【金口木舌・12.07】:小さな小屋のこけら落とし
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・12.07】:小さな小屋のこけら落とし
やけに低い天井に、レトロなランプシェードの照明。壁には押し入れの名残も。那覇市三原の興行小屋「花園寄席」はもともと美容室兼民家。落語イベンターの知花園子さんが苦労の末に改装、開業した
▼11月のこけら落としの日。大衆演芸の殿堂「新宿末広亭」のバッグを抱えた落語ファンや、「前の雰囲気が残っているさ」と小屋内を指さす地元の人らですし詰めだ。振る舞いのサーターアンダギーが香ばしい
▼記念すべき最初の一席は柳家緑太さんの「牛ほめ」。少し間の抜けた子どもが、とんちんかんに新築の家をほめる話で、小屋の開業にはうってつけ。さすが真打ち昇進を控えた落語家。粋だ
▼柳亭市童さんも2題を披露。くるくると表情やしぐさを変えながら、多くの登場人物を演じ分ける。羽織を脱ぐ時のしゅるっというきぬ擦れさえ聞こえるほどの距離で、圧巻の話芸を堪能できる
▼客には「合図があったら鳴らして」とクラッカーが配られていた。しかし、合図が何かは不明。終演時、ぐだぐだの中でパンパンと鳴り、笑いと火薬の匂いが広がる。五感で落語を楽しめる小屋の歴史が始まった。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2024年12月07日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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