場当たり的に重要閣僚やスタッフを人選し、能力よりも自分への忠誠心を重視して人を入れ替える超大国の指導者の姿勢は極めて問題だ。国際協調派で穏健なティラーソン氏が去ったことで、先行きの危うさは増すばかり。「米国第一」を掲げるトランプ氏が独善的な外交を一層進め、国際社会の混乱に拍車がかかる懸念が募る。
ティラーソン氏は米石油大手のトップから就任した。政権内では、過激な発言を繰り返すトランプ氏をいさめ、北朝鮮問題では一貫して対話による外交解決を主張。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」離脱に反対し、イラン核合意の維持も唱えてきた。
後任に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は保守強硬派として知られる。北朝鮮やイランに厳しい姿勢をみせ、トランプ氏が「思考プロセスが似ている」と評価した人物だ。イラン核合意の維持も見通せなくなった。「歯止め役」を失った政権が、強硬路線を加速させることを強く危惧する。
気がかりなのは、難航が予想される米朝首脳会談だ。国務省の北朝鮮担当特別代表が辞め、駐韓国大使も空席が続く。このような状況で会談への下交渉が順調に進むとは思えない。準備不足のまま会談に臨めば後手に回りかねない。不調に終わった場合、ポンペオ氏が軍事力行使に傾くのではないかとの不安は募る。朝鮮半島の非核化実現に向け、トランプ氏は早急に外交戦略を練り直し、態勢を立て直すべきだ。
政権では閣僚や高官の辞任、解任が相次いでいる。大統領首席補佐官や厚生長官、報道官らに続いて、今月は鉄鋼輸入制限に反対していたコーン国家経済会議委員長が辞任した。最近はトランプ氏の腹心の起用が目立ち、保護主義者や軍事タカ派、キリスト教右派が政権内で力を握っている。「素人集団」の様相は強まる一途。中枢を支える多くの政府機関の高官ポストも埋まっていない。米政府の機能低下が、世界に及ぼす影響の深刻さを自覚せねばならない。
鉄鋼輸入制限でみられるように、自国の利益を優先するトランプ外交は日本や同盟国との関係を軽視する傾向を強めていると映る。安倍晋三首相は米国と「完全に一致」と繰り返すが、このままでは外交や貿易政策で不意打ちを食らい、国益が損なわれかねない。4月の日米首脳会談では、国際社会の不安と困惑を直言し、協調路線に戻るよう働き掛けねばなるまい。トランプ氏との親密な関係を自負する首相には、その責任がある。
読売 米国務長官解任/対「北」交渉の準備を加速せよ 2018/3/15
米朝首脳会談の準備に入る段階での突然の人事である。米政府は影響を最小限に抑え、北朝鮮との実務交渉をはじめ、外交を円滑に進める態勢を整えねばならない。
トランプ大統領がティラーソン国務長官を解任し、後任にポンペオ中央情報局(CIA)長官を起用すると発表した。「物の見方や考え方が違った」と強調した。
ティラーソン氏との不和は昨年から表面化し、解任説が何度も流れていた。意に沿わない閣僚をとどめて、混乱が拡大する事態を避けたかったのだろう。
北朝鮮政策を巡り、軍事的圧力と経済制裁強化に重点を置くトランプ氏と、無条件での対話を模索するティラーソン氏の溝は際立っていた。米朝首脳会談の受諾方針も、ティラーソン氏には事前に知らされていなかったという。
経済界出身のティラーソン氏は確固たる外交哲学を示せず、トランプ氏からも、キャリア外交官からも、信頼を得られなかった。
外交・安全保障政策がホワイトハウス主導で進められ、国務省の影が薄かった点を踏まえれば、国務長官の交代が及ぼす影響は限定的だと言えよう。
ポンペオ氏は上院の承認を経て4月以降に就任する。保守強硬派でトランプ氏の信任を得ている。CIAの北朝鮮情報に接してきた強みもある。マティス国防長官らと共に、大統領と一致した外交安保戦略を構築してもらいたい。
気がかりなのは、米朝首脳会談への道筋が見えないことだ。トランプ氏は、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の要請を受け、5月までの会談実施に応じたが、場所や日時、議題の設定など、事前に調整すべき課題は山積している。
