路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【天風録・01.03】:岩国のシロヘビ

2025-01-04 07:00:35 | 【神道・伊勢神宮を本宗・神社本庁、明治神宮他全国約8万社の神社、敬神生活の...

【天風録・01.03】:岩国のシロヘビ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・01.03】:岩国のシロヘビ

 巳(み)年に最もふさわしい場所に行こうと元日に車を走らせた。向かったのは岩国の白蛇神社。商売繁盛・開運の御利益があるとされるためか、小学校の校庭に設けられた臨時駐車場はほぼいっぱい。九州や関東ナンバーも見かけた

 ▲株式市場の格言「辰(たつ)巳天井」によると、辰年と巳年は株高になりやすいそうだ。実際、辰年の昨年は大納会で年末の史上最高値を35年ぶりに更新。今年はさらに…と期待する人が多いのか、縁起物を買う列も長かった

 ▲景気の先行きが確かだと感じられないからだろう。賃金は上がったが、恩恵は物価高が奪い去った。国の税収は最高を更新し続けるものの、私たちの手取りがいつ増えるかは見通せない

 ▲自分や家族を考えても地域社会や国を見ても、いま望まれるのは経済の再生だろう。脱皮することから蛇は「復活や再生」を表すという。そんな巳年らしい一年に、2025年はなるだろうか。 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2025年01月03日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・01.04】:熟議の政治へ 国会の古い慣行を見直せ

2025-01-04 06:05:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説・01.04】:熟議の政治へ 国会の古い慣行を見直せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.04】:熟議の政治へ 国会の古い慣行を見直せ 

 衆院が少数与党となり、野党の賛同を得ないと予算案や法案が通らない。与野党が合意点を見いだすまで議論を重ねる「熟議」を定着させる年にしたい。

 越年した「政治とカネ」の問題は、これ以上決着を先送りしてはならない。

 2025年度予算案を巡る与野党の攻防は様変わりするだろう。見据えるのは夏の参院選だ。石破茂首相にとっては政権の存立に関わる正念場となる。

 ■最大の決戦は参院選

 自民党派閥の裏金事件に端を発した政治資金問題は、先の臨時国会で政策活動費を廃止するなど一定の成果が見られた。

 少数与党の現実は重い。野党案に反対していた自民党も最後は折れるしかなかった。

 今月下旬に始まる通常国会でも引き続き重要なテーマとなる。焦点は企業・団体献金だ。禁止を求める立憲民主党などの野党と、存続を訴える自民との溝は深い。

 与野党は3月末までに結論を出すことに合意している。過去の事件や疑惑を見れば、全ての企業・団体献金が浄財だとは言えない。政治をゆがませる可能性がある以上、禁止すべきだ。

 政治資金の収入が減れば、政治活動ができないと主張する議員がいる。この際、政治にはカネがかかるのか、必要以上にかけているのかを国民に明らかにして、政治資金の在り方を根本から見直してはどうか。

 政治資金の集め方、支出の範囲を規定し、それらの実績は全て公開する。国民がチェックできる仕組みを整えたい。

 一連の改革を通じて、長年の課題である「カネをかけない政治」が実現すれば、国民の政治を見る目も変わるはずだ。

 裏金事件の解明も急ぎたい。旧安倍派の幹部や会計責任者らを参考人招致し、さらに証人喚問で、意思決定の過程や裏金の目的などを明らかにする必要がある。

 政治資金問題が長期化すれば、参院選への影響が大きくなる。昨年の衆院選のように結果を大きく左右する要因になり得る。

 立民などの野党は政権交代へ弾みをつけたいところだ。改選1人区で候補者を調整し、与党との一騎打ちに持ち込めるかが勝敗の鍵となる。

 与党は参院で過半数を維持することが最低限の目標だ。

 石破首相は昨年暮れ、内閣不信任決議案が可決された場合、衆院解散に踏み切る可能性に言及し、早くもけん制している。

 ■通年会期制の検討を

 当初予算案を採決する日程が視野に入る2月後半から、与野党の駆け引きは熱を帯びそうだ。

 与党と野党が個別に交渉し、野党の政策実現と引き換えに、予算案への賛成を取り付ける可能性がある。これを繰り返していては、真の予算案審議にならない。

 野党は予算案の内容を精査し、修正の必要性と賛否を判断する。与党は野党の修正案が妥当なら、柔軟に取り入れる。財源にも責任を持たなくてはならない。与野党共に、政策決定過程が国民に見える国会運営に努めてほしい。

 立民は通常国会に選択的夫婦別姓制度の法案を提出する構えだ。大半の野党は導入に前向きなのに対し、自民は党内に強硬に反対する議員を抱える。

 首相は通常国会の大きな論点となることを見越して「党として議論の頻度を上げ、熟度を高めることに力を入れる」と述べた。その言葉通り、党や国会で徹底して話し合い、結論を出してほしい。

 議論に十分な時間をかけられるように通年国会を導入するなど、熟議の国会に見合う制度を検討してはどうか。

 通常国会は1月に開会し、会期は150日と決まっている。法案審議が始まるのは例年、予算成立後の4月からだ。会期は1度だけ延長できるが、参院選の年は大幅な延長が難しい。通年国会なら会期末を気にせずに議論できる。

 政治資金や法案審議をはじめ、国会の古い慣行を変える転機となることを望む。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説①・01.04】:震災30年 検証本紙「6つの提言」(3)「防災」を必修科目に-災害に強い人づくりの基盤

