OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

サンタナ万歳!

2008-02-09 17:49:36 | Rock

午前中から急激に晴天となった所為で昨日の大雪が緩み、今日は車で走行中に雪崩に曹禺! 後部に雪の塊が当って車線の反対側まで流されました。それでも怪我が無かったのは幸いでしたが、車の後パンパーがやられました……。トホホです。

ということで、本日は――

Viva Santana (CBS / Sony)

ラテンロックの王様バンド、サンタナのレア音源集2枚組CDです。発売されたのは確か1988年頃で、名目が「“フィルモア”デビュー20周年記念」とされていたんですから、如何にサンタナというバンドがライブの人気者だったか、窺い知れるところでしょう。

とはいえ、スタジオ録音されたアルバムだって、野性的でありながら、実は緻密なプロデュースとアレンジが秀逸だと思います。

そしてこのセットには、そういう両面が見事に楽しめる構成になっているのです――

Disc 1

 01 Everybody's Everything (リミックス)
 02 Black Magic Woman/ Gypsy Queen (リミックス)
 03 Guajira (リミックス)
 04 Jungle Strut (1971年モントルーのライブ)
 05 Jingo (リミックス)
 06 Ballin' (未発表:1967年のデモ音源)
 07 Bambara (未発表:1980年のスタジオ録音)
 08 Angel Negro (未発表:1982年のスタジオ録音)
 09 Incident At Neshabur (フィルモア最後の日より:1973年7月4日のライブ)
 10 Just Let the Music Speak (未発表:1986年のスタジオ録音)
 11 Super Boogie / Hong Kong Blues (1985年のライブ)
 12 Song of the Wind (1977年のライブ)
 13 Abi Cama (1983年のライブ)
 14 Vilato (1983年のライブ)
 15 Paris Finale (1983年のライブ)

Disc 2

 01 Brotherhood (1985年のライブ)
 02 Open Invitation (1985年のライブ)
 03 Aqua Marine (ラフミックス)
 04 Dance, Sister, Dance (1978年カリフォルニアジャムのライブ)
 05 Europa / 哀愁のヨーロッパ (1979年大阪でのライブ)
 06 Peraza I (未発表:1985年のスタジオ録音)
 07 She's Not There (1985年のライブ)
 08 Bambele (1973年のライブ)
 09 Evil Ways
 10 Daughter of the Night (未発表:1982年のリハーサル音源)
 11 Peraza II (未発表:1985年のスタジオ録音)
 12 Black Magic Woman / Gypsy Queen (1982年のライブ)
 13 Oye Como Va (1982年のライブ)
 14 Persuasion (1969年ウッドストックのライブ)
 15 Soul Sacrifice (1969年ウッドストックのライブ)

――という演目は、ファンならば眩暈がすると思いますし、じっくり聴いてもコンパイルの見事さには唸るはずです。

狂熱的なラテンパーカッションにカルロス・サンタナの“泣き”のギターがあってこそ、ラテンロックという“キワドイ”ジャンルが成立している雰囲気ですが、そこは前世が日本人だったと言い切っているカルロス・サンタナの事ですから、我々も素直に楽しんで、バチはあたらないでしょう。

気になる収録曲では「Ballin'」がバンドとしては最古の音源かもしれませんね。ラテンビートというよりは、ジャズロック色が強い演奏で、オルガンがジェットマシーンっぽく唸ったり、またカルロス・サンタナのギターも派手なブルースロック調だったりして、サイケロック時代ど真ん中の演奏が楽しめます。極言すれば、マイルス・デイビスのトランペットが鳴り出しても不思議ではないと♪

また「Angel Negro」なんかサンタナというよりは、モロに巷のラテンのバンドという感じで、ピアノとホーン、打楽器に陽気なボーカルばっかりが目立ちますので、お蔵入りしていたのもムベなるかな……。しかしこれが滅法楽しいのでした。

それと“サンタナ風気持ち良いモード”が全開する「Song of the Wind」のライブバージョンは、やっぱり素敵です。私なんか、長距離ドライブではこのトラックばっかりを延々とリピートしまくっているほどです。あぁ、泣きのギターの官能美♪

次に Disc 2 では、「Dance, Sister, Dance」の死ぬほど熱いギターソロ! サンタナ最高!

そしてやっぱり「哀愁のヨーロッパ」が日本録音というのが嬉しいでしょう♪ これが嫌いな日本人はいないというほどですねっ♪ なんでも作曲者のトム・コスターがサンタナで来日した時に歌謡曲を聞いてヒントを得たという逸話があるほどです。あぁ、泣きのギターの極北ですが、中盤からテンポアップしてのアドリブパートも聴きごたえがありますよ♪ リズム隊のワイルドなフィーリングもなかなかです。

そしてリバイバルカバーでヒットさせた「She's Not There」のライブバージョンが、これまたスタジオバージョンを凌ぐ熱い演奏で、重いビートにクールなオルガン&シンセ、ソウルフルなボーカルにカッコ良いギターという黄金の瞬間がたっぷりと楽しめます。

また終盤からのヒット曲ライブバージョン乱れ打ちは、もちろん爽快ですが、ウッドストックのライブ2連発をクライマックスに持ってきたのは流石のプロデュースです。なんたってサンタナはウッドストックで世界に名前を売ったのですから! それは映画をご覧になられた皆様ならば、充分に納得出来るでしょう。

ということで、スタジオ&ライブの音源がゴッタ煮なんですが、非常に上手い編集によって曲間が繋がれており、通して聞いても全く違和感がありません。曲によっては打楽器だけのパートもあるんですが、それだってサンタナというバンドには欠かせないものですから、たまらんのですね♪

案外、サンタナの入門用にも最適な編集盤かもしれません。

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センス最高の和み盤

2008-02-08 17:20:14 | Jazz

今日は朝から物凄い積雪量だったんですが、やはり2月ということで、積もる傍から融けていく感じです。

でも、春が待ち遠しいですね。

そんな中、スキー場で遊ぼうと企んでいる家族や親戚・友人が昨夜から来ています。連休だからねぇ~。

ということで、本日は雰囲気の良いアルバムを――

Here's Love / Hank Jones (Argo)

最近、「品格」という言葉が聞かれますね。これは一言では説明つきかねる日本独特のフィーリングかと思います。

育ちが良いとか、上品だとか、行動・ふるまいが紳士的だとかでは、いまひとつ、ぴったりした解釈ではないでしょう。その場の雰囲気、空気に馴染んだ感性も必要かと思います。

