《社説②・11.15》:米新政権の運営 歯止めなき暴走が心配だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.15》:米新政権の運営 歯止めなき暴走が心配だ
「忠臣」で脇を固めて独善的な政権運営を強めていきそうだ。
米国のトランプ次期大統領による政権の主要人事だ。手腕を危ぶむ声をよそに熱烈な支持者を重用するという。第1次政権はトランプ氏をいさめる側近もいたが、現状では見当たらない。
大統領選と同時の連邦議会選では、共和党が上院を奪還し、下院も多数派を維持した。赤をシンボルカラーとする共和党が大統領職と上下両院を独占する「トリプルレッド」を達成した。
議会による監視機能すら弱まれば、トランプ氏が掲げる過激な「米国第一主義」の暴走に歯止めが利かなくなる。
政権人事は「論功行賞」が鮮明だ。政府業務の効率化を担う新組織「政府効率化省」のトップには、実業家のイーロン・マスク氏を起用する。選挙戦ではトランプ陣営を巨額の献金で支えた。
マスク氏が率いる電気自動車や宇宙関連の企業は政府の規制や予算措置の影響が大きい。利益誘導を招くとの疑念が拭えない。
米軍を統括する国防長官には、陸軍州兵出身で保守系テレビFOXニュースの司会者ピート・ヘグセス氏を充てる。トランプ氏と相性はいいが、軍や政府要職の経験はない。安全保障政策の力量には疑問の声が上がる。
外交や安保を取り仕切る閣僚や高官は他にも、自身に近い人物を用いる。米国の内向きな姿勢が強まり、世界情勢の混迷に拍車がかかる恐れがある。
米国では議会に立法権と予算編成権があり、上院は閣僚や連邦最高裁判事の人事承認権を持つ。上下両院を共和党が握り、トランプ氏が掲げる関税引き上げや不法移民の強制送還、減税といった政策が実現しやすい環境となる。
インフレの再燃や財政悪化、貿易摩擦の激化といったリスクを伴う。だが、共和党は異論を唱える穏健派が排除され、「トランプ党」の色彩を以前にも増して強めている。絶大な権力基盤を手にする状況ができつつある。
連邦最高裁はトランプ氏が第1次政権で保守派判事3人を送り込み、保守化が進んだ。7月には、大統領在任中の公的な行為は刑事訴追されない「免責特権」を認める司法判断を示した。トランプ氏が意のままに振る舞うことを容認したとも言える。
権力が分立し、政権内外でチェックし合う仕組みを放棄すれば、民主主義国とは言えなくなる。政権スタッフや議員の良識に期待するしかない。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月15日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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