【社説①】:元挺身隊訴訟 文氏は在任中の解決を図れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:元挺身隊訴訟 文氏は在任中の解決を図れ
韓国の不当な司法判断によって日本企業が実害を被る事態が、また一歩近づいたと言える。日韓関係のさらなる混迷を回避するため、韓国政府は打開策を急ぐべきだ。
韓国の地裁が、三菱重工業の資産の売却命令を出した。日本の植民地時代に朝鮮半島から動員された元労働者らによる「元徴用工」関連訴訟で、日本企業の資産売却が命じられたのは初めてだ。
韓国最高裁が三菱重工業に元女子勤労 挺身 隊員らへの賠償を命じた2018年の判決以来、原告側は資産の差し押さえと、売却による現金化手続きを進めてきた。
商標権2件と特許権6件からなる韓国内の資産7500万円相当がすでに差し押さえられている。三菱重工業は即時抗告する方針で現金化にはまだ時間がかかるとはいえ、元徴用工問題が重大な局面に入りつつあるのは確かだ。
政府が韓国に抗議したのは当然だ。茂木外相は「現金化は日韓両国にとって深刻な状況を招く」と強調した。日本企業に具体的な影響が及べば、対抗措置をとることを警告したのだろう。
日本製鉄を巡る訴訟でも、韓国最高裁は元徴用工への賠償を命じ、原告側は資産の売却命令を裁判所に求めている。
このほかにも、元徴用工らが日本企業を相手取った訴訟を相次いで起こすなど、最高裁判決を巡る混乱は収拾のめどがつかない。
そもそも、最高裁判決には重大な問題がある。日韓間の請求権問題の「完全かつ最終的な解決」を定めた1965年の請求権・経済協力協定に反する決定で、両国関係の法的基盤を損なった。
元徴用工らの主張を優先する「被害者中心主義」を唱え、司法の反日的な風潮を 煽 った文在寅大統領の責任は大きい。協定を土台に、日韓が経済協力や多角的な交流を積み重ねてきた歴史を軽視していたのではないか。
文氏は今年になってようやく、現金化は「日韓関係に望ましくない」との見解を表明し、関係改善への意欲を示した。
しかし、いまだに具体的な解決策は提示していない。元徴用工への補償が必要だと考えるならば、韓国政府が行うのが筋である。日本企業に損害が及ばないようにする解決策を、文政権が立案し、実行するしかあるまい。
文氏の残り任期は約7か月だ。日韓関係の重荷となる負の遺産を次期政権に残してはならない。退任まで、収拾に向けて最善を尽くしてもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年10月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。