OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

分かっちゃいるけど♪

2006-09-20 20:04:17 | Weblog

実は本日から東南アジアへ出張予定でした。しかしタイの政変で中止ということで、妙に時間が空いたり、逆にスケジュール調整に追われたりして、ザワザワした1日となりました。

そして、こういう時こそ安心感のある演奏が欲しいということで――

Bright And Breezy / Red Garland (Jazzland)

マンネリだの事勿れだのと言われても、ジャズ者にとってのハードパップは、やっぱり気持ちが良いと思います。

それは安心感というよりも、有名な映画監督のアルフレッド・ヒッチコックが言うところの「全て分かっている楽しみ」です。

そしてそれを一貫して追求したピアニストが、レッド・ガーランドです。

ご存知のように、この人は1950年代中頃のマイルス・デイビス(tp) を支えたリズム隊の1人として絶大な人気があり、録音セッションも数多く残しています。もちろんリーダー作も名盤・人気盤が目白押しなんですが、そのどれもが、常に金太郎飴状態……。

そこにツッコミを入れられると、熱心なファンは弁解に躍起となるだけ無駄! という按配ですが、しかしジャズ者でレッド・ガーランドが嫌いという人は、ほとんどいないんじゃないでしょうか……?

このアルバムは、どういう理由か、本場ニューヨークから郷里のテキサスに引っ込む直前の1961年7月19日に録音されたもので、メンバーはレッド・ガーランド(p)、サム・ジョーンズ(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という、素敵なトリオになっています――

A-1 On Green Dolphin Street
 マイルス・デイビスの決定的な演奏が残されて以降、モダンジャズの定番になった曲ですが、残念ながらレッド・ガーランドはその直前にバンドを出て行った所為で、その時のピアニストはビル・エバンスという因縁がありますから、もしも……、という興味深々のトラックです。
 で、ここでのレッド・ガーランド・トリオは、マイルス・デイビスとは似て非なるアレンジをあえて使い、チャーリー・パーシップの強靭なドラムスを前面に出してハードパップ丸出しの演奏に終始します。
 得意技のブロックコード弾きも和みよりも力強さがあり、サム・ジョーンズの歪みのウッドベースも素晴らしいのですが、正直、力み過ぎだと思います。つまり何時もの大人の対応を忘れてしまった感があるようです……。

A-2 I Ain't Got Nobody
 これはレッド・ガーランドの十八番という楽しい演奏です。アップテンポでコロコロと転がる単音弾きと要所で炸裂させるブロックコード弾きのコンビネーションは常套手段ですが、しかしここでも何故か、力みが目立つのは、ギスギスした録音の所為ばかりでは無いような……。

A-3 You'll Never Know
 ドリス・ディやフランク・シナトラが好んで歌っていたポビュラー曲で、モダンジャズではあまり演奏されていませんが、こういう隠れ名曲を引っ張り出してくるところに、レッド・ガーランドの良さがあります♪
 実際、前2曲とは全く違う、いつものレッド・ガーランドらしい和みの世界が展開されています。それはスローなテンポですが、決してダレることの無い緊張感がほど良く、もちろん原曲を活かしきった歌心が見事と言う他はありません。

A-4 Blues In The Closet
 ビバップ色が極めて強いブルース曲で、ちょっとドラムスが喧しい雰囲気ではありますが、レッド・ガーランドがファンには耳に馴染んだフレーズを連発して盛り上げてくれますから、これこそ「全て分かっている楽しみ」です。
 その快適度、その快楽性は永遠に不滅というジャズの醍醐味に他なりません。
 サム・ジョーンズのウォーキングも基本に忠実ですし、終盤のピアノ対ドラムスのパートもお約束に満ちていながら、緊張感があって心地良い限りです♪

B-1 What's New
 こういうお馴染みのスロー曲をド頭にもってくるという仕掛けは、AB面が分離されていたアナログ盤ならではの楽しみで、私はこれが聴きたくて、この面ばかりに針を落としていた前科があります。
 全くこの「間」の芸術というか、ダレそうでダレ無い、タメとモタレの妙は、こういう小編成の演奏では必須でありながら、誰もが成し遂げられるものでは無いのですから、このトリオは秀逸です。イントロのベースがビル・エバンス・トリオ調なのも、憎めません。
 そして、ゆったりと横揺れしながら展開される美メロの洪水に、身も心も虜になるのでした。

B-2 Lil' Darlin'
 カンウト・ベイシー楽団の人気演目として、あまりにも有名なジャズオリジナルです。それは超スローテンポで演じられる黒くて洒落たグルーヴがキモでしたが、ここでのレッド・ガーランドはミディアム・テンポのアレンジで、和みを追求しています。
 まずイントロがオシャレの極み♪ 続けてブロックコード弾きによる快適なテーマ演奏♪ 実はこのテーマ部分は、カンウト・ベイシー楽団の超スロー演奏が耳に馴染んでいるので最初は違和感があるのですが、作者のニール・ヘフティが最初に指示したのは、このくらいのテンポだったと言われていますから、微妙な好き嫌いが残ります。
 ところがここでは、アドリブパートの前半でサム・ジョーンズの素晴らしいベースが堪能出来るという上手い仕掛けがあって、続くレッド・ガーランドのピアノが例のマンネリ・スイングを演じても、それがかえって素敵なものに転化しています。

B-3 What Is There To Say ?
 個人的にとても好きな曲ですから、ここでのレッド・ガーランドの演奏には大いに期待して、ズバリ琴線にふれる最高の出来に満足しています。
 スローテンポでの単音弾きとブロックコード弾きのバランスも絶妙ですし、そこはかとない歌心のちりばめ方は、もう大人の味のビタースウィートです。
 そしてサム・ジョーンズのベースソロを挟んで、後半はビートを強め、トリオが一丸となって短く盛り上げ、スウッとスローなテンポに戻していくところなどは、もう名人芸の世界♪ ラストテーマの最後の最後まで、これぞレッド・ガーランドという「節」が出て、完全降伏です。

B-4 So Sorry Please
 モダンジャズの天才ピアニスト=バド・パウエルが書いた曲ですが、エキセントリックなところは無く、ちょっと中華メロディが交じったような、憎めない素敵な曲です。
 作者以外ではトミー・フラナガンのカバーバージョンが名演とされていますが、このレッド・ガーランド・トリオの演奏も素晴らしくノッています。もちろんそこには、これも「全て分かっている楽しみ」が満載で、こういう何気ない演奏こそがハードパップの真髄かもしれないと、シミジミ思うのでした。

