【社説①・12.11】:SNSと子ども 歯止めの議論急ぎたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.11】:SNSと子ども 歯止めの議論急ぎたい
交流サイト(SNS)を介したいじめや有害情報、トラブルの危険から、子どもたちをどう守るか。利用を制限する世界的な動きが注目される中、日本でも野放しにしない対策への議論が急務だ。
北海道旭川市や兵庫県猪名川町では、ネットを通じたいじめを受け、中学生が自殺したとみられる事案が起きている。
SNSは仲間とつながり、率直な思いを発信できる半面、集団のいじめや中傷がエスカレートしたり、デマや犯罪を誘発する有害情報にさらされたりする。
東京・池袋の暴走事故の遺族に対し、「殺してあげようか」などと脅迫するメールを送ったとして中学3年の女子生徒が書類送検され、衝撃が広がった。
オーストラリア国会では先月、16歳未満の子どもによるインスタグラムやX(旧ツイッター)などSNS使用を禁じる法案を世界で初めて可決させた。
同国では、「動画中毒」になり容姿に劣等感を抱いた子どもが拒食症の末に自ら命を絶つなど、大きな社会問題となっている。8割近い国民が法規制を支持した。
事業者に子どものアカウント取得を防ぐ措置を義務づけ、違反には巨額の制裁金を科す。ただ、年齢認証は技術的に難しく、実効性の確保が課題という。
フランスやイギリス、カナダでも、使用に年齢制限を設けるなどの法制化の動きが強まっている。
SNSでは、利用者の検索履歴から関心事を読み取る機能で関連する刺激的な情報が次々と提供されたり、偏った見方や虚偽情報へ誘導されたりするなど、判断力が未熟な子どもの心身への影響は大きい。睡眠障害や視力の低下も懸念される。
しかし、巨大ITなど運営事業者の対応は鈍く、全く不十分だ。
政府は先月、青少年保護に向けた検討会を立ち上げた。2009年施行の青少年インターネット環境整備法は、SNS利用そのものを制限していない。事業者の対策や利用に関わる規制にどこまで踏み込むかが問われよう。
国の23年度調査で、小学4、5年で自分専用のスマートフォンを持つ児童は65%。平日1日の平均ネット利用時間は小学生で3時間45分、中学生4時間40分、高校生は6時間超に上った。
荒れたSNS空間は、大人社会の反映でもある。子どもの健全育成には制限に加え、情報へのリテラシーやモラルの普及も含め、幅広い議論が欠かせない。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月11日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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