【社説②】:技能実習廃止 外国人の就労環境を改善せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:技能実習廃止 外国人の就労環境を改善せよ
外国人材を受け入れる制度を大きく改めることになる。国際的に人材獲得競争が激しくなる中、外国人の就労環境を改善し、「選ばれる日本」にしていくことが大切だ。
政府は、技能実習制度に代わる新たな仕組みとして、3年間の就労を認める「育成就労制度」を創設することを決めた。今国会での法改正を目指し、受け入れ態勢を整えたうえで導入する方針だ。
約30年前に始まった技能実習制度は、日本で習得した技術を帰国後に生かしてもらうという「国際貢献」を目的に掲げてきたが、実際は労働力を確保するための手段となってきた。
労働者の権利を守る仕組みも不十分で、長時間労働や賃金の不払いなどの問題が相次いだ。実習生の失踪も後を絶たなかった。
新たに設ける育成就労は、「人材の確保と育成」を掲げ、人手不足を補う目的を明確にした。技能の有無を問わずに外国人を労働力として受け入れるという点で、大きな政策転換と言える。
新制度では、1~2年間働けば、同じ業種での転職を認める。技能実習では、本人の希望による転職は原則禁じられていた。
自由に職場を選べず、厳しい環境から逃れられないことは、失踪の大きな要因となっていた。外国人が自らの意思で、勤務先などを選べるようにするのは当然だ。
転職を制限する期間を巡り、政府は1年とする方針だったが、自民党から「地方から都市へ人材が移ってしまう」といった声が出たため、2年まで幅を持たせた。雇い主が転職を認めない場合、昇給などの待遇改善を図るべきだ。
新制度はまた、高度な技能を持つ人に認めている在留資格「特定技能」に 繋 がる仕組みとする。
育成就労で受け入れる分野を、特定技能と同じ建設業、農業、宿泊業などに合わせる。試験に合格すれば特定技能に移行し、より長く働くことができる。
日本の生産年齢人口は先細りしており、今後も深刻な人手不足が見込まれている。有為な人材を確保するには、これまでのように外国人を安価な労働力とみなす発想は改めねばならない。
技能実習制度では、外国人が送り出し機関に多額の手数料を支払い、借金を背負って来日する事例が多かった。受け入れ企業を監督すべき国内の監理団体が機能していないとの指摘もあった。
新たな制度を作るだけでなく、こうした問題を一つ一つ解決していくことが重要だ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月10日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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