていない。配給権は売れるのに公開されないのである。このクオリティを目にしてしまうと、昨今洋画は当たらないという日本の世論が完全に間違っているという現実を強く認識せざるを得ない。洋画が当たらないんじゃない。海外映画に罪はない。せっかくいい映画を買いつけてきても、内容に見合う客をきちんと呼ぶだけのスキルが映画業界にないのだ。
字幕がどーとかテーマ曲がどーとかそーゆー問題じゃない。映画業界自身が積極的に観客層を育ててこなかった長年の怠慢の結果だと思う。けどだからってせっかく買った傑作をオクラにしとくのは勝手すぎます。他に上映したい企業が現れても手が出せなくなる。公開せんのやったら買わんでええやろがー。