2025-01-04 06:00:50 | 【災害列島・減災と防災・防災庁・社会インフラの整備・上下水道・道路・河川

【社説①・01.04】:震災30年 検証本紙「6つの提言」(3)「防災」を必修科目に-災害に強い人づくりの基盤

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.04】:震災30年 検証本紙「6つの提言」(3)「防災」を必修科目に-災害に強い人づくりの基盤 

 ■全体の底上げへ議論の加速を

 防災教育は、自分や周りの人の命を守るための土台づくりである。神戸新聞社は、必修化によりその根を広げる重要性を訴えてきた。

 ここ数年、小中学校や高校の教科書で災害に関する記述は増えた。しかし、防災を必修科目とする動きはいまだに見えない。

 教員の世代交代が進み、子どもたちにとって阪神・淡路大震災が「歴史上の出来事」となる中、兵庫の防災教育は転換期を迎えている。

 将来の必修化を見据え、蓄積を生かしながら時代に合わせて発展させねばならない。現場では、新たな試みも始まっている。

                ◇

 神戸市北区の桜の宮中学校は、2年の防災教育に演劇を取り入れた。劇の名は「ジブンゴト」。プロの演出家の指導を受けて生徒が脚本の一部を考え、演じる。社会、国語、総合的な学習の時間を使い、1月の本番に向け練習を重ねている。

 筋書きはこうだ。ある防災イベント。生徒らが研究発表をしようとしたそのとき、大きな地震が発生し、観客と一緒に避難することに-。本番では、見ている人たちに観客役として参加してもらう。生徒には演技力や即興性が求められる。

 普段は防災を教わる側の生徒が、他者に伝える立場になることで、阪神・淡路の教訓を「自分ごと」として捉え、実践してほしい。そんな狙いを込めている。

 正確な知識の習得はもちろん不可欠だ。加えて、これからの防災教育には、児童生徒が楽しむ要素や、「自分もできた」「人の役に立てた」と自己肯定感を持てるような体験が一層求められるのだろう。現場を取材した実感でもある。

                 ◇

 2020年度から順次実施された新学習指導要領では、小、中、高校のさまざまな教科で災害や防災についての記述が従来より増えた。19年度からは、教職課程で自然災害などにおける危機管理を学ぶ「学校安全への対応」が必修となった。

 だが、文部科学省は防災教育の教科化には及び腰だ。自然科学の分野をはじめ、復旧復興の過程や心のケア、ボランティア活動など、扱う領域やテーマが多岐にわたるため、授業時間の確保や指導・評価が難しいという。

 その結果が、教員の頑張りに大きく依存する今の状況だといえる。学校や地域間の取り組みの差をどう埋めるか。全国共通の課題である。

                ◇

 現場の熱意に任せるのではなく、教える側への支援を充実させることが必要だ。複数の教科に散らばっている防災関連の内容を、体系的に教え、効果を高めてもらいたい。教科を超えた教員の連携や、地域との協働が鍵になろう。

 「『阪神・淡路を経験していない自分が地震を語れるのか』と尻込みする若い先生もいる。カリキュラムの提案や助言にとどまらず、教員の心理的なハードルを下げることも大切だ」。兵庫県内の教育関係者が20年に設立した防災教育学会の諏訪清二会長は指摘する。

 諏訪さんは、県立舞子高校に02年に開設された環境防災科の初代科長を務めた。同科からはこれまでに758人が卒業し、研究者や教員、消防士などとして活躍する。

 1期生の前田緑さんは、小学2年で阪神・淡路に遭った。大学職員として働きながら、震災の教訓などを伝える活動を続ける。3児の母でもある。「被災経験がなくても、学びを通して震災を語ることはできる。防災に取り組む次世代を応援し、暮らしに根づかせたい」と話す。

 防災教育の積み重ねが、地域の防災・減災の推進力となり得る。それには必修化による全体の底上げが望ましい。自然災害が多発する時代に入った。議論を加速させたい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・01.04】:【年初に 政治】「国民本位」の流れ加速を

2025-01-04 05:05:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【社説・01.04】:【年初に 政治】「国民本位」の流れ加速を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.04】:【年初に 政治】「国民本位」の流れ加速を