北朝鮮の核・ミサイル放棄に向けて、どんな具体的措置を要求するのか。見返りとして在韓米軍の撤退や縮小、経済支援などを求められた場合、どう対処するのか。首脳会談でトランプ氏の判断に全て委ねるのはリスクがある。
ポンペオ氏は、北朝鮮との事前協議の準備を加速させ、交渉責任者の役割を果たさねばならない。駐韓大使や北朝鮮担当特別代表など、空席となっている高官ポストを早期に埋めるよう、トランプ氏に働きかけることも重要だ。
河野外相は近く訪米する。トランプ政権幹部と会談し、戦略の擦り合わせを急ぐ必要がある。
米朝協議が決裂し、朝鮮半島情勢が緊迫化する可能性は消えていない。安倍政権はあらゆる事態に備えることが求められる。(引用ここまで)
産経 国務長官の解任/米外交への信頼取り戻せ 2018/3/15
トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任し、ポンペオ中央情報局(CIA)長官を後任にあてると発表した。
国務長官は米政権の最重要閣僚で、国際秩序を担う存在といえる。就任1年余での更迭は異例の事態である。
「外交の空白」が生じれば国際的信用が損なわれ、米国の地位低下につながりかねない。おりしも、5月には米朝首脳会談の開催が見込まれ、北朝鮮の核問題は重大な局面を迎えようとしている。
円滑に新体制に移行し、立て直しを図ってもらいたい。
政権発足後、北朝鮮との対話を模索していたティラーソン氏をトランプ氏が「時間の無駄」と批判するなど、両者の意見の食い違いはしばしばみられた。米外交が揺らいでいる印象を与え、日本を含む同盟国は判断に苦しんだ。
米国がもたつく間に中国やロシアが攻勢に出て、身勝手な振る舞いを増長させる要因ともなっていた。進退問題がいつ決着するのかと、関心を集めていたのも事実である。
ティラーソン長官の下、国務省の主要ポストが埋まらず、最強の外交機関といわれながら機能を果たせていなかった面もある。体制強化が急がれる。
北朝鮮の非核化に向けた交渉準備が当面の最重要課題といえる。トランプ氏は限られた時間の中で、外交チームの刷新と外交戦略の明確化を図るべきだ。
ポンペオ氏はCIA長官として北朝鮮問題を重視し、核・ミサイルに対応する専門の組織を新設した。米朝首脳会談の調整を水面下で進めたともいわれる。
北朝鮮との直接交渉という、重大かつ困難な役割を任される。過去の米朝交渉は不首尾に終わってきた。首脳会談に応じることを決断したトランプ氏の下で、北朝鮮の真意を見極めるのが仕事だ。
日本政府も、新チームの行方を注視しながら、日米間の意見調整を急がなければならない。中国の海洋進出なども視野に、同盟の重要性を改めて確認し、米国のアジア重視姿勢を引き出すことが大事である。ティラーソン氏ら国際協調派が遠ざけられ、「米国第一」の名の下で極端な政策が加速することを危惧する。貿易政策も含め、安倍晋三首相はより率直な助言を行っていく必要がある。(引用ここまで)
朝日 国務長官解任/不安募る米外交の混迷 2018/3/15
…国際社会は国連など、あらゆるチャンネルを通じて米政府に国際協調の価値を訴え続けるべきだろう。とりわけ米国との同盟国である日本や欧州諸国には、信頼と安定の外交をトランプ政権に求める説得に動いてもらいたい。
毎日 トランプ氏が国務長官解任/外交の揺れは危機を招く 2018/3/15
なぜこの時期に、と首をかしげざるを得ない。トランプ米大統領は就任1年余りのティラーソン国務長官の解任を電撃的に発表した。 両者の不仲は周知の事実とはいえ、長官のアフリカ歴訪中に大統領がツイッターで解任を発表するのは明らかに異常である。 これに関連して、長官は解任理由を知らされていないとの声明を出した国務次官も解任された。強権政治を思わせる人事である。
トランプ氏が米朝首脳会談の提案に応じる重大決定を下したのも長官のアフリカ歴訪中だ。これも長官の頭越しだった。
北朝鮮への対応やイラン核合意などでティラーソン氏とは意見が異なり、後任に指名したポンペオ中央情報局(CIA)長官は「私と似た考えを持つ」。トランプ氏は新たな体制についてそう説明している。
