『ボーダータウン 報道されない殺人者』
アメリカと国境を接するメキシコ・フアレスで頻発する強姦殺人事件の取材に派遣された記者ローレン(ジェニファー・ロペス)と、かつての相棒で現地で新聞を発行しているディアス(アントニオ・バンデラス)は、事件に巻き込まれて奇跡的に生還した16歳のエバ(マヤ・サパタ)と接触することに成功。命を狙われている彼女を助けるうち、ジャーナリストとしての使命にめざめていくローレンだったが、彼女たちの前には自由貿易協定の利権を守ろうとする国家権力が立ちはだかり・・・。
力作。すんごい力作。
『ファーストフード・ネイション』や『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、『バベル』などハリウッド映画でも昨今しばしば題材にされるアメリカとメキシコの因果な関係の物語。
と同時にこれは、『いま ここにある風景』『女工哀歌』『この自由な世界で』『おいしいコーヒーの真実』『ダーウィンの悪夢』などでも描かれた、グローバリズム経済の暗部の物語でもある。
豊かな国が貧しい国の貧困そのものを食い物にするとどうなるか。人が人の尊厳をカネで買い叩くということがどういうことかを、実話をベースに娯楽サスペンス映画として告発した作品。そりゃ重いですよ。くどくもなります。しょうがなし。
とはいえ二転三転どころか四転五転するストーリーテリングはかなり凝ってるし、アメリカの観客に極力わかりやすく受け入れやすくつくろうと必死な作り手の思いも強く伝わってくるし、何がいいたいのかはとてもストレートな映画です。そこは素直に好感が持てる。
ただ頑張り過ぎなところが目についてしまうのもまたしょうがない。
正義を振りかざすあまりにキャラクターの人物造形が妙に平面的になってしまっていたり、ところどころ安手のホラーみたいな演出に思わず失笑させられるところも残念だったけど、なによりもいただけなかったのは、諸悪の根源をすべて自由貿易協定と決めつけて物語の世界観がそこからまったく広がっていかなかったところだ。
あるいはメキシコの事情も知っているアメリカの観客なら説明は不要なのかもしれないが、この映画を観ただけでは、フアレスの治安がなぜこれほどまでに劣悪なのか、そしてメキシコの行政がなぜここまで腐敗しているのかがうまく納得できない。それもこれも自由貿易協定のせいだなんていわれてもね。
逆にヒロインたちジャーナリストを完全な正義の味方として描くのにも疑問はある。リアリティも全然ないしさ。大体ジェニロペはジャーナリストにしては化粧が濃すぎますて(笑)。いやマジで。そんないつでもメイクばっちりな記者おらんて。ただ彼女の「この国(アメリカ)でメキシコ人でいるのはつらすぎる」という台詞はズキッと来ました。2世以降の移民ならどこの誰でも同じようなことは感じるものだからさ。
題材になっている連続強姦殺人事件は、報告され始めた1993年以降で推計5000件にものぼるという。被害者は10代から20代の若い女性ばかり、ほとんどがよそからフアレスの工場地帯に作業員として働きにきた貧困層だそうだ。政府も地方行政もまったくこの問題には真面目にとりあわないのも事実で、この作品の製作もさまざまな妨害から10年ほどの時間を要し、撮影中も銃撃を受けてやむなくメインキャストをスタンドインでロケしなくてはならないパートもあったらしい。
それほどの危険を圧してまで完成させた気概は確かに賞賛に値すると思います。
アメリカと国境を接するメキシコ・フアレスで頻発する強姦殺人事件の取材に派遣された記者ローレン(ジェニファー・ロペス)と、かつての相棒で現地で新聞を発行しているディアス(アントニオ・バンデラス)は、事件に巻き込まれて奇跡的に生還した16歳のエバ(マヤ・サパタ)と接触することに成功。命を狙われている彼女を助けるうち、ジャーナリストとしての使命にめざめていくローレンだったが、彼女たちの前には自由貿易協定の利権を守ろうとする国家権力が立ちはだかり・・・。
力作。すんごい力作。
『ファーストフード・ネイション』や『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、『バベル』などハリウッド映画でも昨今しばしば題材にされるアメリカとメキシコの因果な関係の物語。
と同時にこれは、『いま ここにある風景』『女工哀歌』『この自由な世界で』『おいしいコーヒーの真実』『ダーウィンの悪夢』などでも描かれた、グローバリズム経済の暗部の物語でもある。
豊かな国が貧しい国の貧困そのものを食い物にするとどうなるか。人が人の尊厳をカネで買い叩くということがどういうことかを、実話をベースに娯楽サスペンス映画として告発した作品。そりゃ重いですよ。くどくもなります。しょうがなし。
とはいえ二転三転どころか四転五転するストーリーテリングはかなり凝ってるし、アメリカの観客に極力わかりやすく受け入れやすくつくろうと必死な作り手の思いも強く伝わってくるし、何がいいたいのかはとてもストレートな映画です。そこは素直に好感が持てる。
ただ頑張り過ぎなところが目についてしまうのもまたしょうがない。
正義を振りかざすあまりにキャラクターの人物造形が妙に平面的になってしまっていたり、ところどころ安手のホラーみたいな演出に思わず失笑させられるところも残念だったけど、なによりもいただけなかったのは、諸悪の根源をすべて自由貿易協定と決めつけて物語の世界観がそこからまったく広がっていかなかったところだ。
あるいはメキシコの事情も知っているアメリカの観客なら説明は不要なのかもしれないが、この映画を観ただけでは、フアレスの治安がなぜこれほどまでに劣悪なのか、そしてメキシコの行政がなぜここまで腐敗しているのかがうまく納得できない。それもこれも自由貿易協定のせいだなんていわれてもね。
逆にヒロインたちジャーナリストを完全な正義の味方として描くのにも疑問はある。リアリティも全然ないしさ。大体ジェニロペはジャーナリストにしては化粧が濃すぎますて(笑)。いやマジで。そんないつでもメイクばっちりな記者おらんて。ただ彼女の「この国(アメリカ)でメキシコ人でいるのはつらすぎる」という台詞はズキッと来ました。2世以降の移民ならどこの誰でも同じようなことは感じるものだからさ。
題材になっている連続強姦殺人事件は、報告され始めた1993年以降で推計5000件にものぼるという。被害者は10代から20代の若い女性ばかり、ほとんどがよそからフアレスの工場地帯に作業員として働きにきた貧困層だそうだ。政府も地方行政もまったくこの問題には真面目にとりあわないのも事実で、この作品の製作もさまざまな妨害から10年ほどの時間を要し、撮影中も銃撃を受けてやむなくメインキャストをスタンドインでロケしなくてはならないパートもあったらしい。
それほどの危険を圧してまで完成させた気概は確かに賞賛に値すると思います。