 日本の政治は大きな転換点を迎えていると言ってよい。

 昨年の衆院選で自民、公明両党が過半数割れし、石破政権は少数与党になった。2025年も与野党の手探り状態が続くとみられ、7月には政権の在り方を左右する参院選が控える。先行きは予断を許さない。
 一方、日本が直面する課題は山積し、深刻さも増している。与野党とも政局や党利を意識しないのは難しいだろうが、それが行きすぎて国政が停滞する事態を招いてはならない。立場や状況を問わず、各党が国民本位の視点、姿勢を強めていくことが求められる。
 石破茂首相は、少数与党として初めて臨んだ昨年の臨時国会は何とか乗り切った。焦点だった24年度補正予算案、政治改革法案ともに与党が野党の主張に応じる格好で成立にこぎつけた。
 与野党の議論が不十分だった面や先送りした課題もあったが、各党が案を出して一致点を探る「熟議の国会」を心掛けたのは事実だろう。与党が事前に方針を決め、限られた議論で法案を通す「自民1強」時代とは異なる国会運営の姿を示した。
 決定に手間はかかるが、より納得感の高い政策につなげられる可能性がある。言論の府として、このスタイルの熟度を高めていくべきだ。
 ただ、その形が継続するかどうかは見通せない。1月開会の通常国会は、25年度予算案の審議を軸に、政治改革協議で結論を先送りした企業団体・献金の扱い、国民民主党との間で未決着の「年収103万円の壁」見直しを含んだ税制改革関連法案などが焦点になる。いずれも合意のハードルが高いテーマだ。
 各党は、他党との間合いや世論を探りながら対応を決めていくとみられ、そこに参院選をにらんだ動きも加われば混沌(こんとん)とする可能性がある。内閣不信任案を巡って攻防があるかもしれない。石破首相は予算案が否決された場合の衆院解散の可能性にも言及している。
 情勢は流動的で、国会が進み、参院選前後になるほど不透明さは増すが、国政は近年、政治不信を招く事案を積み重ねてきた。どのような局面にあっても、国民の信頼、納得に値する行動、判断を基本とするべきだ。少なくとも不信の源になってきた「政治とカネ」問題は速やかに厳格なけじめをつけたい。
 政策決定に参加できるようになった野党の責任も格段に増した。説明責任や議論を軽視したり、党利党略が際立ちすぎたりすれば国民の支持も離れる。最大野党・立憲民主党は政権交代を訴えるのなら、政権構想をより具体的にする必要がある。
 少子高齢化と人口減少、物価高ながら賃金が伸び悩む経済、米中関係や東アジア情勢の緊張など、日本の課題は多岐にわたる。少数与党で受け身にならざるを得ない石破首相だが、国のリーダーとして主体性、カラーを打ち出し、課題解決への議論をけん引することも不可欠だ。その姿勢がなければ支持率の回復や党内基盤の強化も見込めない。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【小社会・01.04】:みそぎ

2025-01-04 05:05:45 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【小社会・01.04】:みそぎ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・01.04】:みそぎ

 1980年代から続く詩集のシリーズに「のはらうた」がある。その第4巻に印象的な作品を見つけた。2000年秋に出版されているから、翌01年が巳(み)年なのを意識したのかもしれない。

 題名は「だっぴ」、作者は「へびいちのすけ」。〈「だっぴ」すりゃ ちょっぴり おとなで ぼく しんぴん あたらしい としがはじまる きぶんだよ だから そのときゃ 「だっぴー・ニュー・イヤー」〉

 脱皮は人間にはない現象で興味深い。成長の証しでもある。なるほど、かつて年を取る節目だった新年と重ね合わせると面白い。民俗学者の吉野裕子さんによると、実際、古代日本人は蛇を信仰していたという。特に生まれ変わるかのような脱皮に引かれていたとする。

 「揚句(あげく)が神祭の中にこの真似(まね)を取り込んで、ミソギ(身殺=みそ=ぎ)としたと私は推測する」(著書「蛇」)。罪やけがれをはらうため、川や海で身を清めることを「みそぎ」というが、大本は脱皮から来ているというわけだ。

 現代はみそぎにもう一つの使われ方がある。政治家の言う「みそぎが済んだ」。不祥事や疑惑があっても、選挙などを経るとけじめがついたかのように扱う。むろん国民は納得しない。

 自民党派閥裏金事件もしかりである。昨年、選挙も国会の審査もあったが、真相は見えないまま越年。けじめはついていない。巳年を迎えた。真に生まれ変わるようなみそぎが求められる。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2025年01月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・01.03】:【年初に 経済】生活底上げし成長軌道へ

2025-01-04 05:05:40 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【社説・01.03】:【年初に 経済】生活底上げし成長軌道へ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.03】:【年初に 経済】生活底上げし成長軌道へ

 長期停滞を脱却して本格的な成長軌道に乗れるか。日本経済は重い課題を抱えて新年を迎えた。

 政府は2025年度の実質国内総生産(GDP)成長率を1・2%増と見込む。日銀も景気は緩やかに回復しているとする。とはいえ、世論調査では約8割が景気悪化の認識を示す。生活実感との隔たりはなお大きい。
 世界に目を向ければ、米国で自国主義のトランプ政権が発足する。国際情勢をにらみつつ、足元の産業基盤を強固にし、国民生活をいっそう底上げする必要がある。
 最大の課題は長引く物価高に負けない賃金の定着だ。
 24年春闘は一昨年に続き、高水準の賃上げを実現した。連合は25年の賃上げ目標を「5%以上」、中小企業については「6%以上」にする方針だ。経営側も一定の理解を示している。だが、人手不足が深刻化する中、人材確保に前向きな企業がある一方、余力に乏しい企業も多い。
 高知県内でも昨年の春闘の平均賃上げ率は3・90%と、記録が残る08年以降では最高を更新。ただ調査では、正社員の賃上げを実施した企業は過去最高だった前年から減り、賃上げの予定がない企業は増えた。
 原材料などの高騰分を価格転嫁できない企業もあり、格差は広がる。雇用の7割を占める中小企業に波及させられるかが鍵となる。
 日銀も春闘の賃上げ動向を見極める姿勢を示す。賃上げの流れが続けば、賃金と物価がともに上昇する好循環が進み、さらなる利上げへの環境が整うとされる。
 昨春、日銀は大規模な金融緩和を解除して利上げに動いた。金利のない世界は過度な円安を招き、輸入物価の上昇につながった。岸田前政権から利上げを求める声が相次ぐ中、7月には再び利上げを決めた。
 利下げに転じた欧米の金融政策とは正反対の方向に動く。金融・為替市場は不安定な値動きも予想される。影響を注視する必要がある。
 不安定要素が多い中、石破茂首相に求められるのは実効性のある取り組みだ。だが、政府が決定した経済対策は、低所得世帯向け給付金や燃料費高対策といった歴代政権の政策の復活や延長が目立つ。
 物価高に苦しむ国民の生活を支える施策は必要だ。しかし給付や補助を繰り返す発想では、政権が目指す高付加価値で成長型の経済には結び付かないのではないか。必要性や効果の精査が欠かせない。
 世界経済は大国による保護主義の拡大が進む。トランプ次期米大統領は中国やカナダ、メキシコに対して関税引き上げを表明した。日本にとって中国は最大の貿易相手国で、メキシコには日本の自動車メーカーが米国などへの輸出向けに生産拠点を構えている。日本の輸出関連企業の業績悪化も懸念される。
 一方、中国とは先の首脳会談で「戦略的互恵関係」の推進を確認した。日本産水産物の輸入停止措置など、両国間に山積する課題の解決へつなげなければならない。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【小社会・01.03】:漆器の縁