で、ジャズ界ではハンク・ジョーンズこそが、「品格」のあるプレイで人気を集めているピアニストだと思います。それは単に歌心のあるアドリブとか、綺麗なビアノタッチとか、あるいはダンディな演奏態度ばかりではありません。けっこうファンキーな事もやっているし、エグイ伴奏も捨てがたい魅力があるのです。

しかし結果的に「品格」が滲み出る演奏になってしまうところが、本物という事でしょうか。

さて、このアルバムはミュージカル楽曲のジャズバージョンという企画で、それほど有名な曲はありませんが、実際に聴いてみると、なかなかの佳曲ばかりの演目が魅力満点♪

録音は1963年10月19日、メンバーはハンク・ジョーンズ(p)、ケニー・バレル(g)、ミルト・ヒントン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という豪腕の名手ばかり! 特にエルビン・ジョーンズは当時、ジョン・コルトレーン(ts) のカルテットでビシバシに敲きまくっていた頃ですから、ここでの参加は特に気になるところです――

A-1 Here's Love
A-2 My Wish
A-3 You Don't Know
A-4 Dear Mister Santa Claus
A-5 That Man Over There
B-1 Arm In Arm
B-2 The Big Clown Balloons
B-3 Love, Come Take Me Again
B-4 Pine Cones And Holly Berries
B-5 My State, My Kansas, My Home

結論から言えば、とてもセンスの良い演奏ばかりです。演目のメロディラインも素敵なフックがある隠れ名曲が多く、またリズムパターンも様々あって、飽きません。

というか、このアルバムが鳴っているだけで、その場が和みます♪

愛らしいメロディが強いビートでイキイキと演奏される冒頭の「Here's Love」で、気分はウキウキ♪ もちろんハンク・ジョーンズは温か味あるスイング感で歌心も存分に披露すれば、ケニー・バレルは都会的な黒っぽさで迫ります。またエルビン・ジョーンズのポリリズムドラミングを支えるミルト・ヒントンの安定感も抜群ですねぇ。

まあ、ほとんどがこのパターンの演奏ばっかりで、エルビン・ジョーンズがステック&ブラシで熱演するほどに、他のメンバーのソフトな艶っぽさが強調されるという仕掛けです。

甘い「My Wish」や「You Don't Know」での雰囲気の良さ、ゴスペル調の「Pine Cones And Holly Berries」、楽しいメロディにファンキー色をつけた「That Man Over There」と「Arm In Arm」、エルビン・ジョーンズの重いビートが最高のボサロック「Love, Come Take Me Again」等々、たまりません。

とにかく短い演奏ばかりなんですが、充分に満足させられる密度の濃さは保証付きです。アレンジも最高に秀逸ですよ♪

ちなみに我国では1970年代に廉価盤が出ていましたが、当時の私は演目に馴染みが無かったので、買いませんでした。ところがかなり後になってジャズ喫茶で聴いて仰天! あまりのセンスの良さ、演奏の素晴らしさに愕然として中古屋の標的にしていた1枚です。

現在では紙ジャケット仕様のCDも発売され、今は仕事場でもそれを愛聴しておりますが、いや、実に良い雰囲気にひたれるのでした♪

個人的には棺桶盤♪

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トランペットの狂騒

2008-02-07 17:23:38 | Jazz

南方から来た外人のお客さんが、初めて雪を見て大喜び! それは良いですけど、仕事の話をしているときに、窓の外ばっかり見るのは止めろ!

と、やや現状についていけない私ではありますが、こんなアルバム聴いて憂さ晴らしです――

Tuor De Force / Roy Eldridge, Dizzy Gillespie & Harry Edison (Verve)

ジャズの醍醐味のひとつ、アドリブ合戦を最も効果的にレコード製作へ活かしていたのが、ヴァーヴというレーベルでしょう。

これはプロデューサーのノーマン・グランツが常に大物ジャズメンを起用する方針からして、至極当然な結果ではありますが、特にこのアルバムは徹底しています。なにしろ3人の有名ジャズトランペッターをガチンコで勝負させているのですからっ!

録音は1955年11月2日、メンバーはロイ・エルドリッジ(tp)、ハリー・エディソン(tp)、ディジー・ガレスピー(tp)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds) という、超強力な面々です。

ロイ・エルドリッジはルイ・アームストロングの手法を拡大してスイングスタイルに用いた第一人者であり、様々な楽団では常にスタアとして活躍していた名手です。

またハリー・エディソンはカウント・ベイシー楽団のスタアプレイヤーであり、その甘い音色と分かり易いフレーズ、メロディを大切にした演奏は、“Sweets”のニックネームに集約されています。

そしてディジー・ガレスピーはモダンジャズを創成した偉人のひとりとして説明不要かと思いますが、火の出るような突進スタイルに加えてバラードでの繊細な表現力も聞き逃せないスタイリストだと思います――

A-1 Steeplechase
 オスカー・ピーターソンの転がるようなイントロに導かれて始る狂騒の名演は、3人のトランペッターがアドリブソロの応酬に徹するという、LP片面全部を使った物凄さです。
 それはロイ・エルドリッジ、ディジー・ガレスピー、ハリー・エディソンの順番でソロを回すのですが、一回りする毎にコーラスを少なくして、最後には4小節単位にまで切詰められていきますから、たまりません。
 白熱的なビートを送り続けるリズム隊のスイング感も素晴らしいですから、フロントの3人は一瞬たりとも気を抜けず、もちろん対抗意識がモロ出しという熱気と意地のぶつかり合いが見事というか……。
 いや、実は疲れます……。
 ですから私は、リズム隊中心に聴いていてちょうど良いと感じています。実際、強烈なアップテンポでありながら、オスカー・ピーターソンやハーブ・エリスの伴奏の上手さ、さらにレイ・ブラウンの安定感、バディ・リッチの神業ブラシに驚嘆させられるのでした。

B-1 Tour De Force
 アルバムタイトル曲はディジー・ガレスピーの書いたもので、「はなれ業」の意味なんですが、むしろここではリラックスした雰囲気が横溢しています。A面が狂騒でしたから、ミディアムテンポのホノボノとした合奏が、実に良いムードなんですねぇ。
 アドリブパートの先発はハリー・エディソン、続いてロイ・エルドリッジ、ディジー・ガレスピーが登場して十八番のフレーズ展開を満喫させてくれますが、もちろんクライマックスは4小節交換のアドリブ合戦です。
 またここでもリズム隊が最高にグルーヴィ♪ 野太いレイ・ブラウンにメリハリの効いたバディ・リッチのドラミング、飛び跳ねるようなオスカー・ピーターソンのバッキングとハーブ・エリスの合の手ギター! これだけでゴキゲンなんですねぇ~~♪
 肝心のトランペッターでは、けっこう泥臭いロイ・エルドリッジが良い味出しまくり! シンプルな歌心に撤するハリー・エディソンも好ましく、ディジー・ガレスピーは得意の駆け足スタイルやハイノートの乱れ打ちも厭味がありません。
 
