《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い
憲法13条は、国民がそれぞれの価値観に基づいて「幸福」を求めることを、公共の福祉に反しない限り尊重して、国はその条件を整える責務があると規定している。
同性婚を法的に認めないのは、この幸福追求権を侵害すると初めて認めた画期的な判決だ。福岡市と熊本市の同性カップル3組が、国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁が法規定は憲法13条に違反すると認定した。
「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」とした上で、「婚姻の成立と維持について、法的な保護を受ける権利を等しく有している」と判断している。
さらに法の下の平等を定めた14条と、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた24条2項にも違反するとした。
全国の5地裁に起こされた計6件の同種の訴訟で、これまでに出された3件の高裁判決は、全て違憲と判断したことになる。地裁判決は違憲が2件、違憲状態が3件だ。唯一合憲とした大阪地裁も、現状を放置すれば将来は違憲となる可能性を指摘している。
福岡高裁は今回の判決で「婚姻は当事者の自由な意思に完全に委ねられる」として、「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」とも述べた。司法の違憲判断は定着したといえる。
弁護団は声明で「(13条に対する違憲判断で)全国で主張してきた全ての憲法上の論点について、裁判所から違憲と認める判断が出たことになる」と評価した。
林芳正官房長官は記者会見で、「確定前の判決だ」として静観する姿勢を示しただけだ。ただ、石破茂首相は5日の衆院予算委員会で「(同性婚が認められないことで苦しむ人たちの)声を傍観することはしない」と述べている。法制化をしないことは、もはや政府と国会の怠慢である。早急に法改正を進めることを求める。
今回の福岡高裁の判決は、法整備のあり方にも言及し、異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ「法の下の平等」違反の状態は解消しないと強調した。
これまでの判決では、同性婚を法的に認めないのは違憲とした上で、方向性としてパートナーシップ制度など「婚姻に類する制度」を例示した地裁もあっただけに、福岡高裁判決の意義は大きい。
異性婚と別の制度で同性婚を法制化しても、新たな差別を生み出すだけである。政府、国会は今回の判決を重く受け止めるべきだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月14日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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