【社説①】:イランの攻撃 関係国は報復の連鎖断ち切れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:イランの攻撃 関係国は報復の連鎖断ち切れ
敵対するイランとイスラエルがこれ以上、戦闘を続ければ、取り返しのつかない事態に陥ってしまうだろう。危機の拡大を防ぐため、すべての当事国に自制を求める。
イランがイスラエルを300以上の無人機やミサイルで攻撃した。イランによるイスラエルへの直接攻撃は初めてである。
イスラエルは、多くの兵器を防空システムなどで迎撃したため、被害は南部の空軍基地などに限られた。死者も出ていないという。米国も迎撃に加わった。
イランの攻撃は中東の紛争を拡大しかねない危険な挑発と言える。先進7か国(G7)首脳はオンラインで協議し、首脳声明でイランを非難した。
今回の攻撃についてイランは、シリアにある自国の大使館施設がイスラエルに空爆されたことへの報復だと主張している。イスラエルは空爆を認めていないが、関与は確実視されている。
領事関係に関するウィーン条約は、在外公館の不可侵を定めている。空爆が国際法に反していることは明らかだ。
イランが今回の攻撃で、テルアビブなど経済の中心地を攻撃対象から外したことには留意したい。報復攻撃の方針も、周辺国に事前に通告していた。迎撃体制を整えるよう促したものとみられる。
イランの振る舞いは抑制的だったと言える。報復の応酬は、一歩誤れば地域全体に戦闘が拡大し、収拾がつかなくなってしまうという判断からだろう。
攻撃後、イランの革命防衛隊の司令官は、作戦完了を宣言した。イスラエルとの対決をさらに激化させるつもりはない、という重要なメッセージではないか。
イスラエルは、イランのそうした攻撃の態様を冷静に分析し、追加の軍事行動を控えるべきだ。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザでイスラム主義組織ハマスとの戦闘を続け、多くの犠牲者を出している。ハマスによる越境攻撃が発端とはいえ、民間人への無差別攻撃が人道危機を招き、中東情勢を不安定にしている。
今回の報復攻撃の直前、イランはホルムズ海峡付近でイスラエル関連の船舶を 拿捕 した。
イランが支援するイエメンの反政府武装勢力フーシは紅海で船舶を攻撃しているが、イランが直接、拿捕するのは異例だ。
ホルムズ海峡は、中東の原油を日本をはじめ世界中に運ぶルートだ。イランは、この海域の安全を脅かしてはならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月16日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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