ということで、これは歴史的名盤でも無いし、レッド・ガーランド本人の録音としても「並」の出来というのが、本当のところです。とてもマイルス・デイビスと共演していた頃の緊張感は望むべくも無し、です。

ところが、こちらも何気なく聴いていると、何時しか、すっかり虜になるアルバムなんですねぇ~♪

私は特にB面を愛聴してきましたが、CD時代になって全曲ブッ通して聴けるようになると、より流れが上手く作られていることに気がつき、陶然となりました。そして個人的快楽盤のひとつに登録しています。

タイトルどおりのアルバムジャケットも素敵ですね♪

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感傷旅行

2006-09-19 16:26:05 | Jazz

昨日とは全く逆に、肌寒い1日となりました。

しかしフッと気がつくと、プロ野球パリーグは日ハムの大暴れで風雲急を告げる展開に! さらに大相撲も熱くなってきましたですね。

肝心の国のリーダーを決める選挙は、全く盛り上がりませんし、寄らば大樹という議員の情けなさが……。

ということで、本日もハードパップでいかせてもらいます――

4, 5, And 6 / Jackie McLean (Prestige)

ジャズのガイド本などでは定番! あまりにも有名なマクリーン版「Sentimental Journey」がウリという人気盤です。

録音は1956年7月13&20日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、マル・ウォルドロン(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) を核として、曲によってドナルド・バード(tp) とハンク・モブレー(ts) が加わるという大ハードバップ・セッションを収めています――

A-1 Sentimental Journey (1956年7月13日録音)
 さて冒頭に分かったような事を書きましたが、この演奏が何ゆえに人気名演なのか、正直に告白すると私には、しばらくの間、理解出来ませんでした。
 このアルバムを聴いたのは、本格的にジャズに入門し、ジャッキー・マクリーンという激情型プレイヤーの虜になってからわりと早い時期で、しかも活字からの情報で素晴らしいとされていただけに、この演奏を初めて聴いた時は完全に肩透かしでした。
 なにしろジャッキー・マクリーンは、緩いテンポで伸びやかに吹いているだけなのですから! もちろん、あのギスギスした音色は何時もと変わらぬ魅力なんですが、ストレートな「情熱」や「泣き」が、当時の私には感じられなかったのですねぇ……。
 それが 20代の終り頃、短い人生でもいろいろとあった頃でしたが、たまたま入ったカフェバー(古い!)で流れていたのが、この曲でした。体質的に日頃はあまり酒に酔わない自分が、珍しく適度に酔っていた所為もあったんでしょうが、ジャッキー・マクリーンが変奏するテーマの快適さに、酔いましたねぇ♪
 まず31秒目からの変奏があってサビに入っていくところが、ゾクゾクします。そしてブレイクからアドリブパートに入ってからも、全てがその調子というか、テーマの変奏を基調としたところに気がつくと、後はもう、たまらない「泣き」の世界が待っているというわけです。
 リズム隊も重く、しなやかなビートを送り出してきますから、本当に気持ち良く、シラフでも充分に酔えます♪ 特に3分8秒目あたりからのワザとらしいフレーズなんか、普通は顰蹙なんですが、妙な仲間意識が芽生えて許せてしまうんです。

A-2 Why Was I Born ? (1956年7月13日録音)
 これは最初っから好きな演奏でした。
 アップテンポで「泣き」を存分に聴かせてくれるジャッキー・マクリーンは、やっぱり素敵です。その音色のクドサも、ここまで来ると芸術でしょう。フレーズはもちろん、チャーリー・パーカーからのイタダキが多いわけですが、この音色があればこそ、充分に個性として認められるという、そのあたりの真髄が、この演奏で楽しめるのです。相変わらず随所でワザとらしいフレーズもやっていますが、憎めません。
 リズム隊も一体感があって、強靭だと思います。

A-3 Contour (1956年7月13日録音)
 これはドナルド・バードが入ったクインテットの演奏で、タイトルからすれば「5」ということになります。
 曲は幾何学的なハードバップですが、秘められた哀愁が心地良く、アート・テイラーの躍動的なドラムスに煽られて、まずジャッキー・マクリーンが泣きじゃくります。
 続くドナルド・バードも絶好調で、意外に落ち着いた雰囲気を醸し出しながら歌心優先で聴かせてくれるアドリブは、魅力満点です。もちろん随所でクリフォード・ブラウン(tp) のフレーズをイタダキました状態♪
 さらにマル・ウォルドロンは自然体で出てしまうモールス信号が!

B-1 Confirmation (1956年7月20日録音)
 ビバップの定番曲を、ここではさらにハンク・モブレーが加わったセクステットで演奏されますので、「6」というわけです。
 内容はジャムセッション色が強く、先発のジャッキー・マクリーンは遺憾なく情熱を吐露し、ドナルド・バードは丁寧に吹奏していますが、それが裏目というか、やや若さが足りません。
 しかし続くハンク・モブレーは落ち着いた中にも柔らか味優先のアドリブで、その音色とフレーズはモタレとタメの美学♪ ややモゴモゴした音色なんか、ちょっと聴くとダサいわけですが、これ無くしてはハンク・モブレーとは言えません。贔屓の引き倒しであることは、充分、自覚しておりますが……。

B-2 When I Fall In Love (1956年7月20日録音)
 またまたジャッキー・マクリーンのワンホーン演奏で、通常はスローで解釈される哀愁のスタンダード曲を、ここでは思い切ったアップテンポにして情熱を吐露していきます。
 リズム隊もアート・テイラーを中心に好調で、暗い情念を伴ったマル・ウォルドロンの伴奏がジャストフィットです。
 それにしてもジャッキー・マクリーンは自然体で泣いているという、本当にこの人の1950年代の演奏は、何を聴いても素晴らしいと思います。

B-3 Abstraction (1956年7月20日録音)
 マル・ウォルドロンが書いた、あの有名な「Left Alone」系のスロー曲です。
 それと同じく、ここでもジャッキー・マクリーンが主役に据えられていますから、哀愁モロ出し大会!
 しかもここではドナルド・バードが、終始、リーダーを前面に押出しているというか、密かに裏で絡むだけという、効果的な演出が効いています。ただし煮えきり方がイマイチというか、やや格好をつけてしまった感が……。

ということで、人気盤にはちゃんと理由があるにせよ、それはやっぱり聴き手の感性という証明が、この盤でしょうか。万人が挙って楽しめる作品ではないと思いますが、冒頭の「Sentimental Journey」はやっぱり魅力的なのでした。

私は結果として、10年はソンをした気分ではありますが……♪

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ハードバップは暑苦しいか?