2025-01-04 05:05:35 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【小社会・01.03】:漆器の縁

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・01.03】:漆器の縁

 正月の食卓を彩るおせちは、盛り付けも腕の見せどころ。小欄の親戚宅では毎年、使う器にもこだわっている。土佐古代塗の重箱だ。

 若い世代にはなじみの薄い器かもしれない。古代塗は明治時代に作られ始めた高知特産の漆器。今は一部でしか作られていないが、明治末期から昭和の中頃まで生産が盛んで、引き出物や記念品などとして重宝された。

 よくある装飾的な漆器と違って、飾り気がなく実用的なのが特徴で、これは明治の土佐の精神風土が反映されたとか。そしてもう一つの持ち味が、独特のザラザラとした手触り。器の強度の根源ともされる。

 このザラザラ、昔は石川・輪島市から原料を仕入れていた。輪島でしか採れない珪藻(けいそう)土を焼いて砕いた粉で、使うことで耐久性や耐熱性が増す。あの輪島塗ブランドを支える素材の一つである。採取量を抑えようと40、50年前に域外不出となり、古代塗も代替品の開発に迫られたが、古い器は輪島の土が使われているとみてよい。

 能登半島地震から1年がたった。年始の報道ではさまざま人が取り上げられ、輪島塗の話もあった。復旧が苦戦する中、被災地で最も切実だったのは「能登を忘れないで」との声ではなかったか。

 親戚宅で古代塗に盛り付けたおせちを頂いた。料理より器、ではないけれど、漆器を通じた能登との縁を確かめる。被災地と遠い高知からでも、思いをはせるきっかけはいろいろとある。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2025年01月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説・01.01】:【年初に 戦後80年】教訓生かす決意を新たに

2025-01-04 05:05:30 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【社説・01.01】:【年初に 戦後80年】教訓生かす決意を新たに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.01】:【年初に 戦後80年】教訓生かす決意を新たに

 2025年が明けた。

 光の差す一年を願い、決意を新たにする一日になる。

 同時に、今年は膨大な犠牲を生んだ太平洋戦争、第2次世界大戦の終結から80年の節目となることも心に刻みたい。

 昨年末、被爆の実相を証言し、核兵器廃絶を長年訴えてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)にノーベル平和賞が授与された。受賞演説で92歳の田中熙巳(てるみ)代表委員は「10年先には直接の体験者としての証言ができるのは数人になるかもしれません」と運動の継承を訴えた。
 広島、長崎の被爆だけではない。戦争体験世代は高齢化し「生の声」を聴く機会は失われつつある。
 総務省の一昨年秋の人口推計によると、戦前生まれは総人口の1割強だった。14年度に約5万人いた旧軍人の恩給受給者は、23年度には約1400人となった。長い歳月の流れが直接の記憶を遠ざけていく。
 世界に目を転じると、惨禍は各地で再現されている。
 ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めてから2月で3年になる。双方とも死傷者は既に数十万人に上ると推計される。パレスチナ自治区ガザでの戦闘もやまず、ガザ側の死者は4万5千人以上とされる。
 米国ではトランプ次期大統領が今月就任する。いずれも早期終結に言及するが、道筋は示していない。それが国際秩序や将来の平和に寄与するやり方かも見通せない。
 アジアでも中国が台湾統一への圧力を強め、北朝鮮はロシアとの軍事協力を深める。日本政府はこの10年余り、防衛力強化を推し進め、平和国家の国是である「専守防衛」は大きく揺らいでいる。
 14年には現行憲法の核となる9条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。制約はあるとはいえ、自衛隊の海外での武力行使に道を開いた。
 22年には反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決め、23年度からの5年間で防衛費に総額約43兆円の巨費を投じる。23年には殺傷能力がある武器の輸出を決めた。
 問題は、国民が選んだ与党の「1強政治」だったにせよ、これら国のあり方を転換する決定が、国民的な議論や合意を欠いたまま行われてきたことではなかったか。
 昨秋の衆院選で石破茂政権は少数与党になった。28年ぶりに予算案が修正されるなど、与党の独断専行が許されない熟議の兆しが見える。
 戦前戦中に塗炭の苦しみを味わった世代が、圧倒的多数になった戦後世代に託したいものは何か。戦後世代は、あの戦争と現代の国際社会にどう向き合うべきか。公論で物事が決まる環境を、あらためて自問自答する機会としなければなるまい。

