【社説・11.13】:COP29開幕 温暖化防止、改めて決意を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.13】:COP29開幕 温暖化防止、改めて決意を
日本列島は11月半ばなのに汗ばむ陽気の日がある。南の海は今なお台風ラッシュだ。ことしは能登半島を含め、世界中で異常気象による豪雨や猛暑、干ばつが多発した。
その状況下で、190以上の国・地域の代表が集う国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が、アゼルバイジャンで開幕した。温暖化対策の具体論を深める場でありたいが、国際協調の行方に暗雲が垂れ込める。
化石燃料の活用を公言し、温暖化対策に否定的なトランプ氏が、米大統領選で復活当選したからだ。国際枠組みの「パリ協定」から1期目に続いて離脱する準備に入ったと伝えられる。世界2位の温室効果ガス排出国が抜ければ世界の機運の低下は明らかだ。協定に復帰した米バイデン政権と曲がりなりにも協調してきた排出量1位の中国のやる気も損なわれかねない。
逆風はほかにもある。脱炭素化をリードする欧米諸国の選挙で右派が勢力を伸ばし、温暖化対策の後退が懸念されている。地球規模の環境などどうなっても構わないとする発想が先進国にもはびこるのは当然、看過できない。
だからこそ気候変動に立ち向かう国際社会の決意を改めて示したい。温暖化で何が起きるのか。全ての国と地域が科学的な根拠を基に、議論を仕切り直すべきだろう。
COP29に合わせ、世界気象機関(WMO)が公開した分析はそれだけ衝撃的だ。1~9月のデータを見ると2024年の世界平均気温が観測史上最高となり、温暖化指標の産業革命前と比べ、1・54度高い見通しという。
9年前に合意されたパリ協定は将来目標として上昇幅を「1・5度以下」と定めた。その上限を初めて突破するのは深刻な事態に違いない。さらには23年分の世界の温室効果ガス排出量が過去最高だったとする推定もある。手をこまねいていいはずはない。
ことしの会議はただでさえ難航が予想される。途上国の再生可能エネルギー拡大などに対する資金援助の新たな目標の設定が焦点のようだ。現状の目標、年1千億ドル(約15兆円)から10倍以上に引き上げてほしいと途上国側は主張し、先進国は難色を示す。新興国の中国やインドなどにも出させるべきだとする声も強いが、仮に米国が協定を離脱すれば、この枠組みについても一段と迷走しかねない。
それでも各国は来年2月までに、35年以降の新たな削減目標を国連に提出しなければならない。この会議に臨む姿勢で本気度が問われよう。
日本はどうか。毎年の会議のたびに環境団体に火力発電への依存を指弾され、旗色が良くない。今回は再生エネ拡大に向け、エネルギー貯蔵量の6倍増を目指す「有志国誓約」に加わることを打ち出すという。前向きな話とはいえ小手先の印象は拭えない。
世界が求める再生エネ拡大に日本がもっと強く貢献し、国際世論の形成で先頭に立つ姿勢を出せないか。同盟国としてトランプ氏に直談判し、離脱を思いとどまらせるぐらいの気構えもあっていい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月13日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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