2006-09-18 19:43:50 | Weblog

またまた台風で大被害が出てしまいました。

被災された皆様には心からお見舞い申し上げます。

さてその影響下、実家から赴任地に戻ってみたら、フェーン現象で真夏の出来事でした。やれやれ……。

ということで、本日はやや、暑苦しいハードバップ盤です――

The Curtis Fuller Jazztet (Savoy)

何ともキッチュなジャケットですが、中身はバリバリのハードバップ!

タイトルに「ジャズテット」とありますが、これは後にアート・ファーマー(tp) &ベニー・ゴルソン(ts) が中心となって運営された有名バンドで、そこには当初、この盤のリーダーであるカーティス・フラーも参加していたことから、おそらくこのセッション時には主要なアイディアが固まっていたものと思われます。

もちろんその主幹はベニー・ゴルソンでしょう。その特徴である、ふくよかなハーモニーを駆使したアレンジはゴルソン・ハーモニーと称された癒し系でした。それがここでも楽しめるのは、言わずもがなです。

録音は1959年8月25日、メンバーはリー・モーガン(tp)、カーティス・フラー(tb)、ベニー・ゴルソン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という、一時のディジー・ガレスピー楽団の同僚が集合しています。

また、リー・モーガンの傑作盤「Vol.3 (Blue Note)」と重なるメンツでもありますが、どちらもカーティス・フラーは蚊帳の外というのがミソで、それゆえに新鮮な気持ちで聴けるのです――

A-1 It's Alright With Me
 コール・ポーター作曲によるお馴染みのスタンダードが、軽快に演奏されています。
 テーマメロディはカーティス・フラーとベニー・ゴルソンの2管のユニゾンで演奏され、中音域を活かした温か味が最高♪ しかもそれがステレオ盤だと左にトロンボーン、右にテナーサックス、そして真ん中には、弾みまくりのウィントン・ケリーのピアノという配置ですから、たまりません。
 そしてアドリブパートに雪崩込むところには、ちょっとした仕掛けが施され、カーティス・フラーがキメのフレーズからハードバップ真っ只中に炸裂します。
 続くベニー・ゴルソンも、幾分暑苦しい音色でモリモリと吹きまくり! そして、お待たせしました! いよいよリー・モーガンがファンキーな突進力でバランスを失ったアドリブを展開しますが、それは若気の至りで憎めません。
 それよりもリズム隊の充実度は驚異的で、颯爽としたウィントン・ケリー、手堅いチャーリー・パーシップ、アグレッシブなボール・チェンバースと、底力を発揮しています。
 ちなみにこの曲は後年、前述した「ジャズテット」の旗揚げアルバムで再演されますので、聞き比べも楽しいかと思いますが、そちらはカーティス・フラー中心なので、物足りないかもしれません。

A-2 Arabia
 これも後年、カーティス・フラーが参加したジャズメッセンジャーズで再演される、永遠のジャズスタンダードです。もちろんタイトルどおりに中近東モードが使われているのがミソです。しかし決して難しいものではなく、不思議な哀愁があるので人気曲になっているわけです。
 ここでの演奏はリー・モーガンがミュートでテーマをリードし、ベニー・ゴルソンとカーティス・フラーがハーモニーをつける王道の展開が心地良く、アドリブパートでも快適なリズム隊のグルーヴで、それが持続していきます。
 中でもリー・モーガンのミュートによるアドリブは出色で、その横溢するファンキー・ムードには完全脱帽です。カーティス・フラーとベニー・ゴルソンも健闘していますが、ややマンネリです。
 しかしウィントン・ケリーは流石ですねっ♪ まさに全盛期の輝きで珠玉のフレーズとノリを存分に聴かせてくれますし、またリズム隊全体が素晴らし過ぎです!

A-3 I'll Walk Alone
 スタンダート曲のスローな解釈で、ベニー・ゴルソンがサブトーンを駆使したムードテナーでメロディをリードし、カーティス・フラーがそれを変奏しつつ絡んでいくという名人芸が、たまりません。
 ベニー・ゴルソンは作編曲家としての評価ばかりが優先していますが、テナーサックス奏者としては、こういうムード系が和みますねぇ。もう少し刺激があれば、バラード集もOK、かもしれません。
 また、ここでもリー・モーガンが最高で、独特のタメとリズムに対するノリが、こういうスローな展開では、ますます冴えています。もちろんウィントン・ケリーはイントロの作り方から伴奏、アドリブソロに至るまで、ケチのつけようがありません♪

B-1 Judy's Dilemma
 イントロはハードバッブの定番という蠢き系のベースから、ファンキーなテーマが始まれば、気分はすっかりゴキゲンです。ラテンビートを入れたリズム隊が躍動的ですし、アドリブ先発のカーティス・フラーはツボを外していません。
 また要所に仕掛けられた刺激的なリフは、我国の作編曲家である菊池俊輔がパクッて、いろいろな映画やテレビドラマのサントラに使っています。おぉ、キイ・ハンター♪
 という余談はさておき、リー・モーガンは少しばかり暴走しつつも、卓越したリズム隊の好演に助けられています。

B-2 Weatleith Hall
 オーラスは弾けるウィントン・ケリーのピアノに導かれたハードバップのブルース大会で、ジャズではお約束のリフを使ったジャムセッションのスタイルですが、これも要所にキメが仕込まれていますので、纏まりがあります。
 アドリブ先発はミュートで迫るリー・モーガンが、もう最高! 思いっきり溜め込んで、一気に吐露するダークでファンキーな心意気には、心底グッときます。
 続くベニー・ゴルソンは柔軟な音色でモリモリと吹きまくりですが、やや精彩がなく、あぁ、これがハンク・モブレー(ts) かジョニー・グリフィン(ts) だったらなぁ……、等と不遜なことが心を過ぎるあたりに、この人の限界があるようです。
 しかしカーティス・フラーは絶好調で、十八番のフレーズ、お約束のキメを連発して場を盛り上げていきます。しかもリズム隊が絶妙で、ここではウィントン・ケリーが様子を覗うように休止する部分があったりして、緊張感漂うジャズの醍醐味を満喫させてくれるのでした。

ということで、これは典型的なハードバッブが満載されたアルバムですが、同時にマンネリもたっぷりです。それは安心感と言い換えても良いのですが、このあたりを突き破らんとして、ベニー・ゴルソンやカーティス・フラーは、所謂3管編成のバンドを結成したのでしょう。前述の「ジャズテット」が正式発足しての初レコーディングは1960年の2月となっています。

そしてそれは忽ち流行となり、名門ジャズ・メッセンジャーズでさえ、先駆のジャズテットからカーティス・フラーを引き抜いて、その編成による演奏を行うのですから!