 今年は6434人が犠牲になった阪神大震災から30年でもある。その後も東日本大震災、熊本地震、1年前の能登半島地震と震災のたびに次の南海トラフ地震に備える私たちが学ぶべき教訓は増えている。

 教訓を受け止め、考える決意を新たにする年にしたい。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【小社会・01.01】:やなせさんと巳年

2025-01-04 05:05:25 | 【第二次世界大戦・敗戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・国策犠牲・戦後補償

【小社会・01.01】:やなせさんと巳年

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・01.01】:やなせさんと巳年

 2025年が明けた。ことしは漫画家、やなせたかしさん夫妻をモデルとするNHK連続テレビ小説「あんぱん」も楽しみ。終戦直後に在籍した高知新聞も含め、どう描かれるだろう。

 昨夏、ある研修でやなせさんが残した1枚の絵を見せてもらった。従軍した中国戦線、終戦の日。兵隊7人が小川の堤を一列で走っている。ためてきた食料を敵に食べられるぐらいなら食べ尽くせ、と命令された。満腹になっても、走っておなかをすかせては食べた。戦争の愚かさ、不条理を描いた風刺という。

 終戦で「正義はある日突然逆転する」とも思い知った。「逆転しない正義は献身と愛」という思想は、身を削って空腹の人を助けるアンパンマンが生まれた土台として知られる。

 やなせさんは12年前、一回り前の巳(み)年の秋に亡くなった。その年の本紙連載「オイドル絵っせい」にはこうある。「それにしても最近の世界の動きは不気味だなあ。もう戦争と天災はカンベンしてほしいとつくづく思う」

 ことしは戦後80年。世界ではいまもウクライナや中東で、惨禍が再現されている。「専守防衛」の形骸化が進む日本の周辺も穏やかでない空気がある。天災の方も、やなせさんの没後も熊本地震や能登半島地震が続き、教訓は増えていく。人々の備えは十分だろうか。

 巳年。蛇は脱皮を繰り返すことから再生や成長を象徴するという。教訓を生かした再生、成長の年になれば。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】  2025年01月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【主張①・01.04】:正念場の日本経済 新たな成長産業の創出を 賃上げ継続で好循環目指せ

2025-01-04 05:03:50 | 【経済・産業・企業・起業・関税・IT・ベンチャー・クラウドファンティング

【主張①・01.04】:正念場の日本経済 新たな成長産業の創出を 賃上げ継続で好循環目指せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.04】:正念場の日本経済 新たな成長産業の創出を 賃上げ継続で好循環目指せ 

 日本経済が再生に向け正念場を迎えている。そのことを明確に物語るニュースが昨年末に飛び込んできた。自動車大手のホンダと日産自動車による経営統合交渉である。

 バブル崩壊後、日本経済は「失われた30年」といわれる低迷期に入った。そうした中でも世界的な競争力を維持し、日本経済を牽引(けんいん)してきたのが自動車産業だ。

 エンジン技術を武器に、日本車は低燃費や高い信頼性で消費者に支持されてきた。だが、車を制御するソフトウエア技術の重要性が増している。電動化など「100年に1度」とされる自動車産業の大変革期を迎え、日本車の優位性は相対的に低下している。

次世代半導体の支援法案を議論する有識者会議で挨拶する武藤容治経済産業相(中央)=東京都千代田区

 ◆変革乗り切る戦略描け

 米中の新興メーカーが価格競争力や開発スピードの速さで電気自動車(EV)市場を席巻している。両社が経営統合を迫られているのは、単独では太刀打ちできないとの危機感の表れにほかならない。

 既存事業の勝者が新事業への参入で後れを取ることを「イノベーションのジレンマ」という。過去に多くの企業がこの〝罠(わな)〟にはまってきた。

 両社に限らず、国内自動車メーカーは、これまでの成功体験にとらわれることなく、大変革期を乗り切る大胆な戦略を描き実行に移してほしい。

 問題は、自動車に続く成長産業が見当たらないことだ。

 かつて世界市場で輝きを放っていた日本企業の多くが存在感を失った。日本企業の競争力の衰えは、国力低下と軌を一にする。日本経済の再生には新たな成長産業の創出が不可欠だ。

 期待されるのは、最先端半導体の国産化を目指し、政府も支援する「ラピダス」である。昨年12月には生産に不可欠な重要装置の搬入が始まった。今年4月に試作ラインを稼働し、令和9年の量産開始に向け大きな一歩を踏み出す。 

 ラピダスに対する巨額の政府支援には批判もある。早期に民間主導に移行すべきは当然だが、車の自動運転などユーザー企業の具体的な用途を念頭に最先端半導体を供給できれば、国内産業に多大な波及効果を期待できる。必要であれば政府支援をためらうべきではない。

 日本経済が成長軌道を取り戻すために、もう一つ欠かせないのが賃上げの継続である。

 バブル崩壊後、日本経済はデフレという暗雲に覆われてきた。物価が上がらない中で、企業は利益を確保しようと賃金の上昇を抑えた。収入が増えないため、消費者は節約志向を強め、それがさらに物価の下落を招く。長きにわたり、この悪循環から抜け出せずにいた。

