【兵庫・斎藤元彦知事】:補助金キックバック疑惑 13金融機関の寄付額一覧を入手!
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫・斎藤元彦知事】:補助金キックバック疑惑 13金融機関の寄付額一覧を入手!
兵庫県の斎藤元彦知事の不信任案を県議会が9月19日に全員一致で可決し、斎藤知事は自ら辞職、あるいは失職するか、県議会を解散するという選択を迫られている。
ただ、忘れてならないのは、斎藤知事が職を失う、あるいは県議会を解散しても、内部告発で明るみに出た知事や県幹部の疑惑が、すべて解明されたわけではないということだ。
内部告発された疑惑の中には刑事事件に発展する可能性があるものがある。中でも、AERA dot.が9月10日配信の記事「【独自】兵庫・斎藤知事らの補助金キックバック疑惑で金融機関幹部が重要証言『補助金と寄付はセットだった』」で報じたように、事件性が高いと言われるのが、「阪神・オリックスの優勝パレード寄付金集めのため、金融機関に補助金をキックバックさせた」という疑惑だ。
2023年11月23日、プロ野球日本一になった阪神とリーグ制覇をしたオリックスの優勝パレードが大阪・御堂筋と神戸・三宮で行われた。大阪府と兵庫県が連携し、警備などにかかる費用は企業からの寄付やクラウドファンディングで集めることになった。だが、大企業が多い大阪では比較的順調に寄付が集まったのに対し、兵庫ではなかなか寄付が集まらなかった。
元県民局長の内部告発文書には、こう記されている。
〈クラウドファンディングや企業から寄付を募ったが、結果は必要額を大きく下回った。そこで、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った。幹事社は但陽信用金庫。具体の司令塔は片山(安孝)副知事〉
ここで県補助金と書かれているのは、県の金融機関向けの「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」による補助金のことだ。2023年12月の補正予算を作成する際、11月14日の財政課長査定の段階では補助金総額は1億円だったが、16日の産業労働部の事業計画では総額3億7500万円に増額され、最終的に21日に斎藤知事の判断で4億円が補正予算に組み込まれることになった。数日のうちに補助金が3億円も増額されていた。
■刑事告発もされたキックバック疑惑
告発文書が正しければ、金融機関向けの補助金を増額する裏で、その一部を寄付金として出すよう、県と金融機関の間に「密約」があったということになる。
この問題について、斎藤知事はこれまで「補助金とパレードは別」などと関係を否定してきているが、AERA dot.は先の記事で、「補助金とパレードへの寄付はセットだった」という金融機関幹部の重要な証言を報じた。
また、東京都の男性が、9月2日に大阪地検特捜部に斎藤知事と片山安孝前副知事の行為が背任にあたるとして、刑事告発状を提出した。告発状によると、補助金の増額と引き換えに金融機関に優勝パレードへの寄付を求めたことは、不要な補助金増額によって県に損害を与えた違背行為である、としている。
兵庫県明石市の前市長で、市長時代に斎藤知事に何度も「ものを申して」、携帯電話の着信拒否をされたという泉房穂氏はこう話す。
「阪神とオリックスの優勝パレードの問題では、AERA dot.が詳しく報じていたように、税金が不当に使われた可能性がある。補助金は税金であり、3億円もの税金が、不透明な形で使われたとなれば大きな問題だ。刑事告発という疑念を招いているだけでも県政が停滞し、知事として進退にかかわる」
金融機関の寄付の実態について、県は企業や団体が寄付した受付日などは公開したものの、金額については情報公開でも「黒塗り」をして、明らかにしていない。
AERA dot.は、複数の関係者を取材し、寄付をした金融機関名とその寄付金額、寄付の受付日などの一覧を独自に入手した。それが添付の表だ。
■パレード終了後に12金融機関が寄付
