Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

佐村河内守こと新垣隆とドビュッシー

2014-04-10 08:31:48 | 新音律


ワイドショーでは小保方さんが佐村河内氏と交代しているが...

珍しく,佐村河内守こと新垣隆氏の音楽を正面から取り上げた文章.
「どこまでがドビュッシー(17)」青柳いずみこ.定価はあるが,書店で只で貰える雑誌,岩波書店の「図書」2014 年 4 月号の48ページ.

佐村河内名義の作品を演奏したり賞賛したりした音楽家・批評家はほとんど著者・青柳さんのお友達らしい.これらの作品群自体は,「オリジナリティには欠けるものの.弾き手が感情移入しやすいメロディと琴線にふれるハーモニーに満ちており,素直に観客の心に届く」とおっしゃる.
青柳さんが新垣氏本来の作風はどんなものかと,YouTubeで「インヴェンション または倒置法III」「Suburb」を視聴されたとのこと.根本にあるのは,聴衆を陶酔させておいてわざとそれをぶちこわす「天の邪鬼」精神.まるで不条理劇のような展開に,客席からは笑い声がもれる.新垣氏は,佐村河内名義では聴衆を泣かせ,本人名義では人を笑わせる,すごい二重人格ぶり,という評価だ.

嫌いではないが,照れくさい音楽のためには,新垣氏にとって「佐村河内」はちょうどいい隠れ蓑だったということ?
本職 ? の上記2曲は 16 トンも視聴したが,途中で飽きてしまった.でもライブなら違うかも.演奏する方が面白そうだが,どうせなら自分のアイデアでやるほうが良い.

青柳さんの文章らしく,タイトルどおりに,最後はドビュッシーが登場.彼もまたジキルとハイドのような分裂した性格で知られたのだそうだ.死後原稿が発見されたオペラ「ロドリーグとシメーヌ」は,リリカルで感動的.中でもロドリーグとシメーヌによる二重唱はワーグナーのトリスタンとイゾルデのそれにも劣らない濃厚なロマンティシズムを湛えている...とのことである.
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マーチ博士の四人の息子

2014-04-08 08:22:08 | 読書


ブリジット オベール, 堀 茂樹 ・ 藤本 優子 訳 ハヤカワ文庫HM (1997/07)

「BOOK」データベースより*****
医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。*****

書店でこの本に惹かれた理由.

1)ここでしか買えません,有隣堂限定復刊.
2)アゴタ・クリストフ絶賛
3)カバーデザイン


1)有隣堂はもともとは横浜の書店だが,関東地方でチェーンを展開している.この本は学会で出張した際に発見.
2)アゴタ・クリストフは,ベストセラー「悪道日記」(1986, 翻訳は1991)の著者.
3)カバーは和田誠.帯も同じ色を使ったところが,上手い.


小説では,殺人者の日記と,ジニーの日記が交互に現れる.ふたりの訳者がいるが,殺人者のぶんを堀さん,ジニーのを藤本さんが担当し,後で調整したとのこと.
ちなみに「マーチ博士の四人の娘」は,若草物語のヒロインたちのことだそうだが,中身は「あのすこぶる教育的な児童文学 (解説における表現)」とは全くかけ離れたもの.
著者はフランス人女性だが,舞台はアメリカ.聞き覚えがある地名も出てきた.

最後の 8 ページの「エピローグ」でやっと種明かし.くれぐれも,ここを最初に読んではいけない.
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他者に聴かれることを意図しない音楽とその可能性

2014-04-06 08:30:26 | 新音律
科学者・研究者向けのソーシャル・ネットワーク・ サービスがいくつかある.Research Gate にはヒトに勧められて入った.やたらとメールが来て煩わしい.しかしひとたび自著論文リストを作ると,おせっかいを焼いてくれるので,知らないうちに忘れていたものまで網羅されている.就職活動のときには利用できそうだ...いまさら就職はご免だけど.

Academia.edu もやはりソーシャル・ネットワーク・ サービスだが,ことらにはあまり関心がなかった.ところが舞い込んだメールに,広大准教授 Daisuke Terauchi 氏が論文をアップロードしたとあったので,アクセスした.

寺内 大輔
「他者に聴かれることを意図しない音楽とその可能性 - 寺内大輔の 3 作品による例証と考察 -」
音楽表現学 6(2008)29

がその論文で,もとは音楽表現学会の論文誌に掲載されたもの.

著者によれば,「他者に聴かれることを意図しない音楽」が作品となるためには

① 題名と作者がはっきりしており,作者自身が「作品」としての意識・意図を持っていること
② インストラクション(instruction=指示)などのテキストや初演記録,または口承などによる伝承によって,具体的な音楽実践の方法を他者に伝えることが可能であること

のふたつの条件を満たさなければならない.最初の例は著者による「耳の音楽」で,耳を触った時の音で成立する音楽である.耳殻を閉じ上から指で軽く叩けば,ベースドラムのような迫力ある音が,また耳の辺りを優しくこすればシャーという連続音がする.
ちょっとやってみると面白い.
演奏会場で行えば,演奏中はほとんど周囲からの音が遮断されてしまう.演奏終了直後には周囲の静けさがより新鮮に感じられる.また,共通な演奏を聴くわけではないのに,演奏体験を体験を共有できる.