 だが、原材料や資源価格の高止まりに円安も加わり、いまなお幅広い品目で価格の上昇が続く。物価だけをみれば、日本経済はすでにインフレ状態にあるといっていい。

 ◆中小の価格転嫁進めよ

 企業が賃上げを重視する姿勢に転じたことは心強い。それでも物価変動を考慮した実質賃金は安定的に物価上昇を上回ることができずにいる。この状況を変えなければ、経済の好循環を実現できず、デフレからの完全脱却は見込めまい。 

 中でも重要なのは雇用の7割を占める中小企業の賃上げである。そのために、生産性向上など中小企業自らが業績改善に努めるのは当然だ。同時に原材料費や労務費など上昇した中小企業のコストを取引価格に適正に転嫁することが欠かせない。

 中小企業の人手不足は深刻になっている。業績が改善していなくとも、人手確保を目的とした「防衛的賃上げ」を迫られている中小企業も少なくない。

 取引企業が賃上げできずに人手不足に陥り事業継続に支障が出れば、困るのは大企業の側である。コスト転嫁を促すために政府が取引状況の監視をさらに強めることも必要になろう。

 今月20日には、大幅な関税引き上げを表明しているトランプ氏が米大統領に就任する。人口減による国内市場の縮小が懸念される日本にとって、海外市場の取り込みは重要だ。関税引き上げは日本経済に大きな影響を及ぼす恐れがある。

 トランプ政権の政策に翻弄されないためには、日本企業が世界的な競争力を取り戻す以外にない。民間が大胆な戦略を描き、政府がそれを支援する。官民挙げた取り組みの強化によって、日本経済の再生を確かなものにしたい。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【産経抄・01.04】:自民と立民の大連立、自民飛び出す議員はいるか?

2025-01-04 05:03:45 | 【政党・自民・立憲・維新の会・公明・国民民主・共産・社民・れいわ・地域政党他】

【産経抄・01.04】:自民と立民の大連立、自民飛び出す議員はいるか?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・01.04】:自民と立民の大連立、自民飛び出す議員はいるか? 

 「亡くなった人には、思い出してもらえることが一番の供養なんです」。作家、山口恵以子さんの連作小説『ゆうれい居酒屋』で、登場人物が繰り返し口にする心に染みるセリフである。3日の小紙掲載のミニ記事「首相ら、大連立『選択肢にある』」を読み、この言葉を思い浮かべた。

インタビューに答える安倍晋三氏=2014年12月、首相官邸(酒巻俊介撮影)

 ▼令和4年に暗殺された安倍晋三元首相が再登板を果たす半年ほど前、平成24年6月のことだった。議員事務所を訪ねた抄子に、安倍氏は唐突に語り始めた。「自民党と民主党による大連立構想は、とんでもない。そうなったら党を割って出る」。当時、再燃していた自民、民主の大連立構想はふしだらだというのだった。

 ▼石破茂首相は1日放送の文化放送ラジオ番組で、少数与党の現状を踏まえた野党との大連立について含みを持たせた。「選択肢としてあるだろう」。この場合の野党とは民主党の後裔(こうえい)である立憲民主党を指すが、確かに不品行極まりない野合だといえる。

<iframe id="offer_3ad7f02835e3745133b2-0" src="https://buy-ap.piano.io/checkout/template/cacheableShow?aid=ZDyOAW1spj&templateId=OTSGP4OFGCA7&offerId=fakeOfferId&experienceId=EX1RGPTXQJDG&iframeId=offer_3ad7f02835e3745133b2-0&displayMode=inline&pianoIdUrl=https%3A%2F%2Fid-ap.piano.io%2Fid%2F&widget=template&url=https%3A%2F%2Fwww.sankei.com" name="offer_3ad7f02835e3745133b2-0" frameborder="0" scrolling="no" allowfullscreen="true"></iframe>

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2025年01月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【主張①・01.03】:能登半島地震1年 日本の縮図を次の備えに 地域のリスクを確かめよう

2025-01-04 05:03:40 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【主張①・01.03】:能登半島地震1年 日本の縮図を次の備えに 地域のリスクを確かめよう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・01.03】:能登半島地震1年 日本の縮図を次の備えに 地域のリスクを確かめよう 

 石川県能登地方が最大震度7の揺れに見舞われた能登半島地震から1年が過ぎた。犠牲者と被災者に深く思いを寄せるとともに、この苦難を無にしないことを誓いたい。

 地震が起きたのは元日の夕刻だった。多くの人は新年を祝い、穏やかな時を過ごしていただろう。地震は時も場所も選ばないということを改めて胸に刻む必要がある。

 先月27日時点の集計によると、死者・行方不明者は506人に上る。このうち避難生活で体調を崩すなどして亡くなった災害関連死は276人で、家屋の倒壊などによる直接の死者228人を上回った。

地震発生時刻にあわせ黙とうする人たち=1日午後、石川県輪島市(鴨川一也撮影)

 ◆多くの課題突き付けた

 震災を生き延びた多くの人が関連死で亡くなったという事実は重い。そのほとんどは高齢者だ。昨年9月の豪雨被害も重なり、避難生活はまだ続いている。被災者の心身への手厚いケアが必要だ。

