Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

野呂邦暢ミステリ集成

2020-11-16 08:55:44 | 読書
中公文庫(2020/10).

Amazon の紹介*****
長崎県諫早市を拠点に執筆活動を続けた芥川賞作家・野呂邦暢。端正な文体で読者を魅了した多彩な作品群の中からミステリ作品を初集成。早すぎる晩年の五年間に発表された「失踪者」「もうひとつの絵」「ある殺人」など中短篇八編と随筆八編を年代順に収録する。文庫オリジナル。 〈解説〉堀江敏幸
*****

1937-1980.1974 に芥川賞.
11/14 の朝日新聞読書欄の「文庫この新刊!」で紹介されていた.堀部篤史氏の紹介から抜粋すると*****...著者は,犯人を推理することにも,機械仕掛けのトリックにも無関心だ.人間がよく描けていることが面白さの肝だと看破するノロ龍モステリは今なお色褪せず新鮮だ*****.

一番長い「失踪者」では,主人公はヘビやカエルを食って生き延びる.著者の自衛隊体験が生かされているのだそうだ.人間がよく描けているかどうかは別として,おもしろい.
犯人当てもトリックもないから,どれもミステリというジャンルのエンタメとはほど遠い.なかでは「ある殺人」がいちばんミステリ的.
読んで気分がよくなる小説群ではないが,怖いもの見たさ的に,どんどん読みたくなる.

ミステリについて語った随筆に共感.「南京豆なんか要らない」は,平野謙がこたつにもぐって南京豆をかじりながらミステリを読むことを無上の快楽としたことに当てこすったタイトル.ここにミステリを初期の100-300番台の早川ポケットミステリの,表紙が具象画だったと書いてあった.ぼくの記憶では函入りで売られていて,函は捨ててくださいと書いてあったように思う.黒死館殺人事件やドグラ・マグラもポケミスで読んだ気がする.
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