【社説②・12.11】:宇治市長再選 京都府南部、先導するまちに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.11】:宇治市長再選 京都府南部、先導するまちに
宇治市長選で現職の松村淳子氏が、無所属新人ら2氏を大差で下し、再選された。
医師と京都府幹部の経験を元に、福祉や産業振興を進めた手腕が一定評価されたといえよう。
2期目に向け、子ども医療費の助成拡充や防災拠点となる公園の機能強化、市内周遊観光の仕掛け作りなどを訴えて支持を広げた。当選後には「山城地域の中心を担いたい」と意欲をみせた。
府内第2の人口規模は9月、32年ぶりに18万人を割った。想定を上回る減少スピードだ。高度成長期に開発された住宅街が多く、少子高齢化が加速している。
人口減少局面でも安心して暮らせる地域づくりと、新たな活力を生む宇治の将来像を再構築することが求められる。
次世代の居住を広げるには、子育て環境の充実が欠かせない。保育所などの待機児童は年度当初ゼロが7年続く一方、人材の安定した確保が課題になっている。来春に開設する「乳幼児教育・保育支援センター」(仮称)を軸に、多様な子どもの支援や保育士の育成などに一段と踏み込みたい。
市が取り組む小中一貫教育や学校給食センター計画などの発信に加え、若者の生活基盤となる住宅への施策も重要になる。
新型コロナウイルス禍の収束や抹茶ブームなどで、観光入込客数は年間600万人台が視野に入ったという。観光消費への期待の一方、平等院周辺に集中するオーバーツーリズム(観光公害)を防ぐ取り組みが欠かせない。
10月には市内の任天堂工場跡に「ニンテンドーミュージアム」がオープンした。こうした新資源や周辺自治体と連携し、府南部の中核都市として観光圏作りを先導し、京都市とは違った魅力のある「京都観光」を創出してほしい。
新名神高速道路の全線開通に向け、宇治田原町や城陽市のインターチェンジに近い立地は追い風にしたい。
ただ、開発できる土地が少なく、新たに設定した3カ所の「産業立地検討エリア」も2カ所の整備は未着手である。
本年度当初予算は近年で突出して多い70億円超の市債を発行し、年度末の市債残高は420億円を見込む。厳しい財政の中、優先度の見極めが鍵となろう。
投票率は過去最低で初めて3割を割った。2期目に入る松村氏は、より丁寧に地域との対話を重ね、市民の関心と参加を高めることで公約を実現してもらいたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月11日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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