 復旧は少しずつだが進んでいる。不眠不休で初動に当たった自治体職員や全国から駆け付けた防災・医療関係者、ボランティアに敬意を表したい。

 石破茂首相は1日、被災地を訪れた。犠牲者を追悼し、能登の復旧・復興に全力を挙げる姿勢を示したものだ。

 浮き彫りになった課題は多い。避難所は雑魚寝状態でトイレや温かい食事が不足した。土砂崩れなどで道路が寸断され、孤立集落が多発した。物資輸送がままならず、復旧が遅れた。朝市で知られる輪島市では大規模な火災が発生した。

 ただ、これらは能登で初めて起きたことではない。避難所の環境改善は、以前から指摘されていた。災害関連死は平成28年の熊本地震、孤立集落は16年の新潟県中越地震、大規模火災は30年前の阪神大震災でも大きな教訓だったはずだ。 

 能登は日本が以前から抱えていた地震防災の課題を、今日でも解決できていない現実を突き付けたといえるだろう。

 内閣府によると、被害が大きかった震度6強以上の6市町は全て過疎地だ。高齢化率は全国平均より高い44%で、人口は令和2年までの35年間で39%も減った。住宅の耐震化も進んでいなかった。こうした背景が被害拡大の一因とみられる。

 地方では少子高齢化や人口減少によって防災力が低下している。震災時に支援を必要とする人が増える半面、助ける人が減っていく。自治体の財政も厳しさを増す。

 これは地方だけでなく日本全体の課題だ。能登は今後の日本で起き得る震災の縮図と捉えるべきだろう。

 日本は世界有数の地震多発国であり、マグニチュード(M)7級の大地震を起こす活断層が全国で100以上もある。陸地だけでなく、日本海側の海域には今回の能登のように津波を引き起こす活断層が多い。

 ◆海域活断層の調査急げ

 太平洋側では北海道の千島海溝や西日本の南海トラフでM8~9の巨大地震が切迫している。M7級の首都直下地震も高い発生確率で想定されており、いずれも甚大な被害の恐れを覚悟しなくてはならない。 

 これらの震災に能登の教訓を生かし、国や自治体は減災への取り組みを加速させる必要がある。住宅耐震化の促進や津波対策、避難生活の改善と共通の課題は多い。ドローンの活用も重要だ。

 国は日本海側の海域活断層について、今後の発生確率などを調べる長期評価を順次行ってきたが、能登の地震を起こした断層の評価は間に合わず、防災に生かせなかった。他の断層を含め調査を急いでもらいたい。

 私たちは何ができるだろうか。まず地震はどこでも起きると肝に銘じたい。自分は大丈夫だという過信が防災の最大の妨げである。大切なのは自分が住んでいる場所の災害リスクを知ることだ。国の地震本部は全国の海溝型や活断層の地震について場所や発生確率を公表している。一度は見ておきたい。

 自治体のハザードマップは揺れや火災の危険度などを詳しく示している。避難場所を確認し実際に行ってみてほしい。家具の固定や防災用品の準備、災害発生時の連絡手段を家族で話し合っておくことも大切だ。

 正月に震災のことを考えるのはつらい。しかし、能登の現実を受け止め、これからは年の初めこそ防災への意識を新たにしたい。その心構えが震災列島の日本を強くするはずだ。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2025年01月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【産経抄・01.03】:再生と治癒の1年に、「巳」の年に願う

2025-01-04 05:03:35 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【産経抄・01.03】:再生と治癒の1年に、「巳」の年に願う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・01.03】:再生と治癒の1年に、「巳」の年に願う 

 ギリシャ神話のアスクレピオスは、医療の神として知られる。あらゆる病人を治し、冷たくなった人を生き返らせることもできた。冥界の禁忌を犯した医術は神々の怒りを買い、主神ゼウスの雷に打たれて天上の星となっている。

多くの初詣客らでにぎわった明治神宮=1日午前、東京都渋谷区(酒井真大撮影)

 ▼医療の神が愛用した杖(つえ)には1匹の蛇が巻き付いており、その蛇が蘇生術を授けたという。脱皮を繰り返す姿は、再生や治癒の象徴としていまに伝わる。世界保健機関(WHO)や日本医師会など、多くの医療団体がロゴに蛇を用いるゆえんである。

 ▼聖書いわく、アダムとイブに「知恵の実」であるリンゴを口にさせたのも蛇だった。仏教では、穀物や農事をつかさどる宇賀神(うかのかみ)が人頭蛇身である。縁起のよい白蛇の姿で描かれ、弁財天と同一視されることも多い。蛇は洋の東西を問わず、あまたの恵みを人類にもたらしてきた。

<iframe id="offer_3ad7f02835e3745133b2-0" src="https://buy-ap.piano.io/checkout/template/cacheableShow?aid=ZDyOAW1spj&templateId=OTSGP4OFGCA7&offerId=fakeOfferId&experienceId=EX1RGPTXQJDG&iframeId=offer_3ad7f02835e3745133b2-0&displayMode=inline&pianoIdUrl=https%3A%2F%2Fid-ap.piano.io%2Fid%2F&widget=template&url=https%3A%2F%2Fwww.sankei.com" name="offer_3ad7f02835e3745133b2-0" frameborder="0" scrolling="no" allowfullscreen="true"></iframe>

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】  2025年01月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説①・01.04】:戒厳令後の混乱 理解し難い韓国の政治と司法

