【社説②】:元徴用工問題 解決の機運逃さぬよう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:元徴用工問題 解決の機運逃さぬよう
日韓関係の焦点となっている元徴用工問題を巡り、岸田文雄首相と尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は十一月、三年ぶりの正式な首脳会談で、早期解決を図ることで一致した。
しかし、関係者を説得して解決策を絞り込むには、日韓両政府がさらに協力する必要がある。歴史的背景に加え、司法も絡む複雑な問題であり、解決の機運を逃さないよう双方が努力を続けたい。
元徴用工問題を巡る日韓対立は韓国大法院(最高裁)が二〇一八年、日本企業に被害者への賠償を命じたことがきっかけだ。
韓国外務省は司法判断を尊重しつつ、関係者から意見聴取するなどして解決策を検討中という。
有力視されている解決策は、既存の財団が日本企業の賠償を肩代わりする「併存的債務引き受け」という方法。この場合、原告の同意は必要ないとされるが、原告側は日本企業に財団への出資と謝罪を求めている。
これに対し、日本企業側は応じる姿勢を見せておらず、日本政府も、元徴用工問題は一九六五年の日韓請求権協定で決着済みとの立場を崩していない。韓国側が解決策を示すべきだとの主張だ。
ただ、原告の元徴用工は高齢化しているうえ、日韓を取り巻く国際情勢は、日韓対立がこれ以上、続くことを許さない状況だ。
北朝鮮は、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含むミサイル発射を異例の頻度で続け、近く核実験を行うとの観測もある。海洋進出の動きを強める中国の習近平国家主席は、武力による台湾統一の選択肢を放棄していない。
日韓関係の強化がこれまでになく求められる局面だ。日韓関係の基礎となっている九八年の「日韓パートナーシップ宣言」の精神をいま一度、再確認してほしい。
韓国政府が日本側に望むのは、原告を説得する上で、日本政府が問題解決に積極的に協力する「誠意ある呼応」だという。
尹大統領は低支持率に悩んでいるものの、日本との関係改善には強い意欲を示し続けている。日本政府はこの機をとらえ、懸案解決へ大きく踏み出すべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年12月13日 07:58:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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