B-2 Ballad Medley
     I'm Thru With Love / Roy Eldridge
     The Nearness Of You / Dizzy Gilspie
     Moonlight In Vermont / Roy Eldridge
     Summertime / Dizzy Gilspie

 ヴァーヴというか、ノーマン・グランツの専売特許的なバーラドメドレーは、やっぱり魅力があります。
 まずロイ・エルドリッジがシンミリと男気を歌い上げる「I'm Thru With Love」でグッと惹き込まれ、次いでディジー・ガレスピーが「The Nearness Of You」を硬派に演じるという上手い構成が光ります。
 さらにロイ・エルドジッジが再び登場して「Moonlight In Vermont」、締め括りにはディジー・ガレスピーの「Summertime」というパートは、ちょいと短いのが勿体無いほど雰囲気が良いです。
 そして個人的にはハリー・エディソンが登場しないのも……。

ということで、けっこう体力が必要なる鑑賞かもしれませんが、ジャズの醍醐味はガッチリ楽しめます。

録音もなかなかに迫力があり、特にリズム隊は各楽器の分離がしっかりしているのに団子状のグルーヴが太くて気持ち良いです。惜しむらくはモノラル録音ということでしょうか。こういうバトル物はステレオミックスで、左右と真ん中からトランペットが鳴っていたら、これはとんでもないアドリブ地獄盤になっていたかもしれませんね。

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用意はいいか!?

2008-02-06 17:31:12 | Jazz

昨夜から仕事と野暮用にかきまわされて、全く落ち着けない日常が続いています。

こんな日には、豪快に炸裂する、こんなアルバムを――

Ready For Freddie / Freddie Hubbard (Blue Note)

常に時代の先端というか、ジャズ界をリードする作品を作り続けたブルーノートの姿勢を端的に表した1枚が、これです。

リーダーのフレディ・ハバードは当時、若干23歳にして新進気鋭のトランペッターとして上昇期にあり、ハードバップからモード、フリーやジャズロックまでも完璧に順応する圧倒的な演奏力が、ここに結実しています。

録音は1961年8月21日、メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、バーナード・マッキニー(euphonium)、マッコイ・タイナー(p)、アート・デイビス(b)、エルビン・ジョーンズ(ds) という猛者ばかり! 実際、リアルタイムではフレディ&ショーターがジャズメッセンジャーズであり、リズム隊はコルトレーン・カルテットからの出張ということで、バリバリの若手精鋭陣が揃ってしまったというわけです――

A-1 Arietis
 溌剌としてグルーヴィなフレディ・ハバードのオリジナル♪ まず力強いリズム隊が最高で、さらにモードを上手く使いながらもメロディアスなテーマ、そして何よりも明朗闊達なフレディ・ハバードのトランペットがリードする演奏全体の勢いにシビレます。
 もちろんアドリブパートでもスピード感満点に吹きまくるフレディ・ハバードは、それでいて印象的なフレーズを完全にコントロールされたトーンで聞かせてくれるのです。
 またウェイン・ショーターも摩訶不思議なモード節! ジョン・コルトレーンとは明らかに異なった次元から繰り出されるアドリブは、クールで熱いですし、バーナード・マッキニーが吹くユーフォニュームは、トロンボーンよりも柔らかい音がして、味わい深いところです。
 そしてリズム隊の物凄さ! 大ハッスルのマッコイ・タイナー、野太いウォーキングのアート・デイビス、ヘヴィなエルビン・ジョーンズという、これがモダンジャズ最前線の演奏なのでした。

A-2 Weaver Of Dreams
 安らぎのメロディが魅力の歌物スタンダード曲で、最初にちょっとしたホーンアンサンブルが付いていますが、それ以降はフレディ・ハバードが一人舞台で大らかな歌心を披露しています。
 スローテンポながらも力強いビートを出してくるリズム隊ゆえに、フレディ・ハバードは甘えることを許されず、アドリブパートからはテンポアップして溌剌と吹きまくり♪ エルビン・ジョーンズの厳しいブラシも最高ですねぇ~♪
 さらにマッコイ・タイナーの饒舌なピアノに絡むアート・デイビスのベースも秀逸で、全くリズム隊だけ聴いていても満足の演奏だと思います。
 と言いつつも、ラストテーマから大団円のフレディ・ハバードが、一層、素晴らしい輝きを放つのでした。

A-3 Marie Antoinette
 ウェイン・ショーターが書いた強力なモード曲で、グイノリのリズム隊に煽られたテーマ合奏からウキウキさせられます。執拗に絡んでくるマッコイ・タイナーが印象的ですねっ♪
 そしてアドリブ先発のウェイン・ショーターが大爆発! 典型的な“異次元ショーター節”に熱くさせられます。もちろんフレディ・ハバードも負けじと吹きまくれば、バーナード・マッキニーも意味不明なフレーズを羅列しながら大健闘! ビシバシに怒ったようなエルビン・ジョーンズも良い味を出しまくりです。
 演奏はこの後、マッコイ・タイナーからアート・デイビスのベースに受け渡されますが、このパートも強烈! 特にアート・デイビスは演奏全体をがっしりと支え、しかも我侭に自己主張しまくっています。

B-1 Birdlike
 フレディ・ハバードが後々まで十八番にしていたオリジナル曲で、タイトルどおり、ビバップの新主流派的な展開が楽しめます。それはアップテンポの豪快な演奏であり、若さ溢れるストレートな勢いにはグッと惹きつけられます♪
 あぁ、これぞジャズ喫茶の音というか、烈しくツッコミながら燃え上がるフレディ・ハバード、強靭なアート・デイビスに激情のポリリズムを敲きまくるエルビン・ジョーンズというだけで、その場には熱狂の渦がっ!
 そして、さらに凄いのがウェイン・ショーターです! 直線的でありながら紆余曲折という変態テナーサックスの真髄を聞かせてくれるんですねぇ。もちろん熱いジャズ魂が発散されていきますから、エルビン・ジョーンズも怒りのドラミングで対抗です♪ う~ん、最高ですっ!
 続くバーナード・マッキニーも待ちきれずにアドリブに入ってしまうほどのハッスルぶりですし、背後から恐いほどに襲い掛かるリズム隊! 特にマッコイ・タイナーが俺に任せろのアドリブに入る心意気ですから、どうにも止まらないです。