その意味で、このアルバムは雛形の1枚として、機会があれば聴いてみて下さいませ。

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ハードバップの秋

2006-09-17 18:05:36 | Weblog

暑さが去って涼しくなると、ハートバップの季節です。

なんて勝手に決め付けていますが、こんな季節には、ハンク・モブレー!

というのも、私の勝手な決め付けです。そして今日は、これを――

Another Workout / Hank Mobley (Blue Note)

確か1985年頃に発掘発売されたブツで、最初聴いた時からお蔵入りしていた理由が??? というほど充実した演奏が収められています。

なにしろ録音が1961年3月と12月! つまりハンク・モブレーがマイルス・デイビス(tp) のバンド・レギュラーだった頃の全盛期ですし、メンバーはハンク・モブレー(ts) 以下、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、それはタイトルどおりに、あの名盤「ワークアウト(Blue Note)」と同じメンツによる兄弟セッションですから、悪いはずがありません――

A-1 Out Of Joe's Bag (1961年12月5日録音)
 フィリー・ジョーの張り切ったドラムスとの掛け合いで進行するハードバップ曲で、作曲はもちろんハンク・モブレーという旨味があります。
 ただしアドリブに突入する部分に、やや乱れがあり、それがお蔵入りの原因でしょうか? しかし本編部分のハンク・モブレーは好調極まりなく、何時もよりもハードなフレーズも織り交ぜながら、あのモブレー節を聴かせてくれます。
 続くウィントン・ケリーも素晴らしく、フィリー・ジョーも楽しいリムショットで合の手を入れ、さらにクライマックスのドラムソロもビシッと決まっています。

A-2 I Should Care (1961年12月5日録音)
 お馴染みのスタンダード曲を悠然と吹奏するハンク・モブレー♪ スローな展開ですが、テーマの変奏から独特の味を醸し出していくあたりは、充分にファンを納得させるものです。しかもビートを強めたアドリブパートでは、その歌心がますます冴えるのですから、たまりません。モタレが良い味になっているのも、ハンク・モブレーだけの個性ですし、ちょっと聞きには緩すぎる演奏かもしれませんが、モブレー・マニアには、それが堪えられないのです♪

A-3 Gettin' And Jettin' (1961年12月5日録音)
 マイルス・デイビスのモード曲「Milestones」のハンク・モブレー的解釈とでも申しましょうか、モードを美味しく料理した溌剌たる名曲!
 快調なリズム隊の煽られてノリまくるハンク・モブレーは、もう最高です。それは全体的にモードの色合が強いリズム隊とファンキーに拘るハンク・モブレーの対比が、クライマックスのドラムスとの掛け合いで調和していくのです。
 ちなみにこの曲は後年、「Up A Step」と名前を変えて1963年に再演され、アルバム「ノー・ルーム・フォー・スクエア(Blue Note)」に収められましたが、そちらはもう少しモード味が強くなっています。
 
B-1 Hank's Other Soul (1961年12月5日録音)
 このアルバムの目玉演奏が、これです。
 ハンク・モブレーが十八番のファンキームードが横溢し、リズム隊はゴスペル・ハードバップの真髄を披露して、グイグイと盛り上がります。
 あぁ、ハンク・モブレーのアドリブは完璧です。歌心とタメが絶妙なフレーズの妙、モタレとネバリの美学が見事に融合した、一世一代の名演だと思います♪
 もちろんウィントン・ケリーも負けじと楽しくグッとくるピアノを披露し、フィリー・ジョーのゴスペルドラムも冴え、ポール・チェンバースも図太くドライブしています! 最初から最後まで、当にこれがハードバップという極みつきです♪

B-2 Hello Young Lovers (1961年12月5日録音)
 和みのスタンダード曲を、より以上に和んで演奏するハンク・モブレー♪
 これが、たまらなく素敵です。もう、テーマ部分の吹奏だけで、完全降伏!
 リズム隊との息もピッタリですし、ジャズがこんなに楽しくて良いんでしょうか!? 決して快楽的ではないんですが、ほどよい「泣き」と「哀愁」を潜ませたモブレー節が全篇に満ち溢れているのです。もちろん「歌心」も満点です。
 そしてリズム隊が、これまたゴキゲンで、弾みまくりのウィントン・ケリーに、颯爽としたフィリー・ジョーのドラムスが素晴らし過ぎです♪
 ちなみにこの曲にはJ.J.ジョンソン(tb) やカーティス・フラー(tb) の名演がありますが、このハンク・モブレーのバージョンも、永遠に聴き継がれる決定版だと思います。

B-3 Three Coins In A Fountain (1961年3月26日録音)
 この曲だけが前述したアルバム「ワークアウト」セッションで未発表になっていたものの流用で、当日はグラント・グリーン(g) も現場に居たのですが、ここには参加していないので違和感がありません。
 もちろんハンク・モブレーは言う事なしの快演ですし、リズム隊も緊張感があって最高です。

ということで、これはハンク・モブレーの隠れた代表作です。

そして実は、最近リマスターされてCD化されていますが、「Three Coins In A Fountain」が抜かれた純粋盤? とは言え、名作アルバムに変わりはありません。むしろジャケットは、新盤の方が良いほどです。

ちなみにその曲は「ワークアウト」のCDにボーナストラックとして入っているようです。

まあ、それはそれとして、皆様にはぜひとも聴いていただきとうございます。「Hank's Other Soul」と「Hello Young Lovers」の2連発は絶対です。

関係ないけど、今日は「日本以外全部沈没」のレイトショウに行ってきます♪

 

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秋空のピアニスト

2006-09-16 14:57:24 | Weblog

昨日はPCが絶不調でした。原因不明だったのですが、何やってもダメだったのが、本日、再起動してみたら、何事も無かったかのように動くという気まぐれです。

やっぱり秋の空なんですかねぇ~。

ということで、秋には、こんなピアノが聴きたくなって――

Ballads / Krzysztof Komeda (Power Bros)

