【社説①】:海洋プラの削減 小さな一歩を育てたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:海洋プラの削減 小さな一歩を育てたい
20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合が、海のプラスチックごみ(廃プラ)対策で初の国際的な枠組みの構築に合意した。
各国が自主的に取り組みを進めるとともに、検証のため、定期的な情報共有の仕組みをつくる。
共同声明に「海洋流出の抑制へ速やかに取り組む」との文言が盛り込まれたことは前進だ。
一方、数値目標は見送られ、削減への道筋も示さなかった。合意を優先した結果だが、このままでは実効性が疑われる。
議長国として、共同声明を足がかりに、さらに一歩踏み込むよう働きかける責務がある。
日本は1人当たりの排出量、輸出量で世界第2位だ。各国に対策を呼びかけるには、国内の取り組みも加速しなければならない。
不十分な回収や保管で海に流れ出た廃プラは、紫外線などで砕けて生態系に影響を与える。
流出量は少なくとも年間800万トンに上り、その半分近くを排出するG20の合意は意義がある。
この間、欧州を中心に各地で使い捨てプラ製品の使用を制限する動きが広がった。一方、新興国などでは利用増も見込まれる。
新たな枠組みを、まずは利害の異なる国や地域が広く参加できるものにしたのはやむを得まい。
重要なのは、これを出発点に削減を確実に進めることだ。各国が数値目標を掲げ、達成状況を確認し合う仕組みが欠かせない。
そのためには、途上国も基礎的なデータの収集やリサイクル体制の整備を進める必要がある。日本が貢献できる分野だろう。
海洋プラごみの流出実態を解明し、流出を防ぐことは重要だが、使い捨てプラ製品の使用や製造の抑制も避けては通れない。
日本の廃プラ処理は焼却中心で温暖化防止の観点から問題だ。年間約100万トンを輸出してきた「使い捨て大国」でもある。
政治主導で取り組む各国に比べ対応が大幅に遅れている。
ルワンダは2008年にレジ袋の製造、輸入、使用を禁止した。カナダは21年にも、プラ包装の商品を扱う企業などに、再利用の責任を負わせる方針だ。
日本もG20を前に、使い捨てプラ容器の排出量を30年までに25%減らすなどの「プラスチック資源循環戦略」をまとめたが、実現に向けた行動計画が求められる。
政府はレジ袋を早期に有料化する考えだ。廃プラのごく一部にすぎないとしても、消費者の意識を変える契機にする必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年06月19日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。