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枝久保 達也 「戦時下の地下鉄」

2021-04-14 08:52:17 | 読書
副題「新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団」青弓社 (2021/2).図書館で借用.

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地下鉄新橋駅には使われない幻のホームがある――やむなく作られた仮設駅とも語られるこのホームは、戦前の地下鉄建設をリードした東京地下鉄道と東京高速鉄道の地下鉄構想が衝突した結果、生み出された時代の徒花であった。日に日に戦時色が強まっていったこの時代、両社の対立は戦時体制に取り込まれていく。

新橋駅を巡る両社の対立を紐解きながら、幻のホームという「神話」が誕生したプロセスを解き明かす。そして、両社の抗争が遠因となって設立された帝都高速度交通営団の実態を掘り起こし、交通営団と戦争の関係を防空・輸送・避難などの視点から描き出す。

地下鉄博物館や国立公文書館の史料を丹念に渉猟し、これまでミッシングリンクのように欠落していた戦前の地下鉄史と戦後の地下鉄史を接続する。1934年から49年の地下鉄空白の15年を埋めて、戦時下の地下鉄の実像を浮き彫りにする労作。
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残っている幼少時の記憶は,宮益坂につっこんでいく地下鉄車両の横からのイメージである.周りに何もなかったので遠くからよく見えた.そのせいか東京の地下鉄には思い入れがある.新橋駅の幻のホームは,最近もときどき話題になる.昭和20年代・都心の地下鉄の改札口周辺は,怪しげな飲食店が並んだラビリンスであった.

今で言う銀座線はまず東京地下鉄道による新橋・浅草間が開通し,そこへ後から東京高速鉄道が渋谷・新橋間の接続を図ることで,2社の対立が生じる.東京高速鉄道の実質的なボスは五島慶太で,「強盗慶太」の悪名は16トンきこどもの時から聞いていた.強盗に煮湯を飲まされるのは,「地下鉄の父」早川徳次である.2者の対立に多数のページを割いているが,こう言う抗争は好きではないためか,少々退屈だった.丁寧に引用された文献も,文語体もあって読みづらい.

むしろ戦時の諸事情,例えば本来全ての車両がモーターがついた電動車であるべきところ,部品がなくなってモーターなしの「付随車」を編成に組み込んだこと,そのため赤坂見附から青山一丁目へ勾配がラッシュ時には登り切れず,いったん戻って勢いをつけて登り切る必要があったと言うような逸話が身に沁みる.地下鉄のトンネルの防空壕化は,地上から浅すぎて概してうまくいかなかったようだ.東京大空襲に先立つ,1月の銀座空襲や,その後の山手空襲も怖い.
東京大空襲ばかりが有名だが,東京は波状的に数回の空襲にさらされ,ほとんど焼け野原になった.それでも地下鉄も省線も日ならずして復旧するのだが,電源はどのように確保されたのか,知りたいところ.

東京では地下鉄も省線も死語になってしまったのかな.

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