B-2 Crisis
 これもフレディ・ハバードのオリジナルで、ちょっとラテンリズムを使ったエキゾチックな名曲♪ ジャズメッセンジャーズの演目としても御馴染みですが、これが初演でしょうか?
 ちなみにフレディ・ハバードがジャズメッセンジャーズに入ってから初の公式スタジオ録音は、このセッションの約1月後で、それは「モザイク(Blue Note)」というアルバムに纏められましたが、ここですでに、その手のサウンドが出来上がっていたのは、ウェイン・ショーターの参加ゆえの事かと思います。
 で、ここでも雰囲気満点の演奏は“お約束”で、ラテンビートからポリリズムを駆使して奮闘するエルビン・ジョーンズが素晴らしく、痛快に吹きまくるフレディ・ハバード、独自の美学に拘るウェイン・ショーター、ユルユルのバーナード・マッキニー、さらにモードに耽溺するマッコイ・タイナーという、完全なる擬似メッセンジャーズ状態が好ましいです。

ということで、過激でありながら、なかなか聞き易さもある名盤だと思います。所謂3管編成という、当時の流行も取り入れながら、しかし頑固な部分もあり、常に節操が無いと言われ続けているフレディ・ハバードにあっては、なかなか硬派な仕上がりです。

これも大音響なればこその魅力盤なんですが、ヘッドホーンでも充分に楽しめると思います。

いゃ~ぁ、スカッとしますねぇ♪

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最高級のBluesology

2008-02-05 17:53:19 | Jazz

世間を騒がせている「毒入り餃子」事件の影響で、仕事場に入っている弁当屋のメニューが変わってしまいました。う~ん、随分と使われていたんですねぇ。大好きだったポークピカタが消えてしまった……。

ということで、本日は昨日の続きのような――

The Oscar Peterson Trio At The Concertgebouw (Verve)

昨日掲載した「ゲッツ&J.J.」のライブ盤が話題に出ると、必ず付随して問題視されるのが、このアルバムです。

アルバムタイトルとデザイン、そしてジャケットに記載のサブタイトル「Recorded In Amsterdam, Holland」からして、オランダでのライブ盤と思いきや、実は前述した「ゲッツ&J.J.」のステレオ盤と同じ日の演奏が収められています。つまり録音は1957年9月28日、シカゴのオペラハウスでのライブセッションで、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b) というレギュラートリオ♪ もちろんJATPの巡業からライブレコーディングされたものです。ただし、こちらはモノラル盤しか無いようです――

A-1 The Lady Is A Tramp
 本来は小粋な味わいのスタンダード曲なんですが、ここでのトリオは一丸となって猛烈にドライブする演奏に仕立てています。う~ん、このスピード感!
 もちろんオスカー・ピーターソンは驚異的な指の動きで歌心に満ちたフレーズを連ねていきますが、爆発的なリズムギターを聞かせているハーブ・エリスはアドリブソロでも乱れず、さらに根底を支えるレイ・ブラウンも凄いですねぇ~。間然することのない演奏だと思います。
 しかしそれゆえに和めないのが私です……。まるっきりサーカス演奏のようで、緊張感ばかりが先に……。オスカー・ピーターソンの呻き声までが、些か虚しく聞こえてくるのですが……。

A-2 We'll Be Together Again
 という気分を察してくれたのか、続いてはリラックスした歌物バラードの世界が繰り広げられますが、これも、なんか虚しい雰囲気です……。
 というのは、多分、出来すぎなんだと思いますねぇ。とても贅沢な言い訳なんですが……。

A-3 Bluesology
 と戯言をホザいていたら、この演奏で目が覚めました。
 タイトルどおり、ブルース魂に満ちたテーマから自然体のアドリブに入っていくトリオの素晴らしさ! 観客も拍手歓声です。
 あぁ、オスカー・ピーターソンのブルースって、ウネリが凄いがゆえに黒さも百倍というか、クールで熱い部分と泥臭い雰囲気のバランスが最高で、この演奏あたりは、それが存分に味わえると思います。
 ハーブ・エリスもギターのボディをボンゴのように叩いてリズムのアクセントを作り出し、時折入れるオカズのカッコ良さは絶品ですし、アドリブソロも基本に忠実なブルースリック、またカントリー系のフレーズを混ぜながら、本当に、たまらない世界です♪
 またレイ・ブラウンが粘っこいウォーキング、さらにシブイ雰囲気のベースソロと縁の下の力持ちとなって、演奏はドロドロに煮詰められ、豪快なグルーヴを発散させていくのでした。
 3者の絡みは圧巻ですよっ!
 
A-4 Budo
 バド・パウエル(p) のオリジナル曲ですから、ビバップ色が強いテーマメロディながら、このトリオならではのアレンジと演奏力で、一気に最後まで持っていく展開がっ!
 特にハーブ・エリスの早弾きと嫌らしいチョーキングは、いやはやなんとも……。オスカー・ピーターソンも指が動いて止まらない感じですし、ガンガンと過激な世界に入っていくトリオは凄いはずなのですが……。

B-1 I've Got The World On A String
 あまり有名ではないスタンダード曲ですが、このオスカー・ピーターンソはリラックスした歌心の真髄を聞かせてくれますし、トリオの纏まりも最高だと思います。
 それはミディアムテンポのグルーヴィな味わい、上手すぎるテーマメロディの変奏から千変万化のアドリブ地獄が素晴らし過ぎるんですねぇ♪ ハーブ・エリスの小粋なスイング感に満ちたギター、安定感抜群のレイ・ブラウンという、このトリオの真髄が楽しめると思います。

B-2 Daahoud
 ギターとピアノの緻密な絡みから浮き出すテーマメロディは、おぉ、クリフォード・ブラウンが十八番としていたハードバップ曲! ですから、ちょいとエキゾチックな雰囲気にクラシック風のアレンジがありながら、アドリブパートはストレート勝負で、まずはハーブ・エリスがカントリー系のリックを多用した凄いギターソロを聞かせてくれます。
 もちろんオスカー・ピーターソンは絶好調の豪快ピアノ! グイノリで早いフレーズを、これでもかと出しまくりですから、客席からも大拍手♪

