OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

やっぱり和みのザ・スリー・サウンズ

2008-12-21 12:03:08 | Jazz

Blue Genes / The Three Sounds (Verve)

ザ・スリー・サウンズはジーン・ハリス(p)、アンドリュー・シンプキンズ(b)、ビル・ダウディ(ds) から成るピアノトリオで、ご存じのように1950年代末からブルーノートに大量のレコーディングを残した同レーベルの看板スタアです。

もちろんその魅力の源はジーン・ハリスのリラックスしてグルーヴィなピアノでしょう。そしてそれをサポートするベースとドラムスの見事な一体感は、絶妙に自然体のアレンジに裏打ちされいるんでしょうねぇ~。とにかくジーン・ハリス・トリオじゃなくて、ザ・スリー・サウンズと、あえてバンドとして売っているところが、その証だと思います。

さて、このアルバムは売り出してもらったブルーノートを離れ、一時的にヴァーヴと契約していた時期に作られたもので、録音は1962年10月13日とされています。

 A-1 Mr. Wonderful
 A-2 Autumn In New Yourk / ニューヨークの秋
 A-3 Love Somebody
 A-4 Blue Genes
 B-1 Red Sails In The Sunset / 夕日に赤い帆
 B-2 In A Mellow Tone
 B-3 Gina, My Love
 B-4 Whims Of Chamberland

まずは上記のように、バラエティ豊かな選曲が大いに魅力です。そしてブルーノートとは、一味違ったリラックスムードが微妙に強いんですねぇ~♪

と言っても、スリー・サウンズがやっていることは何時もと変わらず、また録音担当もヴァン・ゲルダーですから、ブルーノートと基本は同じだと思います。しかし、この雰囲気の、良い意味でのユルユル感♪ 私には、そこがたまりません。

和みのスイングが心地良すぎる「Mr. Wonderful」、お馴染みのシンミリ系メロディをブルージーに解釈した「ニューヨークの秋」、個人的にはお目当てだったドリス・デイのヒット曲「Love Somebody」は素晴らしいアレンジでグルーヴィな演奏が展開されていきます。

その中心になっているのは、もちろんジーン・ハリスのピアノなのは言わずもがな、オスカー・ピーターソンやビリー・テイラー、レッド・ガーランドやハンク・ジョーンズといったバカテク&和み系のピアノスタイルを全く自己流にしてしまった、「楽しい系」ピアニストの真骨頂が存分に楽しめます。

実際、粘っこいスイング感とブロックコード弾きの巧みな構成で盛り上げていくアドリブの美味しさは、ほとんどのジャズ者を虜にしてしまうんじゃないでしょうか。

その極北がアルバムタイトル曲の「Blue Genes」で、この楽しいゴスペルロックのグルーヴは、ジャズに精神性を求める愛好者からは忌嫌われるほどの快楽性に満ちています。あぁ、ボビー・ティモンズもラムゼイ・ルイスも、この演奏を前にしては、……です。ビル・ダウディの狂熱のタンバリンも良い感じ♪ コクがあるのにあっさりと、決して脂っこくない仕上がりも高得点だと思います。

そしてB面に入っては、これも大衆ヒットの「夕日に赤い帆」が、ほどよい思わせぶりにソウルフルな解釈で演じられるんですから、グッとシビレがとまりません。このあたりはオスカー・ピーターソンのトリオとは似て非なる、まさにザ・スりー・サウンズだけの個性かもしれませんねっ♪

そうしち雰囲気の良さはデューク・エリントン楽団の十八番「In A Mellow Tone」でも、まさにグルーヴィなソフトスイングとして表現されていますし、ここでのカウント・ベイシーぱりのシンプルな音選びとか、ブルースフィーリングの旨みは絶品です。

またジーン・ハリスの自作曲「Gina, My Love」では、キュートなワルツビートのテーマメロディをエロル・ガーナー的な「後ノリ」で聞かせてくれるという、実に芸の細かい演技・演奏には、思わずはニヤリです。もちろんブロックコードの滑らかな使い方は完全にジーン・ハリス流儀なんですからねぇ~~♪♪

しかし、このトリオは決してジーン・ハリスだけのワンマンバンドではありません。例えばベースのアンディ・シンプキンスが大活躍の「Whims Of Chamberland」は、ハードバップの代表的なペースプレイヤーだったポール・チェンバースのオリジナル曲へ果敢に挑戦し、見事に結果を出した純正モダンジャズ! そして全篇で堅実なサポートと自己主張が展開されているのです。

ということで、完全に楽しさ優先主義のピアノトリオ盤ですから、アッという間に聴き終えてしまうほどです。そして既に述べたように、このムードは明らかにブルーノートの諸作と微妙に異なっているのです。

これは全くのサイケおやじ的推論ではありますが、セッションをプロデュースしたクリード・テイラーは、「まあ、気楽にやってよねっ、楽しくさぁ」なんて簡単な指示しか出さなかったんじゃないでしょうか? そしてそれでいて、ポイントのキメを要求するという、実に現場主義のやり方が感じられるのです。

ご存じのようにブルーノートのレコーディングセッションは、事前に演目をきっちり決定し、リハーサルも行ってから本番を録音するという完成度の高いものでした。それゆえに緊張感も高いイノセントな作品が生まれていたと思われますが、ザ・スりー・サウンズについては、こっちのようなリラックスして商売っ気のあるセッションを私は好みます。

ジャズ特有の、ある種の「厳しさ」が無いところが、大いなる魅力のアルバムだと思うんですよ。

コメント
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