《社説①・11.14》:神城地震10年 活断層の存在を意識して
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.14》:神城地震10年 活断層の存在を意識して
白馬村と小谷村を中心に住宅の倒壊が相次いだ2014年の神城断層地震から、今月22日で10年になる。
最大震度は6弱。計46人の重軽傷者を出した。住民同士が助け合って救助活動し、死者はなかった。
小谷村から松本市などを通り、諏訪湖付近を経由して山梨県南部へと延びる「糸魚川―静岡構造線(糸静線)断層帯」の最北部にある活断層、神城断層がずれ動いた直下型の地震だった。
活断層を原因とする地震は、その真上付近の地域に集中的に被害をもたらす。1995年の阪神大震災や2016年の熊本地震、そして今年1月に発生した能登半島地震がそうだ。
糸静線には、全国的にも地震発生確率の高い活断層が走る。同じような被害は県内の多くの地域でいつ起きてもおかしくない状況にあると言える。地下に潜む危険を改めて意識し、地域や家庭での備えを確認しておきたい。
33棟が全壊するなど大きな被害が出た地区の一つ、白馬村堀之内地区では当時、助けが必要な高齢者らの自宅を載せた「災害時住民支え合いマップ」を使い、倒壊した家屋から迅速に救助した。
住民による共助が力を発揮して死者を出さなかった経緯は「白馬の奇跡」と呼ばれ、後の地域防災のモデルともなった。
能登半島地震でも見られたように、中山間地では道路の寸断などで支援の到達に時間がかかることも想定される。住民の防災組織がどれだけ具体的に備えを進められるかは、対策の鍵を握る。
ただ、高齢化が著しいと救助に対応できる人が限られ、助け合いが難しい地域も少なくない。複数の地区に広げて協力関係を構築するなど、住民の活動を支える行政の役割も重要になる。
こうした取り組みの土台となるのは、住民一人一人の危機意識である。全国で地震が相次いで、関心は高まっているが、被災時のことを具体的にイメージできている人は多くはないだろう。
神城地震の被災地は、経験を伝える活動に力を入れている。白馬村では先日、村公民館が、断層の動きによって大きく隆起した田んぼなど地震の爪痕をたどるツアーを行った。白馬中学校の生徒たちも、当時を知る人から話を聞いて考える学習を進めている。
防災庁設置を目指す国は今後、避難所の指針改定など防災強化に力を注ぐ構えだ。効果的なものとしていくためにも、地域での地道な積み重ねが重要になる。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月14日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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