■European Nights 1964-1970 / Bill Evans, Lee Koitz, Charles Mingus (Impro-Jazz = DVD)
ビル・エバンスとチャールズ・ミンガスの欧州巡業から、貴重なライブ映像を集めたオムニバスの復刻DVDです。しかも年代的に、なかなか珍しいメンバーやゲストが入ったものばかりですから、嬉しいですねぇ~♪
★Charles Mingus Sextet (1970年10月21日、デンマークで収録)
01 Pithecantropus Erectus
メンバーはエディ・プレストン(tp)、チャールズ・マクファーソン(as)、ボビー・ジョーンズ(ts)、ジャッキー・バイアード(p)、チャールズ・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という充実のレギュラーバンド♪
そして演目はミンガスバンドでは必修科目とう名曲「直立猿人」なんですが、残念ながら途中からの収録です。しかしそれがジャッキー・バイアードのエキセントリックにゴッタ煮のピアノが、本当にガンガン炸裂したスタートなんですから、いきなりの大興奮!
混濁したバンドアンサンブルの熱気、意外にも冷静にバンドメンバーを支えるチャールズ・ミンガスの貫禄も流石ですし、続くボビー・ジョーンズのテナーサックスも大健闘です。ちなみにこの人は白人ながら独自のスタイルを持った隠れ名手で、激ヤバのプローやスタン・ゲッツの物真似も上手いので、一時はジャズ喫茶で局地的な人気者に成りかけた時期もあったほどですから、この映像は嬉しいプレゼントでした。
気になる画質は「-A」で、約9分ほどのモノクロ映像ですが、音質は問題無く楽しめると思いますし、カメラワークも安定感があります。
★Charles Mingus Sextet (1971年、ドイツで収録)
02 Mingus, Mingus, Mingus
03 Blues
メンバーはジョン・ファディス(tp)、チャールズ・マクファーソン(as)、ボビー・ジョーンズts,cl)、ジョン・フォスター(p,vo)、チャールズ・ミンガス(b)、ロイ・ブルックス(ds,etc.) という、かなり珍しい編成ですが、演奏は充実しています。
まず「Mingus, Mingus, Mingus」は哀愁のテーマからグイノリのアドリブパートへ繋がり、ボビー・ジョーンズがクラリネットで大名演! もうこのパートを楽しめるだけで満足してしまいますが、続くチャールズ・ミンガスのペースソロが、この時代になっても怖さを感じさせてくれます。まさに大親分の貫禄でしょうか!? またディジー・ガレスピーの弟子だったジョン・ファディスのハイノートも頑張っていますねっ♪
そして「Blues」は、思わせぶりなチャールズ・ミンガスのペースソロからグルーヴィな雰囲気が横溢し、ジョン・フォスターのボーカルとピアノが粘っこいブルースをリードするという、まさに黒人音楽ど真ん中の演出で、チャールズ・マクファーソンやジョン・ファディス、そしてボビー・ジョーンズも熱演ですが、ここでの主役はロイ・ブルックスの隠し芸だったミュージックス・ソーでしょう! これは弾力のある板状の「洋式のこぎり」をマレットで敲き、のこぎりの板を片手で歪ませながら音階を出していくという至芸で、話だけは聴いていたのですが、こうして映像で観られる喜びは格別です。もちろんこれがポヨヨヨ~ン♪ と、最高に不思議な心持ちにさせられるんですねぇ~♪ 観客も呆気にとられて拍手喝采ですよ♪
気になる画質は、ここも「-A」のモノクロ映像で、演奏時間は2曲で約16分、音質も十分にバランスが良いと思います。
★Bill Evans Trio with Lee Konitz (1965年11月1日、ストックホルムで収録)
04 What's New
05 How Deep Is The Ocean
06 Beautiful Love
これまた非常に珍しいメンツによるライブ映像で、ビル・エバンス(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アラン・ドウソン(ds) というトリオにリー・コニッツ(as) が加わって、実に素晴らしい演奏が堪能出来ます。
