Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ふたたび「大佛次郎敗戦日記」

2021-08-14 08:54:35 | 読書
7/31の続き.
日記は1944(昭和19)年9月から1945(昭和20)年10月まで.月ごとに,その月の出来事が1ページにまとめられて区切りとなっている.突然始まって,終戦前後は記述が長いが9月に入ると短くなり,突然終わる.

福島行一の解題に沿って,内容を分類すれば,
1) 時局的な生活の推移.
2) 読書内容.
3) 作品の執筆.
4) 時局的発言.

いち市民としては 1) に興味がある.もっぱら敵機が何時に何機上空を通過という記録.実際に被害を被ったわけではないが,1945年3月には明治座地下室に避難して人体が消し炭のようになったとか,外傷はなかったが爆風で内臓が破裂して死んだとかいう話が多い.空襲下でも鉄道・郵便は健闘していたようだ.それにひきかえ令和のJRの気軽に「運転庫合わせ」ることよ.
砂糖がないから蜂蜜で代用するなど,今では贅沢に思える.ビールは潤沢で1945年8月17,18,19日にも飲んでいる.この時代の人はタバコがないと生きられなかったらしい.

2) 外国文学,特にトルストイなどのロシア文学を愛読.蔵書の疎開に腐心.この時期,市民も読書に飢えていたようで,1945年5月には鎌倉文士たち (久米正雄・川端康成・高見順・里見弴・中山義秀・小島政二郎・永井龍男など)で貸本屋を始める.

3) この時期でも執筆依頼が絶えない.後藤又兵衛を主人公とする「乞食大将」をどう終わらせるか,苦心している.子ども向きに楠正成も連載している.好戦厭戦を超越した作風は戦後も受けいれられたらしい.1945年8月には東久邇宮内閣の参与,会食は増えたが何をしたのかはよくわからない.

4) 政治的消息には通じていたようだが,どの程度正確かはわからない.敵機は雲の上を飛んでいるのに気象関連が軍事機密なんて馬鹿馬鹿しいと言っている.誰も読まないことが前提らしく,軍人役人への罵詈雑言がいい感じ.「見よ東条の禿頭..」という愛国行進曲の替え歌が再三登場.

トップ画像のビラは1月30日にキャプションなしで挿入されていた. 


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