【社説①】:改正入管法成立 長期収容の弊害を放置するな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:改正入管法成立 長期収容の弊害を放置するな
入国管理施設での長期収容は、外国人の人権侵害につながりかねない。政府は改正法を適切に運用し、入管行政の信頼を高める必要がある。
改正出入国管理・難民認定法が成立した。国外退去処分となった外国人が長期間、収容されている現状を改めるものだ。
不法残留や罪を犯した外国人は原則、本国に送還される。だが、家族が日本にいるといった理由で帰国を拒む人もいる。こうした「送還忌避者」は昨年末時点で4200人余に上っている。
送還忌避者の中には、難民認定の申請を繰り返す人が少なくなかった。申請中であれば、強制送還されないという規定があったためで、これが入管施設での長期収容の一因となっていた。
改正法は、難民認定の申請は原則2回までとし、3回目以降は、申請手続き中でも強制送還できるようにした。送還を免れようという人が、難民認定の仕組みを乱用するのを防ぐため、一定の歯止めをかけるのは妥当だろう。
改正法はまた、出入国在留管理庁が認めた監理人による監督を条件に、収容施設を出て生活できるようにする制度も導入した。
外国人の人権にも配慮し、生活環境を改善することは大切だ。
送還を拒む人の中には、日本で生まれ育った子供もいる。逃亡や再犯の恐れがない場合には、家族が離ればなれにならないで済む何らかの措置を検討してほしい。
一昨年には、名古屋市の施設で収容中のスリランカ人女性が死亡し、日本の入管行政には国内外から厳しい視線が注がれている。
入管庁は、収容者の健康に目配りすることが不可欠だ。医療体制も充実させる必要がある。
政府は近年、送還忌避者であっても、病気などの場合は一時的に収容を解く「仮放免」を柔軟に認めてきた。だが、仮放免後に逃亡するケースが増え続け、昨年末には約1400人に上っている。
逃亡した人の中には、窃盗や傷害事件で懲役刑を受けた外国人もいる。長期収容を解消するためとはいえ、いたずらに仮放免を認めるのは問題があろう。入管庁は逃亡を防ぐ手段を講じるべきだ。
今回の法改正で、政府はウクライナからの避難民を念頭に、「補完的保護対象者」の制度を創設した。健康保険への加入を認めるなど、難民に準じた支援を行う。
日本はかねて、難民の受け入れ数が少ないと言われてきた。救済すべき人を確実に保護していくことが望まれる。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月10日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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