【天風録】:小田凱人さん
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:小田凱人さん
「凱人(ときと)」は、凱旋(がいせん)門にちなむ命名と聞く。凱という字の一つの意味は、勝ちどき。車いすテニスの小田凱人選手が、名前の通り、凱旋門のあるパリの全仏オープンで男子シングルスを制し、歓喜の声を上げた
▲17歳1カ月での優勝は、四大大会の同種目で史上最年少である。世界ランキングでも、史上最年少で頂点まで上り詰めることになる。最年少記録を総なめにする将棋の藤井聡太七冠といい小田選手といい、このところ伸び盛りの若者たちがまぶしい
▲小田選手は元サッカー少年だった。9歳で股関節に骨肉腫を患い、車いす生活に。リハビリ先で初めて競技用の車いすに乗った時の気持ちを覚えているという。「風を感じたんです」。それまで味わえなかった別世界が開けたのだろう
▲今では、車いすテニスは「障害がないと、できないスポーツ」と頭を切り替えている。「頑張ることが一つできれば、障害は武器に変わる」とも言う。あの国枝慎吾さんに憧れたように、今度は自分が見つめられる番
▲勇ましげな凱の字には、「和らぐ」という意味もある。初夏に南から吹くそよ風は凱風と呼ばれ、万物を養うとされている。病床の少年少女たちに風が吹いている。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2023年06月13日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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