【社説①・12.13】:税制改正議論 公平な負担のあり方直視せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.13】:税制改正議論 公平な負担のあり方直視せよ
税制の改正を進める上で、国民に対し、どのように負担を求めていくのか。経済や社会のあるべき姿を念頭に置いて、公平感を損なわないような税制にしなければならない。
自民、公明両党と国民民主党は年収が103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」について、来年から引き上げることで合意した。国民民主が求める178万円を目指すという。
方向性は確認したものの、具体的な引き上げ幅や、税収減に伴う財源の確保策は固まっていない。引き続き協議するとしている。
物価高に伴って、低所得者層の家計は苦しく、「壁」を引き上げること自体は望ましい。働き控えが減ることも期待されている。
ただし、政府は、非課税枠を178万円にまで引き上げた場合、7兆~8兆円の税収減になると試算している。引き上げ幅が大きくなるほどに、税収減を補う歳出削減策や増税策などを探すことは難しくなると想定されよう。
財源探しに行き詰まり、国債発行に頼って、将来世代にツケを回すような改正は避けるべきだ。
今の若い世代にとっては、年齢を重ねた先にある、なお現役で働いているであろう将来において、自らがツケを払うことになることを忘れてはならない。
そもそも、103万円の壁といっても、年収が増えていった際に手取りが減るわけではない。年収が103万円を超えた分に、まずは5%の税率がかかるだけだ。所得が増えれば、能力に応じて負担するのは税の原則である。
「社会保険の壁」である106万円や130万円を超えると、社会保険料の負担が生じ、手取りが減る。それとは異なるものだ。
非課税枠の拡大を巡る国民の関心が高まる中で、財政健全化を重視する財務省に対し、SNSでは「財務省解体」といった中傷コメントが増えている。
税負担を可能な限り忌避しようという風潮が広がっているのであれば憂慮すべき事態である。
国の予算は、社会保障や、防衛、教育などに使われており、国民がその負担を公平に分かち合っていくことが求められる。
一方、3党は、ガソリン税に上乗せしている暫定税率の廃止でも一致した。単純な廃止は、消費者の省エネ意識を妨げかねず、脱炭素の流れにも逆行する。
電気自動車(EV)の普及を見据え、ガソリン税を含めた自動車関係の税制全体を見直す中で検討していくことが大切だ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月13日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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