この表によると、兵庫県内13の金融機関が、計2250万円の寄付をしているが、優勝パレードが行われた11月23日より前に寄付をしたのは2金融機関だけで、12機関はパレード終了後に寄付をしていることがわかる。
入手した一覧表を県幹部にも見せたところ、「この通りだ」と認めた。
また、大阪府で優勝パレードにかかわった職員に見せたところ、 「こちらで把握している兵庫県の金額と一覧表は同じです。大阪府も楽に寄付を集められたわけではないです。ただ、兵庫県のように優勝パレードの後の寄付というのはほとんどない」
と話した。
元県民局長の内部告発文書に「幹事社」と記されていた但陽信用金庫は、11月17日に50万円を寄付し、パレード後の28日にも再度250万円を寄付している。
この経緯について同信金に電話で問い合わせたところ、
「私、但陽信用金庫の理事長、桑田と申します。優勝パレードのこと、これ、あんた書いたんか」
と、記者に電話がかかってきた。但陽信金の桑田純一郎理事長だった。
先の優勝パレードの記事について意見を言いたかったようだ。記事は取材に基づいていることを説明し、改めて取材の意図を文書で送ると、担当者から回答があった。回答では、非公開だった300万円の寄付額を認めたうえで、次のように記している。
■片山副知事の依頼で追加の協賛
〈令和5年11月17日、兵庫・大阪連携「阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード実行委員会」から、優勝パレートの開催にかかる寄付・協賛についての依頼文書が添付されたメールが当金庫宛てに届き、当金庫は、同日中に、50万円の協賛申込みをいたしました。
その後の同月21日、片山副知事が当金庫本店を来訪され、パレードの資金が不足しているとのことで、あらためて協賛の依頼がありました。当金庫内にてあらためて検討し、同月22日に追加で250万円の協賛をすることで内諾し、同月28日に追加で250万円の協賛申込みをし、合計300万円の協賛をするに至った次第です〉
片山氏が訪問して依頼したことが寄付の増額につながったことは認めている。ただ、補助金の増額と寄付の関係については、
〈片山副知事が当金庫を来訪されパレードへの協賛依頼の際に、補助金のことは一切話題となっていない〉
との回答だった。
■いったん断ったが但陽信金の要請で寄付
他の金融機関にも取材した。
パレード終了後に300万円の高額の寄付をした尼崎信用金庫は、寄付をした経緯について、次のように説明した。
〈11月1日に兵庫県の産業労働部総務課から協賛(寄付)の依頼があり(略)、11月2日、「パレードの協賛について見送りさせていただきたい」と回答〉
〈パレード開催の直前(11月22日)に、但陽信用金庫から「兵庫県から優勝パレード開催の資金が不足しており、県下企業に対して強く要請があった。協賛(寄付)について検討してほしい」との電話があり、再検討の結果、「地域を盛り上げ、地域の皆さんに喜んでいただこう」との思いで協賛することにしました〉
一度は断った寄付を、但陽信金からの求めに応じて考えを変えたというのだが、実際の寄付の受付日は優勝パレードが終わった後の11月29日だった。
補助金との関係については、
〈パレードへの協賛と補助金は一切関係なく、また、斎藤知事や当時副知事であった片山氏、兵庫県から内部告発に書かれているような申し出はありません〉
と否定した。
次にやはりパレード後に300万円の寄付をした姫路信用金庫は、寄付の経緯について、
〈11月22日に 他信金から案内があり、地域金融機関として、地域の活性化に繋がるイベント趣旨に賛同し内諾致しました〉
と回答。
回答文では「他信金」となっていたが、電話で「但陽信金ではないか」と確認すると、そうだと認めた。
補助金と寄付との関係については、
〈補助金の増額によるキックバックとして協賛したという認識は全くありませんでした〉 とやはり否定した。
尼崎、姫路信金はいずれも、但陽信金から働きかけがあり、寄付を決断したという。このため、但陽信金に「幹事社」としての働きかけについて聞くと、担当者は、こう説明した。