まず「What's New」は途中からの収録とはいえ、いきなりニールス・ペデルセンの物凄いペースソロ! グイノリのビートに恐ろしい早弾きと野太いグルーヴは、この時、まだ16歳だったとは思えないほどです。続くリー・コニッツの意味不明なメロディフェイクもアブナイ雰囲気ですねぇ~。しかもこの後にメンバー紹介をするリー・コニッツが、ニールス・ペデルセンを「ニューボーイ」と一言、思わず苦笑いの場面には観客も大喜びです。
そして始まる「How Deep Is The Ocean」は、いよいよビル・エバンスが大活躍♪ 十八番のミディアムテンポで最高のメロディフェイクと耽美なアドリブフレーズの洪水には、まさにビル・エバンスだけのモダンジャズが全開なんですねぇ~~~♪ 映像では、あの俯いた姿勢でピアノに向かい、珠玉の美メロを紡ぎ出していく様が感動的に映し出されていきます。
リー・コニッツも空間を自在に浮遊する唯一無二のスタイルを押し通し、そこに絡むビル・エバンスのピアノ、さらに強いビートでそれを支えるドラムスとベースというバンドコンビネーションの潔さには、本当にゾクゾクさせられますよっ♪
また「Beautiful Love」はビル・エバンスのトリオによる快演で、アラン・ドウソンのシャープなシンバルとニールス・ペデルセンの豪快なウォーキング、さらにビル・エバンスのアドリブが冴えまくりです。しかもクライマックスのソロチェンジではアラン・ドウソンがブラシの妙技ですから、たまりません。ちなみにこの人はトニー・ウィリアムスの師匠と言われる名手ですが、映像は意外に少ないので貴重だと思います。
画質は正直「B」クラスなんですが、音質とミックスのバランスは良好ですし、なによりもニールス・ペデルセンが駆け出し時代から、実にとんでもない実力者だったという実態が確認出来るだけでも、完全なる「お宝」なのでした。
★Bill Evans Trio (1964年9月2日、ストックホルムで収録)
07 My Foolish Heart
このDVDでは一番古い演奏ですが、画質・音質ともに非常に良好♪ メンバーはビル・エバンス(p)、チャック・イスラエル(b)、ラリー・バンカー(ds) という些かシブイ実力トリオで、演目は十八番のスタンダードとくれば、スローな展開の中にはビル・エバンスがキメの美メロしか出していないという素晴らしさです。
もちろん俯いてピアに向かう姿は感動的ですし、映像そのものが、まるで長谷部安春監督が撮った日活ニューアクションのハードボイルド調というモノクロですから、たまりません。もちろんカメラワークも絶品!
地味な演奏ですが、間然することのない5分間のスタジオライブです。
★Bill Evans Trio (1970年12月15日、デンマークで収録)
08 Emily
これも画質・音質ともに良好なスタジオ演奏で、メンバーはビル・エバンス(p)、エディ・ゴメス(b)、マーティ・モレル(ds) というお馴染みのレギュラートリオです。今となっては、この時期のトリオは安定感がありすぎて、イマイチ人気薄かもしれませんが、やはりグッと惹きつけられるものがありますねぇ~♪
特にエディ・ゴメスはやっばり凄いです。実は前述のニールス・ペデルセンがあまりにも衝撃的だったんで、そのまんまビル・エバンスのトリオに入っていれば……、なんて不遜な事を思っていたのですが、エディ・ゴメス恐るべし!
わずか4分半のモノクロ映像とはいえ、これも貴重なコレクターズアイテムだと思います。
★Bill Evans Solo (1969年初頭、ニューヨークで収録)
09 I Love You Porgy
これはボーナストラックで、ビル・エバンスのソロピアノ演奏ですが、演目が私の大好きな「愛するポギー」というだけで高得点! ビル・エバンスは厳しい態度で緩急自在なピアノを聞かせてくれます。
モノクロ映像で3分半ほどのスタジオパフォーマンスですが、画質・音質ともに問題の無いレベルでしょう。
ということで、実は音源だけは、これまでも様々な関連ブートで流通していましたが、映像作品集としては、なかなか見どころの多い逸品です。
既に述べたように画質はそれなりの部分もありますが、音質は全て問題無いモノラルミックスですし、まだまだ本物の勢いがあったモダンジャズの貴重なライブ映像を拝めるだけ、有意義な時間が過ごせると思います。
個人的にはロイ・ブルックスのミュージック・ソーとか、若き日のニールス・ペデルセンの天才ぶりが拝めただけで満足しています。それとボビー・ジョーンズ♪ この人も再評価が望まれますね。