しかし、政治経験のないティラーソン氏をあえて実業界から国務長官に迎えたのはトランプ氏だ。ロシアでの経済活動の経験が豊富なティラーソン氏の起用は対露関係改善に有益と見たからだろう。
ティラーソン氏の海外での評判は悪くない。国務省を代表して発言し、時にトランプ氏をいさめる役回りを演じた。そんな彼が重荷になってきたのは、むしろトランプ氏に責任があるのではなかろうか。
国務省は軍備拡張のために外交予算を削られ、士気の低下が指摘される。2月にはナンバー3の別の国務次官が辞任を表明し、多くの重要ポストが空席のままになっている。
危機的な状況と言えるが、米外交の最大の問題は、異論に耳を傾けず、異を唱える者は排斥するトランプ氏の姿勢にあるのではないか。
ポンペオ氏は北朝鮮などに対し前任者より強硬な政策を打ち出すだろう。CIAの後任長官には女性のハスペル副長官が昇格する。が、トランプ氏の姿勢が変わらない限り2人の前途も明るいとは言えまい。
米外交の揺らぎは危機を招く。近く河野太郎外相を訪米させ北朝鮮問題で意見調整を図りたい日本にとっても大きな損失になりかねない。 トランプ政権は国務省が積み重ねた知見を生かして早く外交の安定を図り、万全の態勢で米朝首脳会談などの重要課題に臨んでほしい。(引用ここまで)
日経 国際協調派が去った米政権が心配だ 2018/3/15
トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任した。コーン国家経済会議委員長に続く国際協調派の退場により、政権は「米国第一」への傾斜をいままで以上に強めるに違いない。どうすれば世界の安定を取り戻せるのか。日本をはじめとする主要国は手を携え、「自由と市場経済」の旗を高く掲げる必要がある。…ほかにも政権幹部の入れ替えは日常茶飯事である。発足1年でホワイトハウスの主要ポストの過半数が交代した政権は初めてだ。さらに政権の要であるケリー首席補佐官、外交政策を差配するマクマスター国家安全保障担当補佐官にも更迭説が流れている。5月末までに開くと発表した米朝首脳会談が本当にできるのかさえ、危ぶむ向きがある。ドタバタ劇の背景にあるのは、11月に迫った中間選挙へのトランプ氏の危機感だ。連邦議会の下院は大統領の弾劾開始を決める権限を持つ。与党・共和党が過半数を維持できるかどうかは政権の先行きを大きく左右する。13日にペンシルベニア州であった下院補欠選挙は、共和党の金城湯池にもかかわらず大接戦になった。トランプ氏は政権維持のため、白人貧困層に受けがよい保護貿易や孤立外交の色彩を一段と強めていくことだろう。このままでは世界は弱肉強食の時代に逆戻りしかねない。主要国はこうしたトランプ流外交に一致団結してノーを突きつけるべきだ。不当な関税に関しては世界貿易機関(WTO)への提訴という手もある。トランプ政権は安全保障と絡めて国によってはお目こぼしする可能性をほのめかしている。「適用除外」を受けられるかどうかにかかわらず、日本はWTO違反には断固した姿勢で対処し、ルールにもとづいた世界経済の発展に汗をかかなくてはならない。(引用ここまで)
北海道 米国務長官解任/外交の迷走を懸念する 2018/3/15
…政権発足から約1年で要人の解任が続くのは異常である。他にも辞任や更迭がささやかれている。ティラーソン氏の後任に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は保守強硬派として知られ、トランプ氏が「(自分と)思考回路が似ている」という人物だ。米朝首脳会談が不調に終わった場合、武力行使を含めた強硬姿勢に傾く可能性がある。そうならぬよう、しっかりと戦略を練り上げて会談に臨んでもらいたい。河野太郎外相は信頼関係を築いてきたティラーソン氏の解任について「非常に残念だ」と語った。トランプ政権が独り善がりの姿勢を強めるようであれば、日本政府が軌道修正を促すことも求められる。
東奥日報 「自国第一」に懸念一段と/米国務長官解任 2018/3/16