2025-01-04 05:00:50 | 【韓国・在韓米軍・従軍慰安婦問題・強制労働・島根県竹島(韓国名・独島)の領有権】

【社説①・01.04】:戒厳令後の混乱 理解し難い韓国の政治と司法

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.04】:戒厳令後の混乱 理解し難い韓国の政治と司法

 現職大統領の逮捕は見送られたものの、政治や司法をめぐる混迷はむしろ深まっている。韓国はどこへ向かうのか。

 尹錫悦大統領を内乱容疑などで捜査している高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)の捜査官らが、尹氏の逮捕状を執行するため、ソウル市内の大統領公邸の敷地内に進入した。

 だが、公邸を警護する大統領警護庁の部隊に阻まれた。数時間に及ぶにらみ合いの末、公捜庁は、逮捕状執行は「不可能」だとして中止を発表した。

 現職大統領が逮捕されれば韓国史上初となるところだった。捜査当局が身柄確保のために公邸に迫りながら、取りやめになるのもまた異様である。

 公邸周辺は多数の警官や警察車両が配備され、緊迫した雰囲気に包まれた。大規模な衝突などが起きなかったのは幸いだった。

 尹氏が唐突に非常戒厳を宣言してから1か月となる。この間、国会は尹氏に対する 弾劾 だんがい 訴追案を可決し、尹氏は憲法裁判所での弾劾審判に臨む。裁判所でのプロセスと並行して、尹氏に対する捜査が進む異例の展開である。

 韓国特有の司法制度が、事態を複雑にしている面もある。

 尹氏の捜査を主導している公捜庁は、検察に替わって政府高官や国会議員らを捜査する捜査機関として、文在寅政権下で発足した。尹氏を内乱の「首謀者」と位置づけ、逮捕状を請求した。

 裁判所は請求を認めたが、尹氏の弁護側は、公捜庁には内乱罪の捜査権はないとの立場だ。公捜庁などによる3回の出頭要請にも応じず、憲法裁に逮捕状の効力を停止する仮処分を申請している。

 法解釈をめぐり、捜査当局と尹氏の側には大きな開きがある。それぞれの言い分に基づいてこのまま行動を続けていけば、深刻な衝突に発展する恐れすらある。

 国会でも、多数を占める野党が、大統領に続き、大統領代行の首相の弾劾訴追を主導し、与党を揺さぶり続けている。

 この間、韓国では179人が死亡する飛行機事故が起きた。トランプ米政権の発足を前に、北朝鮮の動向をはじめ国際情勢も大きく揺れている。韓国の政治や司法の機能不全が、内政や外交に与える悪影響は計り知れない。

 与野党や司法関係者らすべての当事者が、冷静さを取り戻し、意見の違いや問題を整理すべき時に来ているのではないか。知恵を出し合い、事態を収拾に向かわせる方策を見いだしてほしい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【社説②・01.04】:医師の偏在対策 実効性ある開業規制が要る

2025-01-04 05:00:40 | 【医療・診療報酬・病気・地域・オンライン診療・マイナ保険証・薬価・医療過誤】

【社説②・01.04】:医師の偏在対策 実効性ある開業規制が要る

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.04】:医師の偏在対策 実効性ある開業規制が要る

 都市部に医師が集中しているのに、多くの地方が医師不足に陥っている状況が一向に解消されずにいるのは問題だ。 

 診療所が多い地域での開業に一定の規制を設けるのは選択肢となるだろう。

 厚生労働省が、人口や医師数、高齢化による医療ニーズなどを踏まえて医師の充足度を地域別に数値化したところ、東京の都心部は、医師不足に悩む岩手沿岸部に比べて7倍に上った。

 全国の医師数は34万人余りと、過去10年で4万人増えたが、偏在は深刻だ。病院の勤務医が足りない一方、都会の開業医は余っている、という指摘もある。

 政府は、医師の偏在を是正するための対策をまとめた。通常国会で法改正し、2026年度からの実施を目指している。

 対策の柱は、医師不足の地域で働く医師の手当増額や、医師を派遣する医療機関への経済的な支援を強化するとともに、都市部での開業規制を導入することだ。

 具体的には、診療所が多い地域で新たに開業する医師に対し、訪問診療や夜間・休日の救急対応など、その地域に不足している診療分野を手がけるよう、都道府県が要請できる仕組みを設ける。

 要請に応じない場合、医療機関名の公表や、保険診療を行うために必要な「保険医療機関」への指定期間を短縮することができるようにするという。

 住んでいる地域によって必要な医療が受けられないような事態は避けなければならない。医師にも働く場を選択する自由があるとはいえ、その社会的責任の重さを考えれば、一定の開業規制を設けるのは理解できる。

 対策を議論した有識者会議では、医師が要請に応じない場合は保険医療機関への指定を許可しない、といった厳しい措置も一時検討されていた。だが、日本医師会が「職業選択の自由」などを理由に反発したため、見送られた。

 政府はこれまで、医師の偏在解消に向けて様々な対策を講じてきたが、効果が上がっているとは言い難い。今回の規制も実効性に乏しかった場合には、さらなる措置に踏み切るべきだろう。

 誰もが一度は地方勤務を経験するような仕組みも含めて、多角的な対策が必要ではないか。

 医師の偏在を巡っては、外科や救急など時間外勤務が多い分野のなり手が不足している問題もあるが、十分な解決策は示されなかった。診療科の偏在解消にも引き続き取り組まねばならない。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする