Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

シュヴァルの理想宮 vs 二笑亭

2019-05-03 09:52:25 | 新音律
理想宮の図は http://destroyedlolo.info/galerie/France/RhoneAlpes/Hauterives/ による.二笑亭の方は式場隆三郎、藤森照信、赤瀬川原平、式場隆成、岸武臣「二笑亭綺譚 五〇年目の再訪記」求龍堂 (1989) による.この図には谷口吉郎 (東宮御所、帝国劇場を設計した建築家) が寄与している.

昨日のつづき
式場竜三郎は1939年に「フランスにある狂郵便配達夫 (シュヴァル) が庭に建てたものにくらべて,この制作の方がはるかに大規模でもあり,複雑でもある」と書いているが,隆三郎自身はシュヴァルの理想宮を見たことはないと思う.

建坪は理想宮の方がやや広いが,田園地帯に存在する.二笑亭が存在したのは東京下町の商店街であった.
理想宮はモニュメントのようなものだったが,二笑亭は実際に住むことを目的に建てられた.
また,理想宮はシュヴァルが独力で築いたのに対し,二笑亭は施主が大工・職人に作らせたという違いがある.
理想宮は33年をかけて完成した.二笑亭は着工後約十年で施主が脳病院に入院させられた.完成したのかどうかはわからない.この十年で施主の精神病は徐々にしかし着実に進行し,それとともに経済状態も悪化した.これは建築にも暗い大きな影を落としている.

理想宮は,ルソーの素朴派絵画が評価されているように,素朴派建築物として評価されている.いっぽうの二笑亭は不遇だった.
式場龍三郎が見出したのは二笑亭と,素朴派の貼り絵画家・山下清だが,二笑亭には素朴派と,それより鋭角的な美意識が共存している.しかしそれらには一貫性がない.
オリジナルの「二笑亭奇譚」には建築家・谷口吉郎の文章がある.彼はそこでグロテスクなエネルギーに圧倒されると同時に,嫌悪感・拒否感を示している.

理想郷は Youtube で見ることができる.二笑亭はどうだろうと検索したら,音楽作品に遭遇した.


坂野 嘉彦作曲「 二笑亭構築 II マリンバとピアノのための」

作曲者の言葉より
*****彼 (施主・渡辺金蔵) は、何かしら守るべき規律に基づきあの家をつくり上げたようなのだ。それは美意識であったりなにかの強迫観念であったり、さまざまな要因が蓄積されたものだったのだろう。
この個人にしかわからない規律を守り、作品を構築してゆく様はまるで作曲家が作品をつくり上げてゆく作業に酷似している。
そして私も自分で二笑亭のような作品を作ってみたいと思ったのだ。

2007年片岡祐介氏 (マリンバ奏者) の委嘱により作曲、2009年Atelier Arpege Editionより出版。*****
コメント
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