OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

グラント・グリーンのラテンでゴーゴー

2008-12-09 12:26:37 | Jazz

The Latin Bit / Grant Green (Blue Note)

グラント・グリーンの人気盤と言えば「Feelin' The Spirit」か「Idle Moments」あたりのゴスペルファンキー物がイノセントなジャズ者にはお好みだと思われますが、本日ご紹介のラテン物も楽しい仕上がりでした。

とにかくオトボケなジャケ写からして、たまりませんねっ♪

録音は1962年4月26日、メンバーはグラント・グリーン(g)、ジョニー・エイシア(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、ウィリー・ボボ(ds,per)、パタート・バルデス(per)、ガーヴィン・マッソー(per,chekere) という、ブルーノート正統派路線では馴染みの薄い顔ぶれなんですが、実は結論から言うと、このリズム隊は以降のラテンジャズ系セッションでは、ブルーノートの屋台骨を背負った面々ですから、ここでの手堅く熱いサポートは素晴らしいかぎりです――

A-1 Mambo Inn
 ウキウキするようなラテンリズムに心躍る楽しいメロディ♪ まさにラテンミュージックのエッセンスをモダンジャズに溶かした名演で、もちろんアドリブパートでは4ビートにドドンパのリズムがゴッタ煮状態です。
 あぁ、実に楽しいですねぇ~~~♪
 グラント・グリーンが何時もながらの単音弾きで淀みのないフレーズを弾きまくれば、ピアノのジョニー・エイシアはハーマン・フォスターの親戚みたいなスタイルという、オルガンタッチでソニー・クラーク系のアドリブを聞かせてくれますよっ♪
 もちろんコンガとシェケレがメインとなったリズムの饗宴も本格的ですから、これ1曲だで全篇を聴かずにはいられなくなると思います。

A-2 Besame Mucho
 さてさて、ラテンジャズには無くてはならない人気曲ですから、グラント・グリーンがこれを演じるというだけでワクワクしてきますねぇ~♪ そして結果は妖しいムードが濃密に漂う大名演!
 テーマ部分のイナタイ雰囲気、アドリブパートのゴスペルファンキーな4ビート、さらにラテン歌謡ならではの、胸キュンの歌心を活かしきったメロディフェイク♪ そんなこんなが絶妙に混ぜ合わせられた快楽の時間が楽しめます。
 う~ん、それにしても、じっくりとしたグルーヴを醸し出すリズム隊の実力は流石ですねぇ。ジョニー・エイシアは疑似「ソニクラ節」ですし、大衆音楽の奥底は本当に知れません。

A-3 Mama Inez
 チャーリー・パーカー(as) がラテンジャズを演じたリーダー盤「Fiesta (Verve)」にも収録されていた楽しい名曲ですが、ここでの浮かれた調子も最高です。リズム隊の存在感も強く、それはアドリブパートのドドンパな4ピートに入ると、尚更に鮮やかなんですねぇ~。
 グラント・グリーンがホーンライクなフレーズを積み重ね、さらにコード弾きのサービスまでも披露すれば、ジョニー・エイシアが正統派ハードバップのファンキー節で対抗するんですから、もう辛抱たまらん状態♪
 そしてラストテーマの前に、もうひとつアドリブで盛り上げていくグラント・グリーンの心意気! バンドアンサンブルもビシッとキマッて、実に気持E~です。

B-1 Brazil
 これもお馴染み、ラテンの楽しい名曲をアップテンポのハードバップに焼き直していくバンドのグルーヴは、もう最高としか言えません。あぁ、このキメのリズムパータンは、キワドイ衣装の美女が舞い踊る雰囲気ですよ♪
 そしてアドリブパートのスピード感は、グラント・グリーンが十八番の単音弾きにはジャストミートですから、続くジョニー・エイシアのピアノも大ハッスルという、まさにラテンジャズのブルーノート的展開になっています。

B-2 Tico Tico
 これまたチャーリー・パーカーが「Fiesta (Verve)」で演奏していたラテンの名曲で、しかしその浮かれたテーマメロディが、アドリブパートでは全く正統派モダンジャズでシンプルに解釈されていくという、極めてブルーノート的に仕上がりがニクイところです。
 グラント・グリーンは如何にもジャズギタリストとしての実力を誇示しているかのようですし、リズム隊のドドンパ系4ビートからも真っ黒なグルーヴが噴出して、これが何処を切ってもブルーノート! それもまた、快感だと思います。
 そしてラストテーマ直前からのラテングルーヴが、実に地味~な場面転換で結果オーライですが、この部分の、ほとんどラテン歌謡なノリが私は大好きです♪

B-3 My Little Suede Shoes
 オーラスは、またしてもチャーリー・パーカー所縁の楽しいラテンバップという嬉しい企画です♪♪~♪ そしてメリハリの効いたリズム隊にグラント・グリーンのギターも良く乗っかって、これが間違いなくモダンジャズのグルーヴだと痛感してしまいますねぇ~♪
 ジョニー・エイシアのファンキーピアノも心地良く、コンガ&シェケレ組も強い印象を残しています。

ということで、安易な企画物と思って聞くと完全にドギモを抜かれるほど、濃密な作品です。グラント・グリーンはソウルイチバンなギタリストというイメージですが、実はラテンの快楽性もおまかせ状態だったんですねぇ~♪

このあたりは黒人音楽の汎用性とゴッタ煮感覚が、ジャズというハイブリットな大衆音楽に結びついたポイントかもしれません。

しかし、それはそれとして、こんなに楽しい演奏が残されたのは、バンドメンバー全員のウマが合ったからでしょう。実際、もう1枚ぐらいは同種のアルバムが作られて欲しかったという思いが強くなるのでした。

楽しいジャズを求めては必聴の名盤じゃないでしょうか。

コメント (2)
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