もうひとつの作品例が,見るからにアヤシイこのビデオ「くちづけ口琴」.しかし,論文にはまじめくさった説明が.しかし,論文百読は一見に如かず.そして,百見は一演に如かず,であろう.



最後の作品例「内と外」は,ちょっと難しそう.
どなたでも Academia.edu からこの論文をダウンロードできるが,FaceBook のアカウントあるいは e-mail アドレス等を求められる.
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麻布中学 昨年のドラえもん問題

2014-04-04 08:30:12 | 科学


物理学会で,人生最後となるはずの,シンポジウムの司会をした.この学会のために東横インに3泊した.

インの客室に「たのやく」という広報誌?が置いてあった.さまざまな雑誌・書籍の“転載記事”により構成された雑誌とのこと.四月号の特集は「こどものイロイロ」.そこに麻布中学の入試問題が取り上げられていた (帰ってからネットで調べたら,今年のではなく去年の問題だった.知らなかった.ちょっとがっかり).

問題は,*****
99年後に誕生する予定のネコ型ロボット「ドラえもん」。
この「ドラえもん」が優れた技術で作られていても、生物として認められることはありません。
それはなぜですか。理由を答えなさい。
(2013年 麻布中学校入試問題 理科)*****

こりゃ面白い,と思ったのだが,じつはこの問 7 にはずっと前の方,問 1 の前の前文にヒントが隠されている.
「地球上の「生物」に共通する特徴として,以下の3つがあげられている.1)自分と外界とを区別する境目をもつ; 2)自身が成長したり,子をつくったりする; 3)エネルギーをたくわえたり、使ったりするしくみをもっている」
がその文章.こちらで問題の全容がわかる. 2) を写して,成長したり子をつくったりしないからと,答案用紙に書けば良い.

国語の問題ならこれでよかろう.しかし理科の問題だったら,ヒントなしに受験生に思うところを書かせて,その解答 (多分 奇答珍答) から理科的センスを判断するべきなんじゃないの.
これは,おとなの言うことを理解できるか? おとなの言うことをきけるか? を合否基準にする問題だ.麻布中学は,いや,ほとんどの日本の学校はそういう生徒を求めているんだろうけど.
先生の採点が楽なことも理解できるけど.

ただし,もちろん「たのやく」では良問 ! というニュアンスで紹介されていた.
コメント (2)
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右翼と左翼はどうちがう?

2014-04-02 07:45:08 | 読書
雨宮 処凛,河出文庫 (2014/03).

「BOOK」データベースより*****
右翼と左翼。命懸けで闘い、求めているのはどちらも平和な社会。なのに、ぶつかり合うのはなぜか?テロ、革命の歴史や、天皇制、戦争についての認識のちがいなど、両方の活動を経験した著者ならではの視点で噛み砕く!原発、領土問題、ヘイトスピーチなど近年起こった社会問題について書き下ろした「終章」を新たに収録。*****

真面目な本.
Wiki によれば,著者は*****
あまみや かりん、女性、1975年1月27日 - は、作家・社会運動家。かつて「ミニスカ右翼」と形容された元右翼活動家だったが、その後は「ゴスロリ作家」を自称する左派系論者に転向。筆名の由来は、ギタリスト琴桃川凛から。*****
読了後ウェブを見て初めて著者が女性と知った次第.

最初に出版されたのは 7 年前で,シリーズ本「14歳の世渡り術」の一冊.小生レベルにはちょうど良かった.記述には両翼を体験したヒトならではの説得力がある.右翼・左翼の活動家それぞれ3名ずつへのインタビューのページ数が多い.天皇制と靖国を除けば,右翼の言うことも理解できるというのが小生の感想.しかし,この部分は著者が両翼から手近なお友達を相手に選んだ印象もある.

左翼 = インテリ,右翼 = 体育系はその通りと思う.ボク的には右翼 = 体制側という印象が強かったが,それはこの本を読んだ後でも変わらない.しかし親米右翼と反米右翼があったりして,ややこしい.
現在の逼塞した状況で「国内にいながら国際的な最低賃金競争の最底辺」にいる人たちは,左翼を味方とは考えない.かっては「米帝」が敵だったが,日本全体が韓国のテクノと中国の労働力に押され,今では中韓が「敵」になっているのだそうだ.
昔は君が代も靖国も右翼の得意とする主張だったのが,全部実現されてしまった.これには (一部の) 右翼自身も驚いているらしい.靖国参拝への米中韓の反感をバネに国民の愛国心らしきものをあおるあたり,政治家のやり方は上手い.現内閣こそ右翼の優等生か?! 
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