今では日本経済の悪夢となったバブル期は、いろんな物欲が渦巻き、例えばジャズでは欧州盤ブームがひとつのトレンドでした。

そこには賛否両論あろうとも、今まで聴くことの出来なかった多くの優れたジャズメンに邂逅出来た幸せが、確かにあったのです。

その中で人気を得たひとりが、ジャズピアニストとしてのクシシュトフ・コメダです。

クシシュトフ・コメダはポーランド人で、西側ではクリストファー・コメダとして、ロマン・ポランスキー監督の映画音楽を数多く担当している有名人ですが、ジャズピアニストとしての腕前も鬼才の名に恥じぬものでした。

実際、ポーランドのジャズ界では主導的な役割を果たしていたようです。

このアルバムは1962年のワルシャワ・ジャズ・ジャンボリーにおけるビアノトリオのライブ音源をCD化したブツです。

メンバーはKrzysztof Komeda(p)、Roman Dylag(b)、Rune Carlsson(ds) で、タイトルどおり耽美的な演奏がたっぷりと味わえます――

01 Waltz (Alice In Wanderland)
 タイトルは「Waltz」ですが、実はビル・エバンスが十八番にしていた「不思議の国のアリス」です。
 そしてここでのクシシュトフ・コメダのピアノ、及びトリオでの演奏は、そのビル・エバンスを大いに意識したものですが、その耽美性、歌心の成熟度、爽やかさは負けるものではありません。
 ビル・エバンスの演奏が幻想的な美しさから爛熟美に落ちて行く雰囲気ならば、クシシュトフ・コメダは同様の幻想美が墨絵の清々しさに移り変わっていく感じです。もちろん歌心は互角ですが、似て非なる美しさがあると思います。
 ドラムスとベースも鋭さを含んだ好演ですし、もう、これ1曲で、完全にこのアルバムの虜になるでしょう。

02 Breakfast At Tiffany's - Theme 1
 グッとテンポを落として耽美を究めんとするクシシュトフ・コメダのピアノの響き♪ ジンワリと心に滲みてまいります。このあたりのトリオの先進性は、同時期のビル・エバンス以上と言ったら、顰蹙でしょうか?
 でも、私には実際にそう感じられるんです。あぁ、このディープな歌心♪ 美メロの泉です。

03 Unknown
 タイトルが付けられていませんが、どっかで聞いたようなメロディが心地良い限りです。ドラムスもスティック主体でビシバシと攻めて来ますが、クシシュトフ・コメダは揺ぎ無い美メロ主義です。
 またベースも攻撃的なソロを展開しますが、残念ながらトリオとしての絡みが稀薄のようで、やや残念……。しかしキース・ジャレットのスタンダーズ・トリオあたりが、これを意識していたという可能性も秘めています。

04 Ballad For Bernt
 ちょっとデューク・エリントンあたりが書きそうな魅惑のスロー曲です。
 重いブラシの響きとベースの蠢きが、クシシュトフ・コメダの耽美なピアノを一層引き立てていますから、全体はテーマメロディの変奏に終始した短いトラックとはいえ、満足感があります。

05 Crazy Girl
 どうやらクシシュトフ・コメダの代表曲らしいです。
 リズミックなベースの定型パターンに促され、クシシュトフ・コメダは情緒に流されないクールさを発揮しています。
 その曲調と演奏スタイルは、「カインド・オブ・ブルー」期のマイルス・デイビスみたいな魅力があり、トリオは徐々に力強いベクトルを明確にしていくのです。もちろんマイルス・デイビスのトランペットをビアノに置換したようなフレーズが出ますし、ドラムスはジミー・コブを大いに意識しているようです。
 しかし基本は、やっぱりビル・エバンスでしょうねぇ~。似て非なるものとはいえ、この曲をビル・エバンスのトリオが演奏したら、どうなるか!? 大いに興味が沸きます。

06 This Or This
 最後はベースがリードする暗い情念みちた曲で、それが、かなり黒っぽい雰囲気を秘めていますから、知らぬ間に惹き込まれてしまう演奏です。
 クシシュトフ・コメダのピアノからは「泣き」というか「琴線に触れる」というか、とにかく不思議な魅力に満ち溢れたフレーズが泉のごとく湧き出て止まりません。
 リズム隊も力強く、緩急自在に盛り上げていきますから、リスナーは山場に至って最高に熱くさせられるという、魔法にかかってしまいます。
 これは、東欧ゴスペルっ!? やるせないムードの最後もたまりません♪

ということで、これからクシシュトフ・コメダを聴いてみようと思われる皆様には、激オススメです。いかにもジャズで聴き易いし、和みます♪

ちなみにクシシュトフ・コメダは1960年代末の39歳の時、交通事故で他界していますが、その名前が世界中に知れ渡ったのが、その直前に携わっていたホラー映画の傑作「ローズマリーの赤ちゃん」という、真に呪われた作品でした。

合掌。

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休載のお詫び

2006-09-15 17:08:11 | Weblog

PC不調につき、本日は休載致します。

空は爽やかに晴れているのになぁ……。

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エレキベースが好き!

2006-09-14 17:28:25 | Weblog

たいぶ涼しくなってきましたね。仕事にも、どうにか余裕が出てきました。

しかし仕事優先の生活に変わりは無く、こんなんで良いのか? 等と思うことも度々ですが、まあ、いいか……。

ということで、本日の1枚は――

Comin' On Home / Richard Groove Holmes (Blue Note)

ブンブン・ブリブリのエレキベースが、大好きです!

一番好きなベーシストはザ・フーの故ジョン・エントウィッスルですが、黒人ではジェリー・ジェモットでしょうか。この人は黒人テナーサックス奏者のキング・カーチスのバンドで働きながら、いろんなスタジオセッションをこなしていた隠れ名手です。私はアレサ・フランクリンのバックで弾いているのに、惚れこみました♪

しかし当時は、そういうクレジットがアルバムジャケットには載らないので、演奏に接するのは、なかなか困難でした。何となく黒人ソウル系の演奏を聴いて、そうかなぁ……? と推察する楽しみもあったのですが。

で、このアルバムは当時としては珍しく、きちんとジェリー・ジェモットがクレジットされたもので、リーダーのリチャード・グルーヴ・ホルムスは1950年代末から活躍していたジャズオルガン奏者です。

録音は1971年5月19日、メンバーはリチャード・グルーヴ・ホルムス(org)、ウェルドン・アーヴィン(elp)、ジェラルド・ハバード(g)、ジェリー・ジェモット(b)、ダリル・ワシントン(ds)、ジェームス・デイビス(per) に加えて、1曲だけ、チャック・レイニー(b) が交代しています。

ちなみにオルガン物には、ほとんどベースが入らないのが普通なんですが、この時代、つまり1970年代にはソウルジャズも16ビートが主流になり、それに伴ってエレキベースが必要とされたようです――

A-1 Groovin' For Mr. C
 初っ端からエレキベースがブンブンブン♪ パーカッションがチャカポコ始まり、アップテンポでオルガンがウネリます。しかも隠し味にエレピが効いていますから、もう完全に私の好きな世界です♪
 またギターのジェラルド・ハバードは無名ですが、小型ジョージ・ベンソンという味です。またエレピのウェルドン・アーヴィンは、今でこそレアグルーヴの王様ですが、この当時は新主流派の新鋭といった趣のモード系ソロを聴かせてくれます。
 お目当てのジェリー・ジェモットは、もうグルーヴしまくりで、このベースだけ聴いていても大満足です。

A-2 Theme From Love Story
 ドドンパ味の4ビートジャズで、この曲だけ、へースがチャック・レイニーに替わっていますが、それも含めて、ノリがイマイチの演奏だと思います。
 曲は当時の大ヒット映画「ある愛の歌」のテーマで、それ自体も大ヒットしていましたから、狙いは分かるんですが……。
 リチャード・グルーヴ・ホルムスのオルガンは爽やか系で迫っています。

A-3 Mr. Clean
 ミステリアス・ファンクとでも申しましょうか、蠢くエレキベースと魅惑のエレピがテーマをリードしていくスタートからして、完全に虜になります。
 一応リーダーのリチャード・グルーヴ・ホルムスも宇宙空間的なオルガンソロを披露していますが、ウェルドン・アーヴィンのエレピやジェラルド・ハバードのギターの方が目立つという♪ ドラムス&パーカッションも頑張っていますし、ジェリー・ジェモットは最高のベースワークで、グッときます。
 ちなみにこの曲はフレディ・ハバードも演奏していますが、出来はこちらが上でしょう。機会があれば、聴きくらべてみて下さいませ。

A-4 Down Home Funk
 タイトルどおりドロ臭いファンキー曲で、ド頭から様々な仕掛けが痛快に交じり合っていきます。ミディアム・テンポでのリズム隊のグルーヴは最高潮で、当時の黒人映画のサントラのような響きが、完全に私の好みです♪ もちろんジェリー・ジェモットのベースは素晴らしく、リチャード・グルーヴ・ホルムスも快適にタメまくったオルガンソロを披露しています。
 あぁ、このリズムとビートこそが、たまらないんですね! 最後の打楽器の饗宴部分はサンタナのようで、ここも最高ですよ♪

B-1 Don't Mess With Me
 B面は変則ブーガルー・ビートで演じられる痛快なファンク曲です。
 誰かの掛声というか擬似ラップも楽しく、演奏全体が集団即興気味にリフの応酬に興じ、次第にグルーヴが形成されていくのですから、これだって立派なジャズだと思います。
 黒っぽいものが好きな人ならば、一度聴いたら完全に虜になる演奏でしょう。リチャード・グルーヴ・ホルムスのオルガンは泣いていますし、ダリル・ワシントンのドラムスも痛快なグイノリ♪ ジェラルド・ハバードのギターも流麗なフレーズで破綻無く、もちろんジェリー・ジェモットのベースは蠢き過ぎて止まりません。

B-2 Wave
 あまりにも有名なボサノバの名曲が、意想外の爽やかで演奏されています。
 そのキモはウェルドン・アーヴィンのエレピとダリル・ワシントンのタイトなドラムスでしょうか、とにかくリチャード・グルーヴ・ホルムスのオルガンも涼しく、何度聴いても飽きません。
 私は夏になると、ほぼ毎日、聴いているほどです。
 なにしろ、それまで真っ黒だった全員のノリとアドリブソロが、この曲に限っては歌心優先の爽やかモードに転じています。騙されたと思って聴いてみて下さい。全く、このメンツですから、騙されて悶絶発狂の名演だと思います。あぁ、最高です♪

B-3 This Here
 オーラスはボビー・ティモンズ(p) が書いたファンキー・ワルツの聖典が、新感覚の16ビートで披露されます。
 もちろんジェリー・ジェモットが大活躍のリズム隊が、アドリブパートでは率先して変則4ビートに突入し、まずはウェルドン・アーヴィンがエレピで正統派のソロを展開し、ジェラルド・ハバードも健闘しています。
 さらにリチャード・グルーヴ・ホルムスは、こういう演奏は十八番ですから、クライマックスまで一直線の爆裂ソロで場を盛り上げるのでした。

ということで、なんだかリーダーが一番目立たないような雰囲気もありますが、内容は文句無しの名盤だと思います。しかもそれは、所謂レアグルーヴとかソウルジャズが好きな人限定では無く、普通のジャズが好きな皆様にも、激オススメして後悔しない内容なんです。

ちなみに白状すると、私がこのアルバムを買ったのは、ジャケ写がノーマン・シーフ撮影だったからで、確か1974年の夏に某デパートの輸入盤バーゲンで500円位で入手したものです。

このノーマン・シーフという人は、1970年代前半に多くのミュージシャンを撮っており、所謂ニコパチという芸能界ノリでは無い、素のままのスタアを写す斬新さが、素敵なレコードジャケットに使われていました。その多くはロックやソウル畑のブツですが、これは珍しくもジャズ系のアルバムというわけです。

そして聴いて驚愕! その全く私の好みの内容には歓喜悶絶でした♪

しかしリアルタイムで完全に無視されていたようです。なにしろフュージョンブームの頃でさえ、これをジャズ喫茶で聴いた記憶が無いのです。それが1990年代のレアグルーヴ・ブームで持ち上げられた時には、心底、ビックリしましたですねっ!

その所為か、現在ではCD化もされており、私にとっては車の中の常備の1枚です。

例によって、ジャケ写から試聴出来るサイトにリンクしてありますよ。

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余波中毒

2006-09-13 19:54:27 | Weblog

またまた、ジャズモードに入らなくなりました。

原因は最近、ストーンズばっかり聴いているからです。特に「アフターマス」という初期の大傑作盤! これの虜です。

詳しい内容は、リンクをご一読して下さいませ。

とにかく今の私には、これ無くしては生きられない状態!

本当に、大袈裟じゃなくて♪

う~ん、これでいいのか!?

明日は何とか、ジャズモードに入れてみますが、本日はご容赦願います。

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シダー&クリフ

2006-09-12 18:51:02 | Weblog

最近、目標を見失っている感じです。時間の無さが原因かもしれません。

いろんなものに流されている自分、まあ、それに気づいているだけ、マシかもしませんが……。

ということで、何もかも忘れて夢中になれるジャズといえば――

A Night At Boomers, Vol.1 / Cedar Walton (Muse)

フュージョンブームだった1970年代のジャズ喫茶では、とにかく4ビートの新譜が待望されていました。

特に中堅どころのモロジャズは大歓迎で、バリバリのモード系やハードバップは「事なかれジャズ」等と一部では揶揄されつつも、やはり魅力に満ちたものでした。

その中でメキメキと人気を得ていったのが、本日の主役であるピアニストのシダー・ウォルトンです。その履歴はジャズ・メッセンジャーズでのレギュラーを筆頭に、常に王道を究めんとする姿勢が潔く、また演奏スタイルはマッコイ・タイナー系のモード手法に仄かなファンキー味という、如何にもジャズ喫茶向けでした。

つまり指が良く動いてハードの演奏、それでいて和みもあるという♪ 本日の1枚は、当にそうした中の人気盤です。

録音は1973年1月4日、当時のシダー・ウォルトンが根城にしていたニューヨークのクラブ「ブーマーズ」でのライブを収めており、メンバーはシダー・ウォルトン(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) というレギュラートリオに、盟友のクリフ・ジョーダン(ts) を入れています――

A-1 Holy Land
 厳かで爽やかなテーマが印象的なシダー・ウォルトンのオリジナル曲です。仕込まれたクラシック調のパートがミソで、やや後に発表されたアル・ヘイグのピアノトリオ・バージョンでもお馴染みですが、ここではクリフ・ジョーダンのテナーサックスを前面に立てたハードバップ大会です。
 アップテンポでグイグイと吹きまくるクリフ・ジョーダンは、その音色が何故か腑抜け気味ですが、シダー・ウォルトンのピアノも安物のアップライトみたいな薄っぺらな音なので、これは録音の所為かもしれません。
 ただし2人とも本当に熱演で、特にシダー・ウォルトンのツボを押さえたアドリブの展開には惹き込まれます。
 またサム・ジョーンズのベースは電気増幅されたような、これもやや芯の無い音ですが、早弾きのソロでは破綻無く、キャノンボール・アダレイ(as) のバンドやオスカー・ピーターソン(p) のトリオ等々で長年共演してきたルイス・ヘイズのドラムスとの相性もバッチリです。

A-2 This Guy's In Love With You
 おぉ、これは有名なバート・バカラックの作曲による、永遠の美メロ・ヒット曲♪
 ここではクリフ・ジョーダンが抜けたピアノトリオで演奏されますが、ネタが良いので、シダー・ウォルトンも忌憚無くメロディをフェイクし、グルーヴィな雰囲気でアドリブを展開しています。
 ただし、このピアノの音色は、どうにかならんかったのか……。

A-3 Cheryl
 チャーリー・バーカー(as) が書いたビバップの見本のような難曲を、このバンドは余裕でこなしていますが、その熱気は如何にもライブの醍醐味が横溢しています。
 なにしろリズム隊がブリブリにドライブしていますから、クリフ・ジョーダンも単なるハードバップに止まらず、ヒステリックなフレーズを織り交ぜて烈しい吹奏を聴かせてくれます。それはジョン・コルトレーンになりそうで成らないという、微妙な匙加減! ここでも腑抜けの音色ですが、それが逆に個性的で結果オーライ♪
 シダー・ウォルトンも張り切ったアドリブでそれに続き、ルイス・ヘイズのドラムスも冴えに冴え、サム・ジョーンズもグイノリです!

B-1 The Highest Mountain
 そういうノリの良さはB面にも継続され、この曲はクリフ・ジョーダンが書いたモード系のテーマがたまらないという、白熱の名演です。しかもミステリアスな哀愁が隠し味ですから、ヒステリックな「泣き」も許せてしまいます。
 そして絶好調のリズム隊が本当に凄く、ついついボリュームを上げてしまうのでした。

B-2 Down In Brazil
 一転、アップテンポですが、お馴染みの楽しいテーマメロディで和みます。あぁ、ついつい、一緒に口ずさんでしまいますねぇ~♪
 全くこういう変則ラテンロックな曲調では、クリフ・ジョーダンのフワフワしたテナーサックスの音色がピッタリです。もちろんアドリブでの歌心も原曲を活かした柔らか味があります。
 そしてシダー・ウォルトンは、ややスケールで逃げている部分もありますが、ベース&ドラムスと上手く絡みながら、楽しさ極まりないアドリブを展開しており、こういう演奏こそが、当時のジャズ喫茶では求められていたのです。

B-3 St. Thomas
 ソニー・ロリンズ(ts) の決定的名演が残されている人気曲を、このバンドは前曲のノリを引き継いで楽しく演じています。とにかくルイス・ヘイズが叩き出すラテンビートが快調ですから、クリフ・ジョーダンもソニー・ロリンズに負けじと熱演し、途中からは高速4ビートに突入して激烈に吹きまくりです!
 もちろんリーダーのシダー・ウォルトンも負けていません。ペラペラした音色のピアノが壊れんばかりの烈しいタッチで、流れように弾きまくりです。
 このあたりは、特に歌心が感じられるわけでは無いのですが、この勢いと潔さが最高! ルイス・ヘイズのドラムスも歯切れ良く、サム・ジョーンズのベースも落ち着いたドライブ感があるので、ジャズの醍醐味が堪能出来るのでした。

B-4 Bleecker Street Theme
 熱演続きのB面を締め括るのが、このクラブ「ブーマーズ」のテーマともいうべきグルーヴィなブルースです。作曲はもちろんシダー・ウォルトンで、実はバンドテーマでもあります。短い演奏ですが、これが有ると無いとでは、ライブ盤としての楽しさが極まらないと思います。

ということで、アルバム丸ごとが楽しく熱気に満ちた傑作です。惜しむらくは、各楽器の音色、特にピアノがショボイ録音なのが???

しかしバンドとしての纏まりの良さ、演奏の熱気、演目の良さ、さらにマスコミに左右されない、当時のジャズ界の一端を切り取ったプロデュースの狙いがスバリと決まった名作だと思います。

これには「Vol.2」も出ていますが、個人的には演目からして、こちらが好み♪ とはいえ、機会があれば両方聴いてみて下さい。いつまでも愛着が持てるアルバムになりますよ♪

コメント (2)
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ファーマー&グライス

2006-09-11 17:57:28 | Weblog

ようやく涼しくなってきましたが、仕事は地獄です。

でも、こういう時に強引に時間を作って更新作業をするのは、案外楽しかったりします♪ 時間を無題にしない緊張感が良かったりして!