B-3 When Lights Are Low
 これもジャズの世界では裂けて通れぬ有名曲だけにオスカー・ピーターソン以下、トリオの面々は緻密なアレンジと歌心、スイング感の追及に没頭しています。
 それはリラックスしたテンポ、洒落た雰囲気と遊び心が満載で、ステージと客席が一体となった和みの空間が現出しています。

B-4 Evrve
 オーラスはオスカー・ピーターソンが書いたオリジナルが烈しいテンポで演奏されていきますから、たぶんバンドテーマだったのかもしれません。とにかく豪快無比なピアノ、最高に上手いサイドギターの味わい、4ビートの真髄を聞かせるベースという名人芸なのでした。

ということで、相等に凄い演奏ばかりなのですが、個人的にはイマイチ和めない作品です。極言すれば「Bluesology」1曲あれば良いという感じなんですねぇ……。

う~ん、何故だろう……。

とにかく「Bluesology」だけは聴いていただきたく、お願い申し上げます。

それにしても録音データに拘らないあたりが、いかにもヴァーヴというアルバムでもありました。ちなみにこれはモノラル盤しかないんでしょうか? こうなると気になっています。

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名盤は名盤!

2008-02-04 17:37:38 | Jazz

東京も昨日の大雪、本日の冷え込みで道路が凍結し、事故が多発でしたね。まあ、冬用の備えが日頃は必要ないところから、仕方がないとは言いながら……。

被害にあわれた皆様には、お見舞いもうしあげます。

ということで、本日は――

Stan Getz & J.J.Johnson At The Opera House (Verve)

言わずと知れたモダンジャズの大名盤ですし、モノラルとステレオの両盤において、そのミックス以外にも録音年月日が異なるという事でも有名な傑作です。

結論から言うと、演奏そのものは甲乙つけがたいのですが、1曲だけ収録トラックが多いモノラル盤の方が個人的には好きです。

録音は1957年10月7日、もしくは10月25日のライブセッションで、タイトルは「オペラハウス」になっていますが、実際のステージはロスのシュライン・オーディトリアムが正しいとされています。

ちなみにステレオ盤は1957年9月29日のステージで、こちらこそがシカゴのオペラハウスでの録音なのですが、メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、J.J.ジョンソン(tb)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、コニー・ケイ(ds) というオールスタアズなのは、両盤とも同じです――

A-1 Billie's Bounce
 チャーリー・パーカーが書いたモダンジャズの聖典というブルースで、まずは物凄いドライブ感に満ちたオスカー・ピーターソンのイントロから豪快なテーマ合奏だけで、完全に虜になってしまいます。
 そしてスタン・ゲッツが独特の浮遊感でアドリブに入っていけば、狂ったようにスイングしまくるリズム隊に煽られつつも、逆に引っぱる大快演! 豪快かつ繊細なフレーズ、流れてウネルという唯我独尊の世界には眩暈がするほどの歓喜悶絶です。
 また対する J.J.ジョンソンは何時もの冷静さを脱ぎ捨てたような暴れっぷりで、端正なフレーズに激しさが加わって、当に火の出るようなアドリブでありながら、決して破綻していない素晴らしさです。
 さらにクライマックスではスタン・ゲッツ対 J.J.ジョンソンの絡んで悶絶の白黒ショウという仕掛けがっ!!! 本当に最高ですねぇ♪
 このあたりはステレオ盤でも同様の展開なんですが、モノラルバージョンの方がテンポが幾分速いので、なおさらに痛快なのでした。

A-2 My Funny Valentine
 有名なスタンダード曲がミディアムテンポで演奏されますが、テーマ部分からテナーサックスとトロンボーンが執拗に絡み合いながらメロディを奏でていくという仕掛けが、最高にキマッています♪ おそらくこれはヘッドアレンジなんでしょうが、流石は名手ばかりのバンドですから、感銘して絶句でしょうねぇ。
 もちろんアドリブパートでも先発のスタン・ゲッツがクールで熱い歌心を発揮すれば、J.J.ジョンソンは悠々自適のスライドワークでスケールの大きな和みの世界を構築していきます。
 ちなみにステレオバージョンでは、このソロの順番が逆になっていますが、ラストテーマ部分の絡み進行は同じですし、アドリブの良さも甲乙つけがたい味わいがあります。

B-1 Carzy Rhythm
 タイトルどおり、熱狂的にスイングするスタンダード曲の演奏なので、こういう対決ライブにはジャストミート! 烈しく攻め込む J.J.ジョンソンに対して流麗な歌心で勝負するスタン・ゲッツというスリルがたまりません♪
 早いテンポでも決して乱れないリズム隊の強烈なグルーヴも素晴らしいと思います。
 ちなみにステレオバージョンのミックスは左にピアノ、ベース、ギター、右にドラムス、テナーサックス、トロンボーンという“泣き別れ”が基本なのですが、このトラックに関してはテナーサックスが時折左寄りになったり、またベースが真ん中へ行ったり、シンバルとバスドラが左右に広がったりするのが顕著なので、ステレオ盤がけっこう面白く聴けるかもしれません。
 もちろん演奏の出来そのものは、全く差異がありませんが♪

B-2 Yesterdays
 J.J.ジョンソンをフィーチュアしたスタンダード曲の演奏で、ミディアムテンポのリラックスした好演になっています。
 そしてこれはモノラル盤にだけ入っているんですねぇ~。それゆえに一層、モノラル盤の人気が高かったわけですが、現在ではCDアルバムで復活していますので、一安心でしょう。
 実際、短いながら、素晴らしい出来栄えなんですねぇ♪
 さらにラストテーマの最後には、ホーンアンサンブルが付いているのを確認出来るというお楽しみがあります。これは多分、このステージがノーマン・グランツ主催によるJATPでのバラードメドレーの一部だった可能性を示唆していると思いますが……。

B-3 It Never Entered My Mind
 今度はスタン・ゲッツの一人舞台というバラード演奏で、これまた素晴らしい♪ スカスカのサブトーン、力強い解釈、深遠な歌心と天才性が溢れ出た名演だと思います。
 ちなみにモノラルとステレオの両バージョンにおいても、基本が同じという出来栄えですから、ほとんど完成された世界だったことが分かろうというものです。う~ん、最高!

