塩見 鮮一郎 編集「被差別文学全集」河出文庫 (2016/8) 中の,落語「野晒し」について.
サゲまで演じられることはまれで,多くは途中で噺を終えるのだそうだ.
ストーリーは Wikipedia にあるが,八五郎が川辺でみつけた骨 (こつ) を妙齢の女性のものと妄想して回向し,その骨主が幽霊となって訪ねてくることを期待する.しかし訪ねてきたのは,八五郎の独り言を盗み聞きした幇間の新潮だった,というわけで,
八「お前は何だい?」
幇「シンチョウという幇間(タイコ)でげす」
八「なに太鼓? ああ、しまったそれじゃ馬の骨だった」
この小三治のは半分以上がマクラ,というより漫談なので,急いで確かめたい方は最後の1分を.
浅草新町には,かつて多くの太鼓屋が立ち並んでいたという.太鼓には馬の皮を張った.新町はシンマチと読むのがふつうで,これをシンチョウと読むのはこの一角だけだそうだ.
江戸時代は獣皮を商売とする一族は差別の対象とされた.この噺が「被差別文学全集」に収録された所以である.
「全集」に収録されたのは,昭和初期の 6 代目春風亭柳枝の口述である.シンチョウ・太鼓・馬の骨と聞いて笑うことができたのは,当時でも東京下町の住人だけだっただろう.落語には,かなりローカルな一面があるのだな.
追記
三遊亭円輔がこの噺のマクラで,あらかじめオチの説明をしていた,
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