【社説・01.18】:ガザ停戦合意 恒久的な和平につなげよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.18】:ガザ停戦合意 恒久的な和平につなげよ
まずは停戦合意を着実に履行すべきだ。さらに恒久的な停戦、中東和平へつながるように国際社会が支援しなくてはならない。
パレスチナ自治区ガザの停戦に、イスラエルとイスラム組織ハマスが合意した。あす19日に発効する。
第1段階として、戦闘を6週間休止し、ハマスは女性や高齢者ら人質33人を段階的に解放する。イスラエルは拘束しているパレスチナ人数百人を釈放し、ガザの人口密集地から軍を撤収する。
ガザへの人道支援は大幅に拡充され、住民は避難先から全域に帰還できる。
6週間の中で停戦継続を協議し、合意できればイスラエル軍は撤収範囲を広げ、ハマスはイスラエル兵を含む人質を解放する。恒久停戦への過程が第2段階となる。
ガザでの戦闘は2023年10月から15カ月以上続き、ガザ側の死者は4万6千人を超えた。冬になって凍死する子どもがいる。餓死者も絶えない。犠牲者をこれ以上増やしてはならない。
住民の大半が家を追われ、食料や医薬品が極度に不足している。目を覆うばかりの人道危機である。
戦火は中東の周辺国にも拡大した。戦闘当事者だけの問題ではない。
停戦は米国やカタール、エジプトが仲介した。とりわけ大きな役割を果たしたのは、もうすぐ米大統領に復帰するトランプ氏だ。
バイデン大統領とは政治スタンスを異にするトランプ氏だが、ガザの停戦を求める考えでは一致している。
20日の大統領就任までに人質を解放しなければ「中東に地獄が訪れる」とハマスを脅した。一方で次期政権の中東担当特使をイスラエルに送り込み、ネタニヤフ首相に妥協を迫った。
ハマスは戦闘で指導者を失い弱体化している。ネタニヤフ氏にとって、トランプ氏との良好な関係を保つことは政権運営で非常に重要だ。こうした事情がハマスとイスラエルを歩み寄らせた。
恒久停戦につながるかは予断を許さない。23年11月にも一時停戦したが、人質解放などの合意が守られなかったとして、わずか1週間で戦闘を再開している。
懸念されるのはイスラエルの政情だ。汚職裁判を抱えるネタニヤフ氏は、ハマスとの戦闘が自身の政治的延命策でもあった。政権内は停戦合意への不満が残り、戦闘再開の火だねがくすぶる。
合意の履行状況は仲介役を担った米国などが監視するという。ほごにしないように目を光らせるべきだ。
トランプ氏には、親密な関係にあるイスラエル側に偏ることなく、公平な姿勢で恒久停戦への指導力を発揮することを求めたい。
日本はガザへの人道支援や復興協力、中東和平を後押しする外交などで存在感を示してほしい。
元稿:西日本新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月18日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。