B-4 Blues In The Closet
 アルバムの締め括りはアップテンポのブルース大会ですから、これぞハードバップの熱気が充満して爆発した豪快な演奏です。
 時期的には名盤「ブルートロンボーン(Columbia)」を吹き込んでいたJ.J.ジョンソンが怖ろしいばかりのアドリブを披露すれば、スタン・ゲッツは流麗にドライブする狂熱のクールスタイルで対抗しています。
 もちろん両者のアドリブソロの背後からは、お互いの楽器とリズム隊が烈しく絡んでツッコミを入れてきますから、クライマックスの丁々発止は“お約束”なんですが、ステレオ盤の方が、若干ですが出来が良いと感じています。それはステレオ盤だと、スタン・ゲッツ対 J.J.ジョンソンの絡みが明瞭に聞き取れるからで、まあ、これは十人十色の好き嫌いでしょう。

ということで掲載ジャケットはモノラル盤です。ステレオ盤とはデザインが異なっていますが、個人的には、こっちが好きなので♪

まあ、それはそれとして、やっぱり名盤は最高♪ と聴く度に熱くさせられるのでした。欲を言えばリズム隊の各人に全くアドリブソロの出番が無いことですが、やはりフロントの2大スタアを主役にすれば当然と納得しています。

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ドーハムとマクリーン、初顔合わせ!?

2008-02-03 18:44:37 | Jazz

いろいろとあって、何度も無駄足を踏まされるってことは、ありがちとはいえ、やっぱり疲れが残ります。

ということで、本日は荒っぽい新感覚ハードバップを――

Inta Somethin' / Kenny Dorham & Jackie McLean (Pacific Jazz)

ケニー・ドーハムとジャッキー・マクリーンはハードバップの人気者ですから、この2人がレギュラーバンドを組んでのライブとなれば、熱い演奏は“お約束”でしょう。

このアルバムはサンフランシスコでの旗揚げ公演と言われるもので、録音は1961年11月、ジャズワークショップというクラブでのセッションです。メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ウォルター・ビショップ(p)、ルロイ・ヴィネガー(b)、アート・テイラー(ds) という、非常に魅力的な面々――

A-1 Us
 ケニー・ドーハムのオリジナルで、後にブルーノートへ吹き込んで大ヒットする「Una Mas」の原型演奏です。もちろん、あの魅惑のリズムパターンは出来上がっていますが、ここでのリズム隊が作り出すビートは、まだまだジャズにどっぷりという有様です。
 しかしそれが非常にハードエッジな感覚で熱いグルーヴを発散させていますから、メロディのフェイクで山場を作るケニー・ドーハム、逆に攻撃的なジャッキー・マクリーンという可逆的なアドリブパートが冴えまくり♪ もちろんファンキーなウォルター・ビシップのピアノはリズム的な興奮も煽る名演ですし、アート・テイラーのヘヴィなドラミングも凄いと思います。
 そして、冷静なバッキングに撤するルロイ・ヴィネガーの存在感が、バンドに確かな纏まりをもたらしているのでした。

A-2 It Could Happen To You
 ケニー・ドーハムが主役となるスタンダード曲の味わい深い演奏ですが、ゴリゴリのリズム隊ゆえに甘さに流れていません。
 もちろんケニー・ドーハムは歌心優先主義を崩していませんが、西海岸派の名手たるルロイ・ヴィネガーのベースワークが、一連の東海岸ハードバップとは似て非なるノリだからでしょうか、アート・テイラーもゴスペル風のドラミングになっていますし、ウォルター・ビシップもハードなタッチで実に素晴らしいと思います。
 本当にリズム隊を中心に聴いてしまう演奏です。

A-3 Let's Face The Music
 今度はジャッキー・マクリーンのワンホーン体制による熱血演奏です。しかも曲が人気盤「スイング・スワング・スインギン(Blue Note)」で、ウォルター・ビシップとアート・テイラーを伴って演じていた十八番ですからねぇ~♪ 情熱の“泣き節”が、魅惑のテーマメロディと合致した、心底グッとくるハードバップになっています。
 あぁ、このスピード感があって野太いグルーヴの凄さ! 荒っぽくて、なおかつ的確なサポートを聞かせるリズム隊があってこそ、ジャッキー・マクリーンも大暴れできるというもんです♪
 もちろんウォルター・ビシップも快演ですし、アート・テイラーはビシバシにギンギンですから、これぞライブの迫力でしょうねぇ。

B-1 No Two People
 あまり有名でないスタンダード曲ですが、ケニー・ドーハムがミュートで演じるテーマメロディは、なかなか愛らしいです。
 そしてここでもリズム隊が一筋縄ではいきませんから、アドリブの主役となるジャッキー・マクリーンが緊張した雰囲気……。しかし演奏が進むうちに、それが良い方向に作用していくんですねぇ。非常に斬新な感覚が楽しめると思います。
 またウォルター・ビシップが如何にも「らしい」名演を聞かせてくれるでした。 

B-2 Lover Man
 チャーリー・パーカー(as) の歴史的問題録音で有名になっている歌物曲ですから、ジャッキー・マクリーンも気合が入っているのでしょうか、ちょいと力んだ雰囲気が感じられます。
 テンションの高いリズムアレンジも面白く、“情緒”よりは“新感覚”が表出した演奏かもしれません。ただしジャッキー・マクリーンが特有の熱いアドリブ、青春の情熱にような“泣き節”は健在ですし、新生ハードバップのような、元祖・新主流派という趣が最高だと思います。

B-3 San Francisco Beat
 オーラスは再びケニー・ドーハムのオリジナル曲で、明るく楽しいモダンジャズの典型が楽しめます。
 まずテーマからアドリブに入っていくケニー・ドーハムとリズム隊のやりとりが痛快ですし、快調なアート・テイラーがゴキゲンですねぇ♪ ウォルター・ビシップの合の手伴奏も冴えています。
 そしてジャッキー・マクリーンがC調寸前のオトボケから、グングンと熱くなっていくアドリブパートは、まさにジャズを聴く喜びそのものでしょう。バックから襲い掛かっていく強烈なリズム隊も最高ですし、絡みながらカウンターのメロディをぶっつけていくケニー・ドーハム!

ということで、ジャケットはケニー・ドーハムなんですが、中身はジャッキー・マクリーンが大活躍! それとリズム隊の物凄いノリが徹底的に楽しめます。なにしろアート・テイラーのビシバシ感が強烈ですし、野太いルロイ・ヴィネガーと力強いタッチのウォルター・ビシップの相性もバッチリでしょう。全体的な荒っぽさが逆に魅力でもあります。

大音量で聴けば聞くほど、ブッ飛びますよ。

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真髄! ハードバップトリオ

2008-02-02 17:54:21 | Jazz

母が入院中なので見舞いに行ってみると、いきなり「病院の食事が不味い」なんて言われてしまいましたねぇ。

まあ、内蔵の病気ではないので、そうなるんでしょうが、昼食をちょっと食べてみたら、確かに不味かったです。

ということで、本日は――

Kenny Drew Trio (Riverside)

1980年代に人気絶大なピアニストとなったケニー・ドリューは本来、1950年代からハードバッパーとして頭角を現していたのですが、私の世代では1970年代前半にジャズ喫茶を賑わせた一連の欧州録音で、その存在を知ったのではないでしょうか。

その溌剌としたスタイルは当時、電化物に犯されていたジャズ喫茶にとっては救世主的な存在として、もてはやされたのです。

そしてそこから遡って辿り着くのが、リバーサイドやブルーノートに残されていた1950年代のレコーディング作品でした。

中でもこのアルバムは、優れた共演者を得た純正トリオ物として、名盤扱いにされていたものです。

録音は1956年9月20&26日、メンバーはケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) ですから文句無し!

A-1 Caravan
 デューク・エリントン楽団というよりも、我国ではエレキインストのザ・ベンチャーズによって広く親しまれている曲でしょう。そしてそのラテンロックっぽいグルーヴが、ここではどうなっているのか!? それがこの演奏の命題というのは大袈裟でしょうか。
 で、ここでの演奏は超アップテンポ! テーマ部分ではフィリー・ジョーのラテンビートも冴えまくり、エキゾチックな味わいもあって、ケニー・ドリューのイキイキとしたピアノが飛跳ねます。もちろんアドリブパートでもトリオが一丸となった高速4ビートですから、たまりません。
 ただし、このテンポでは些か無理があるというか、ケニー・ドリューの持ち味がイマイチ、発揮されていないような雰囲気も漂いますが、ラストテーマ部分のアレンジと各人の見せ場のハッスルぶりは流石のスリルが満点! 

A-2 Come Rain Or Come Shine
 ケニー・ドリューが十八番のスタンダード曲で、ミディアムテンポのグルーヴィな味わいと軽妙なノリが上手くミックスされた快演♪ ポール・チェンバースの堅実な助演とシャープなフィリー・ジョーのドラミングが実に良い雰囲気です。
 ケニー・ドリューは明快な歌心とファンキーな味付けのバランスにも気をくばっているようで、このあたりはソニー・クラークと通じる良さがあるんですねぇ。思わず腰が浮いて、指パッチンの世界です♪
 さらにポール・チェンバースも素晴らしいと思います。

A-3 Ruby, My Dear
 セロニアス・モンクの有名なオリジナルで、スローで演奏される深遠なメロディからは、なかなか格調高い響きが堪能出来ます。
 ここでは、まずケニー・ドリューがクラシックからの影響も感じさせるソロピアノでテーマを奏し、煮詰まったところでグゥ~ンとビートが強いベース&ドラムスが入ってくるという、本当に上手い仕掛けがニクイです。いやはや、この部分だけ聴くために、この演奏があるという感じでしょうか。
 それでもアドリブパートでは、ケニー・ドリューが持ち味の黒っぽいフィーリングも入れながら演奏を纏めていくのですが、やや中途半端な雰囲気も……。

A-4 Weird-O
 一転して溌剌としたハードバップで、とにかく徹頭徹尾、このトリオの躍動的な演奏が楽しめます。あぁ、こういうノリこそが、一連の欧州録音へダイレクトに繋がっているものでしょう。
 グイノリ4ビートに拘って唯我独尊のポール・チェンバースはアルコ弾きも過激ですし、フィリー・ジョーは全篇で十八番の“フィリー・ビート”を敲きまくりで、特にテーマ部分のラテン調、さらにピアノとのソロチェンジが最高の輝きなのでした。

B-1 Taking A Chance On Love
 これもフィリー・ジョーのドラミングが冴えきった躍動的な演奏で、もちろんケニー・ドリューは歯切れの良いタッチとファンキーなフィーリング、鮮烈な歌心を完全披露しています。
 あぁ、思わずウキウキしてきますねぇ~~~♪
 このあたりのグルーヴは後年の欧州録音物とは似て非なるものでしょう。なんというか腹の底から湧き上がっていたというか、分厚い黒っぽさがたまりませんから、何度聴いても飽きませんねっ♪

B-2 When You Wish Upon A Star / 星に願いを
 1980年代になってもケニー・ドリューが十八番にしていた名曲ですが、ここでの演奏には、後年の思わせぶりというか、クサミがありません。むしろ不器用な感じで魅惑のメロディを独りでシンミリと弾いています。
 そして定石どおり、途中からドラムス&ベースが入り、そこからはポール・チェンバースの巧みな絡みもありますから、演奏はジワジワと熟成していくのでした。

B-3 Blues For Nica
 ケニー・ドリューが書いたブルースで、粘っこい演奏がたまりません。とにかくケニー・ドリューの持ち味が全開! ファンキーなフレーズと力強いタッチ、さらに真っ黒なフィーリング! これぞハードバップです。
 グッと重心の低いポール・チェンバースのベースワーク、ハイハットとスネアのコンビネーションで最高のビートを敲き出すフィリー・ジョーも素晴らしく、まさにこのアルバムのハイライトの1曲でしょう。

B-4 It's Only A Paper Moon
 オーラスは軽快で楽しいスタンダード曲のハードバップ的な展開が用意されています。独特のクッション&テンションで飛び跳ねるようにピアノを鳴らすケニー・ドリューの真骨頂が楽しめるのです。もちろん、あの横流れするような波乗りフレーズや粘っこいファンキー節も駆使しながら、どこまでも止まらない演奏は快感ですねぇ~~♪
 それは決して聴き易いということばかりでなく、ガッツとジャズ魂が渾然一体になったところが、モダンジャズ全盛期の勢いという感じです。ポール・チェンバースのベースソロ、そのバックで味わい深いケニー・ドリュー、そしてビシバシにキメまくりのフィリー・ジョーというピアノトリオの醍醐味が楽しめるのでした。

ということで、個人的にはB面を聴くことが多いです。

ちなみにこのトリオはウマが合うというか、ジョン・コルトレーンの名盤「ブルートレイン(Blue Note)」やジョニー・グリフィンの「ウェイ・アウト!(Riverside)」等々をガッチリ支えたリズムセクションとしての働きも歴史に残るところです。かなり3人とも自己主張しているようで、実は協調性も高いあたりが、実力の証明かもしれません。

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こんな日はワルツ♪

2008-02-01 18:24:02 | Jazz

あぁ、メッチャクチャに忙しかったです、朝っから!