ということで、本日は――

Art Farmer Ouintet Featuring Gigi Gryce (Prestige)

ハードバップ期から活躍した黒人トランペッターのアート・ファーマーは、その実力の証明として吹き込んだ作品も数多いのですが、何故か知られているのは、極一部、しかも名盤と認定されたブツだけというのが、現実ではないでしょうか?

例えばベニー・ゴルソン(ts) と組んだ「ジャズテット(Argo)」やワンホーンの秀作「アート(Argo)」、あるいはビル・エバンス(p) の参加が嬉しい「モダンアート(U.A.)」、さらにハードバップの基本形を作った「ファーマー・メット・グイラス(Prestige)」、そしてジム・ホール(g) との双頭バンドでは「スウェーデンに愛をこめて」あたりが、それです。

しかし今では忘れられた作品の中に隠れ名盤が多いというのも、この人ならではの個性というか、あまりにも平均点が高すぎて逆に損をしてしまった感があります。

このアルバムは当にそうした1枚で、録音は1955年10月21日、メンバーはアート・ファーマー(tp)、ジジ・グライス(as,arr)、デューク・ジョーダン(p)、アディソン・ファーマー(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という、非常に興味をそそるクインテットです。

ちなみにアート・ファーマーとジジ・グライスは盟友として、当時、実際にバンドを組んでいたと言われており、その最良の成果が現在では、前述した「ファーマー・メット・グイラス(Prestige)」という、2枚の10吋盤をカップリングしたアルバムに纏められていますが、この作品はそれに続くセッションとなっており、一段と進化した新しいハードバップを模索した内容です――

A-1 Forecast
 ここに参加したピアニストのデューク・ジョーダンが書いた素敵なテーマメロディが、まず最高です。もちろん作者本人が、すでにピアノトリオで吹き込んだ愛らしいバージョンも存在していますが、ここでの溌剌したイントロを使ったハードバップ・バージョンにも別な魅力があります。
 なにしろアート・ファーマーのアドリブには、原曲に秘められた哀愁を増幅再生しているような響きがありますし、ジジ・グライスも黒人らしからぬ灰色の音色で、滑らかなソロを聴かせてくれます。
 そしてやっぱりデューク・ジョーダン! 作者ならではのツボを押さえた「泣き」のフレーズの連発には、グッときます。
 それとフィリー・ジョー! ステックで奔放にビートを叩き出し、ブラシでスマートにサポートするという、ノリにノッたドラミングは本当に良いですねっ♪ 

A-2 Evening In Casablanca
 ここからの5曲は全てジジ・グライスの作編曲によるもので、まずこれは哀愁の名曲として永遠のジャズオリジナルになっている名演です。
 テーマをリードするアート・ファーマーは、その幾分ハスキーな音色で歌心を滲ませ、アレンジされた部分ではジジ・グライスが全体をリードするという役割分担も、素晴らしいバランスです。
 実際、スローな展開の中に力強い部分を入れ込んだアレンジは本当に素晴らしく、デューク・ジョーダンもその意図を充分に汲み取って、哀愁のアドリブで魅力を全開させるのでした。
 全体にハードバップらしくない、アレンジ偏重の演奏にも聞こえますが、その凝り方は半端ではないのです。

A-3 Nica's Tempo
 如何にもハードバップらしいテーマメロディですが、どことなく爽やかな風が吹いてくるフィーリングが絶妙です。
 そしてジジ・グライスのアルトサックスがクールな音色なのも特徴的で、アドリブソロのメロディにも余計な熱気が無いという、不思議な展開となります。
 う~ん、これではデューク・ジョーダンも持ち味のウェットな情感を表出させることが出来ずに苦戦気味……。アート・ファーマーも煮えきりません。
 これがジジ・グライスの狙った新しい感覚なんでしょうか? 良く聴くと、後年のブッカー・リトル(tp) あたりがやりそうな曲調でもありますが……。

B-1 Satellite
 穏やかな印象のテーマメロディが、アドリブパートでは立派なハードバップに変換されるという、捻った印象です。
 アート・ファーマーは穏健な吹奏に終始し、ジジ・グライスは珍しくも鋭角的な音色を使ってコントラストを付けますが、デューク・ジョーンダンは何時ものマイナーモードに入れずに苦しみます。
 いったい、これは、何だろう???

B-2 Sans Sousi
 ラテンビートを入れた楽しくもホロ苦いテーマが魅力的です。
 アドリブパートでも各々が哀愁を潜ませたソロを聴かせてくれますが、特に先発のジジ・グライスが不思議な存在感を示しています。
 なにしろアート・ファーマーはミュートで勝負、デューク・ジョーダンも持ち前の繊細な歌心を存分に発揮しているだけに、それが一層、際立っているのですが……。

B-3 Shabozz
 これもアフロのリズムを取り入れたハードバップで、フィリー・ジョーの頑張りが最初から目立ちます。
 しかしテーマ・メロディはマイナー調なので、アドリブパートでは一転して哀愁モード大会♪ 特にアート・ファーマーは、自己の資質を存分に発揮した素晴らしいアドリブを聴かせてくれます。こういう穏やかな歌心こそが、この人の魅力だと、つくづく思いますねぇ。
 またデューク・ジョーダンも、そういう点においては全く遜色無い出来栄えです。

ということで、やはり地味な演奏が多いのですが、それはジジ・グライスの作風が勝ちすぎた所為かもしれません。なにしろ皮肉なことに、ここで一番良い演奏なのが、デューク・ジョーダンが書いた「Forecast」なんですからっ! その溌剌したアレンジと演奏は、間違いなくハードバップの名演になっていて、流石、アルバムのトップに納められたのも納得です♪

その所為か、否か、このバンドはアート・ファーマーがホレス・シルバーの新グループに引き抜かれる形で終焉を迎えます。そして残されたジジ・グライスは、ドナルド・バードと組み直して、新たな展開を模索するのですが、良く考えみると、ホレス・シルバーのバンドとトランペッターの引き抜き合戦をしただけという……。

う~ん、やっぱり忘れられるだけのアルバムには、それなりの意味が潜んでいるのでしょうかねぇ……。

とは言え、A面ド頭の「Forecast」だけは、ぜひとも聴いて下さいませ。ジャケットも素敵だと思いませんか?

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