Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「雪月花 : 謎解き私小説」

2022-02-06 09:36:20 | 読書
北村 薫,新潮社 (2020/8).

*****本と本とが響き合い奏でる音を愛でる日々。読書愛あふれる初の私小説。解決のない疑問は、解毒剤のない毒薬のようなものだ――どうして! なぜ? と謎は深まる。江戸川乱歩、三島由紀夫、芥川龍之介、山田風太郎、福永武彦……小説、俳句、詩歌に音楽、小沢昭一の随筆も登場。本を読んではスパークする作家魂。読み手もまた創作者、本読む愉しみを分かち合い、時空をめぐる、日常の冒険。*****

サブタイトルの「謎解き」とは本にまつわる謎のこと.「私小説」とあるが,登場人物は著者と新潮社のスタッフたち.エッセイというほうが適している.新潮社の PR 誌「波」連載だったそうで,宜なるかな.看板に偽りあり.実態は著者の蘊蓄の垂れ流し.しかし,蘊蓄を蓄積する苦労がしのばれるし,こういう話題が嫌いでもないので,つらつらと通読した.

「謎解き」の「謎」が登場するまでが長い.この傾向は,著者の円紫さんシリーズからずっと,である.この本では岡山の万歩書店が複数回登場する.違う噺で同じマクラを聞かされるみたい.岡山は隣の県だからコロナが治ったら行ってみようかという気になったから,ま.いいか.「魚正」という鮨屋にも行ってみようか...と思ったら,ウェブによれば閉店したとのこと.

目次
*****よむ,つき,ゆめ,ゆき,ことば,はな*****

「ゆき」の謎は
  雪の日やあれも人の子樽拾い
という句の詠み手について.この句は三遊亭金馬の落語で,一時は誰でも知っていたということだが,ぼくは知らなかった.

「ことば」で謎とされる「何ひと」については知っていた.この本では楠山正雄訳のイプセン「人形の家」で
 「給料が手に入るまでにはまる三月も間があるのだ」
 「何ひと,それまで借りておけばいいわ」
という文脈で現れ,ごたいそうな謎のように扱われる.著者が辿り着いたのは,「何よ,人を馬鹿にして」という,軽い否定をあらわした東京方言という解だが,それなら親戚のおばさんが使っていた.

図書館で借用した.
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