だいたいトラブルの電話報告で起こされる事態が、ねぇ……。

ということで、本日は――

Jazz In 3/4 Time Featuring Max Roach (EmArcy)

アルバム全篇、ワルツタイムでハードバップを演じた、1950年代では画期的な作品です。

主役のマックス・ローチは抜群のドラミングでモダンジャズを創成した偉人のひとりで、4ビートはもちろんのこと、逸早くポリリズム感覚を叩いていたのですから、こういう企画もムベなるかな!

ちなみにジャズの世界ではデイヴ・ブルーベック(p) も変拍子演奏をウリにしていますが、ワルツタイムを使い出したのは、このアルバム録音時の1957年と同じ頃でしたし、もっと過激な5拍子とか7拍子をやりだしたのは、1959年頃です。

もちろんモダンジャズ以前にワルツタイムでスイングしていた演奏は、ほとんど無いと私は思っていますから、このアルバムの自然で豪快なグルーヴは驚異的であると同時に、当時のバンドレギュラー達の素晴らしいアドリブも堪能出来る名盤になっています。

録音は1956年9月と1957年3月に行われており、メンバーはマックス・ローチ(ds) 以下、ケニー・ドーハム(tp)、ソニー・ロリンズ(ts)、レイ・ブライアント(p)、ジョージ・モロウ(b) という黄金のクインテット! しかし3月のセッションになるとピアニストがビル・ウォレス(p) に交代しています――

A-1 Blues Waltz (1957年3月18日録音)
 タイトルどおり、ハードバップのブルースをワルツタイムで演じていますが、豪快なノリは最高です。
 もちろんアドリブパートでも違和感が無いのは、マックス・ローチの正確無比なドラミングがあればこそ! ビル・ウォレスは些か緊張気味ですが、続くケニー・ドーハムはリラックスした快演ですし、ソニー・ロリンズは独自のタイム感覚も冴えた豪快さを披露しています。
 そしてマックス・ローチのドラムソロが3拍子をキープしたままに暴れまくり、ヤバイほどにキマッています。

A-2 Valse Hot (1957年3月20日録音)
 ソニー・ロリンズの有名なオリジナル曲で、既にクリフォード・ブラウンと共に1956年3月録音の名演(Prestige)が残されていますが、テンポアップしたこのバージョンも凄すぎます。
 まずソニー・ロリンズのアドリブが強烈至極! マックス・ローチのドラミングも完全なポリリズムになっていますから、ほとんど両者の対決がメインという感じです。
 しかしケニー・ドーハムも負けていません。歌心優先の温か味のあるスタイルで、この優雅な名曲を彩るのです。また必死でピアノをスイングさせようと奮闘するビル・ウォレスも印象的ですねぇ。途中で道に迷った感もありますが、ちょいとニヤリの場面です。
 そしてベースソロに続いてのクライマックスはマックス・ローチの恐いドラミングが引っぱるソロチェンジ! ドーハム&ロリンズとのハンディキャップマッチとなりますが、思わず熱くなるドラムソロ!
 15分近い演奏ですが、全くダレていません。

B-1 I'll Take Romance (1957年3月18日録音)
 緊張感が強かったA面から一転、B面は和みサイドとでも申しましょうか、まずはリラックスしたスタンダード曲が、もちろんワルツタイムで演じられます。
 シンミリとしたピアノのイントロから楽しいテーマ演奏は、なかなか凝ったアレンジですし、力強いグルーヴが表出していて、ここだけで満足してしまいますが、ケニー・ドーハムがアドリブに入ると、ますます素晴らしい世界が繰り広げられるのです。う~ん、歌心満載♪
 そしてソニー・ロリンズが、これまた最高! こんな自在なアドリブが出来るなんて絶句……。まさに天才の証が楽しめます。
 またオクターブ奏法でバラバラになりそうなビル・ウォレスのハッスルぶりも、なんか微笑ましいですねぇ。
 
B-2 Little Folks (1957年3月20日録音)
 マックス・ローチのオリジナルで、それほど冴えた曲ではありませんが、ドーハム&ロリンズのアドリブは原曲を越えた“アドリブの面白さ”を強調しています。
 全体に沈み込んでいくようなワルツビートが重く、う~ん……。

B-3 Lover (1957年3月21日録音)
 モダンジャズでは御馴染みのスタンダード曲で、テーマ部分からウネリまくるソニー・ロリンズが強い印象を残します。もちろんアドリブパートも豪快ならば、バックで煽るマックス・ローチのドラミングはワルツビートのポリリズム的解釈で素晴らしいですねぇ~~♪
 またケニー・ドーハムも既に新主流派っぽいアドリブになっていますし、ビル・ウォレスは、またまたオクターブのバラバラ弾きでテクニックを披露しているつもりなんでしょうが、??? マックス・ローチの度量の大きさゆえに、ちょっとフリーな演奏を聴いている錯覚に陥ります。
 ちなみに、この演奏は編集バージョンで、完全版はステレオバージョンとして後に発表されていますが、ここではドラムソロとアンサンブルの一部がカットされただけというのが、真相です。

B-4 The Most Beautiful Girl In The World (1956年9月19日録音)
 ソニー・ロリンズが十八番にしているこの曲だけ、レイ・ブライアントがピアノを弾いている所為でしょうか、なかなかリラックスした味わい深い仕上がりです。とにかくソニー・ロリンズが素晴らしい♪
 そしてケニー・ドーハムのトランペットも微妙な“泣き”が入っている感じです。もちろんレイ・ブライアントの艶っぽいピアノも絶品♪ ジャズの良さを再認識させられてしまいます。

ということで、マックス・ローチのドラミングの素晴らしさはもちろんのこと、全盛期ソニー・ロリンズを存分に楽しめる1枚でもあります。

基本はモノラルバージョンだと思いますが、完全版はステレオバージョンというところから、CD再発では前述した「Lover」が両バージョン入っているようです。

ただし個人的には、このアルバムのステレオミックスは隙間がありすぎて迫力不足を感じています。まあ十人十色の感性でしょうが、ハードバップの名盤に違いはありません。

欲を言えば、レイ・ブライアントが全面的に参加していれば……。

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