「片山氏が11月22日に来られ、理事長と話をされました。『本来ならすべての金融機関にお願いにあがらねばならないが優勝パレードが明日なので時間がない』と依頼があり、他の金融機関のトップに理事長が連絡をとりました。幹事社といわれるとそうかもしれないが……」
■「パレード後の寄付は何のメリットもない」
これらの回答からわかるのは、寄付金の集まりが悪いため、片山副知事(当時)が但陽信金を訪問して寄付の増額を依頼し、但陽信金が他の金融機関のトップに直接働きかけて、寄付を集めたことだ。これは内部告発文書に書かれていた通りだ。ただ、内部告発にあった「補助金増額」との関係は、各信金とも否定した。
他に取材した金融機関も、寄付は認めたが、補助金との関係は否定した。
先の記事で証言をしてくれた金融機関幹部は、こう話していた。
「寄付すれば、パレードに使用する車にロゴが入るなど特典があるのですが、(パレードが終わってからの寄付なので)『何のメリットもない、カネを捨てる気なのか』と内部で声があがりました。いくら地域に根付く信金でも、終了したイベントが赤字で危ないと言われ、寄付するなんて聞いたことがない」
実際、阪神・オリックスの優勝パレードでは、寄付をした協賛企業の名前がバスや横断幕などに記されていた。それだけに、終了後の寄付には違和感がある。
尼崎信金と30年以上取引しているという預金者に寄付のことを説明すると、
「斎藤知事への内部告発で優勝パレードのことはおかしい、税金の不当な支出ではと感じていた。パレードが終わってから寄付するのって金融機関としてどうなのか。何か尼崎信金が得することありますか。優勝パレードは大阪と神戸で開催され、尼崎市は関係ない。300万円の寄付は地域のためとは思えない。寄付するより、預金者などに還元すべきだ」
と話した。
先に紹介した刑事告発状では、被告発人とされている斎藤知事と片山氏だけでなく、金融機関も「背任罪の共犯になりうる可能性」と記されている。各金融機関は補助金と寄付の関係を認めていないが、認めると斎藤知事らとともに刑事罰を受ける可能性も考えられ、真相を明かしにくい状況ではある。
■「兵庫県からくるカネの一部を寄付にまわせ」
改めて、先の記事で証言してくれた金融機関幹部に話を聞くと、やはり「補助金と寄付はセットだった」と言い、証拠として金融機関内部のメールやLINEを提供してくれた。それを見ると、金融機関の幹部たちが補助金と寄付との関係や、金額について生々しいやりとりをしていたことがわかる。
〈もう寄付と補助金で決まっているらしい。兵庫県からカネがくる、その一部を寄付にまわせという〉
〈たんよう(但陽信用金庫)は、最初は50(万円の寄付)を300(万円)に積み増した。(他の金融機関の)ハードルがあがった〉
〈うちも300か? 優勝パレードが終わっている。何の意味もなく、死に金だ。(警察や検察に)調べられたりして、ヤバくないだろうか?〉
この金融機関幹部はこう話す。
「うちは、AERA dot.で記事を書かれて以降、最高幹部以下がピリピリして焦っています。後ろ盾の片山氏が副知事を退任して逃げてしまった。斎藤知事は不信任となり、辞めざるをえないだろう。寄付したうちらが(事件で)やられるかもしれないなんてと、最高幹部はぼやいていた。危ない橋を斎藤知事らと渡ってしまった」
事件捜査は選挙などに影響を与えないように進められることが多い。斎藤知事が知事の職を完全に離れたとき、特捜部の捜査が加速するのだろうか?
(AERA dot.編集部・今西憲之)
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元稿:AERA dot. 主要ニュース 社会 【疑惑・地方自治・兵庫県・斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書問題で知事不信任決議が可決された事案】 2024年09月25日 07:32:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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