【社説①・12.28】:政府予算案 財政膨張繰り返すのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.28】:政府予算案 財政膨張繰り返すのか
来年度の政府予算案は一般会計歳出総額が115兆円超と当初ベースで過去最大となった。
円安や物価高などで法人税や消費税が増え、税収見込みは過去最高の78兆円。国債発行は17年ぶりに30兆円を下回るが、なお財源の4分の1を占める。
アベノミクスでは経済成長を掲げて財政が膨張し、コロナ禍後は巨額の補正予算も重ねた。
税収増は財政健全化にかじを切る契機だったが、結局バラマキ路線は踏襲されてしまった。
少子高齢化で避けられぬ社会保障費は過去最大の38兆円に達した。一方で所得税課税枠「年収の壁」引き上げなど国民は負担軽減を求める。予算規模の拡大一辺倒では行き詰まる。
自民1強時代と違い、政府案のままでの成立は不透明だ。不要な支出は抑え、修正も念頭に国会審議を深めてほしい。
石破茂政権は予算案が「賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現する」と位置づける。
とはいえ賃上げ促進は中小企業の生産性向上や従業員確保支援など先週成立した本年度補正予算と同じような項目も多い。
ここ数年乱発する補正予算では未消化も目立つ。効果を見極めぬままの継続は疑問が残る。
民間の賃上げを反映し、公務員や保育士の給与引き上げも盛り込む。公立学校教員に残業代の代わりに払う教職調整額も支給率アップを進めるが、来年度の上げ幅はわずか1%である。
一方で投資の柱とする人工知能(AI)、半導体関連は一般会計とは別にエネルギー特別会計などから支出する枠組みを決めた。千歳で先端半導体量産を目指すラピダス(東京)に対する1千億円出資もこの枠内だ。
一般会計への圧迫を避ける一方で事後評価の目は届きづらくなる。ラピダスには追加支援も想定され、透明性を確保せねば国民の不信を招きかねない。
5年間の強化計画3年目となる防衛費は当初ベースで初の8兆円台。トマホークミサイル取得1年前倒しなどを計上した。
円安で米国からの調達コスト増も問題視されるが、与党内には物価高で増額論もくすぶる。さらなる上乗せは許されない。
聖域化することなく、計画自体の必要性を与野党伯仲の国会で徹底して論議すべきだ。
政府は財政健全化の目標である国と地方の基礎的財政収支が来年度初めて黒字化する見込みと今年夏発表していた。
これ以上予算が肥大化すれば達成は危うい。来夏の参院選を控え与党から追加景気対策も求められようが、借金依存では次世代にツケを回すだけだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月28日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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