落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

最後の麦藁

2008年10月09日 | diary
韓国当局、悪質書き込みを集中取り締まり 「サイバー侮辱罪」の早期成立図る

韓国で自殺のニュースが相次いでますが。
今月は8日にタレントのキム・ジフが自殺。ゲイであることをカミングアウトして活動していたが、ネット上での誹謗中傷を苦にしていたと報じられている。3日に自殺したチャン・チェウォンはトランスジェンダーのタレント。恋愛関係のもつれが原因といわれている。2日にはジャイアンツでもプレーした野球選手チョ・ソンミンの元妻チェ・ジンシルが亡くなった。先月は俳優のアン・ジェファンが自殺している。
韓国で近年自殺で亡くなった著名人は他にもいる。去年は歌手のユニ、タレントのチョン・ダビンが、2005年には女優のイ・ウンジュが自殺。1996年には歌手ソ・ジウォンとキム・ガンソク、1995年にキム・ソンジェ。
未遂に終わっているがカン・ヘジョンやコ・ヒョンジョンも自殺を図ったことがあるという。ぐりは韓国芸能界には疎いので、ほんとうは他にもいるのだろう。

いうまでもないが自殺の原因は人それぞれに違うし、自殺そのものは複合的な要因が重なって引き起こされるものだ。ネットだけが悪者のように考えるのも早計だろう。ましてベッドシーンを演じたのを後悔してとか、役柄のプレッシャーでとか、彼らの仕事だけに原因を求めるのも安易だと思う。
彼らの死は彼ら自身が有名だから日本でも報道されているが、韓国ではここ数年自殺者がうなぎのぼりに増加し続けている。自殺は死亡原因の第4位、この10年で倍以上になった人口10万人あたり26.1人という自殺率は経済協力開発機構(OECD)の加盟国中トップである。日本でも韓国でも報道されない自殺者が、毎日30人以上いるというのだ。
ひとくちに自殺問題といっても、ネット規制や業界改革などの措置がすぐに目に見える効果になって表われてくるほどことは簡単ではない。ただひとつだけいえるのは、自殺は連鎖反応を起こしやすい性質をもっているから、自殺報道のあり方を関係機関で検討することも必要だろうと思う。
自殺を考える人間全員が必ず自殺するわけではない。だが自殺を考えるほど追いつめられ孤独に苛まれている人は、他人の自殺の報道に触れると、自殺が何かの解決法のように感じてしまうことがある。報道で自殺者の経歴が紹介され、原因についての憶測が飛び交うのを観て、「自殺しちゃえばこの苦しみは終わる」という発想に至るのは案外簡単なことなのかもしれない。
自殺の原因が複合的であることを考えれば、麦藁は1本でも取り除いておくにこしたことはない(It is the last straw that breaks the camel's back. =1本の藁でも限度を越えるとラクダの背骨を砕く)。

もうひとつ気になるのは、キム・ジフがカミングアウトしたことで仕事に不備が生じていたという報道があること。
韓国は儒教精神が根強く、日本以上にセクシュアル・マイノリティへの差別や偏見が厳しいといわれている。彼の自殺の背景にはそうした差別が関わっているであろうことは想像に難くない。実際、韓国のゲイの自殺率は非常に高いとも聞く。
彼の死をきっかけに、韓国でもそうした差別に対する世論が変化してくれればいいんだけど。


植木に埋まる作業員たち。