…トランプ米大統領がティラーソン国務長官を解任した。政権内の国際協調派の力を決定的にそぐことになり、外交面で自国第一主義と軍事タカ派の影響力が拡大しそうだ。国際協調派の衰退により、鉄鋼・アルミニウムの高関税導入や突然の米朝首脳会談の発表で明らかな同盟国・日本軽視の傾向も強まりそうだ。日本はトランプ政権の米国第一主義や保護主義を一層警戒し、他の主要国との関係を構築するなどの手を打たないと、米国からの不意打ちのような外交や貿易政策を招き、国益を損なう懸念がある。…
茨城 米国務長官解任/米国リスクに備えよ 2018/3/15
…首脳会談の開催で合意した米朝関係は難航が予想されている。トランプ氏が激情に駆られて軍事圧力に突然かじを切ったり、手柄を焦って非核化に結び付かない合意で満足したりする恐れがある。北朝鮮との交渉実務を担う特別代表も最近辞任し、次期駐韓大使候補も政権内で検討された限定攻撃論に反対して身を引いてしまい、態勢が弱い。…トランプ政権では閣僚や補佐官の解任が続いており、トランプ氏は能力よりも忠誠心を重視して、今後も解任をためらわない姿勢だ。政権の弱体化は避けられない。日本はトランプ政権の米国第一主義や保護主義を一層警戒し、他の主要国との関係を構築するなどの手を打っておかないと、米国からの不意打ちのような外交や貿易政策を招き、国益を損なう懸念が強い。トランプ氏はティラーソン氏本人に知らせないまま、ツイッターで解任を公表した。この非情さは、同盟国にも向けられると覚悟すべきだ。
信濃毎日 国務長官解任/米外交の混迷が一段と 2018/3/15
外交経験が乏しい保守強硬派で核合意の破棄、金正恩朝鮮労働党委員長の排除が持論と言われている。米国の識者には外交の一貫性を期待する向きがあるが、つまりは、歯止め役がいなくなるということだろう。北朝鮮にすれば、核・ミサイル開発を続けるのも、米国との直接交渉を求めるのも、体制の維持が最大の理由のはずだ。加えて米国務省では今月、北朝鮮担当特別代表が辞任したばかり。政治担当の国務次官も辞任を表明している。駐韓国大使も決まっていない。このような状況で米朝会談への下交渉が順調に進むのか、懸念される。米政権の今後の方針次第では、中東の混乱に拍車がかかることになりかねない。このところ、イランがシリア国内に軍事基地を建設し、イスラエルとの対決色を強めているのは、米国に核合意破棄を思いとどまらせるため、との見方がある。トランプ大統領が昨年12月、エルサレムをイスラエルの首都と認定した際に宣言した、中東和平への“新たなアプローチ”も何ら具体化されていない。弱さは紛争につながる。比類なき力こそが確実な防衛手段になる―。トランプ大統領は1月の一般教書演説で訴えていた。自説に固執して政権内の異論を押しつぶし、あくまで多国間主義に背を向けるなら、国際社会の対米不信は決定的になる。(3月15日)
新潟日報 国務長官解任 米外交の暴走を危惧する 03/16
…高官の相次ぐ交代は、政策の継続性を阻害する大きな要因になりかねない。トランプ政権の外交政策は、国際社会にさまざまな懸念を与えている。日本にとって大切なのは、米政権内の混乱に振り回されないよう、しっかりと対応していくことだ。河野太郎外相は近く米閣僚と会談することになっている。米朝首脳会談を前に、北朝鮮に対する日本の立場と主張を、改めて米側に理解してもらう必要がある。対北朝鮮外交では日米韓の緊密な連携が欠かせない。ただ、このところのめまぐるしい展開の中で、日本だけが蚊帳の外に置かれている印象も否めない。4月には日米首脳会談が予定されている。安倍晋三首相はトランプ氏に日本が核・ミサイル問題と共に拉致問題を最重視していることを重ねて強調し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に訴えてもらうよう促さねばならない。
富山 米国務長官解任/トランプ外交に危うさ 2018/3/16
…直情的、直感的に動く傾向のあるトランプ氏らしい大胆さとも言えるが、国務省の意向に縛られないトランプ氏の外交手法は危うくもあり、日本としては、首脳同士の意思疎通を徹底し、真意をつかんでおくことがますます重要になる。4月にトランプ氏と会談予定の安倍晋三首相は、北朝鮮の完全非核化の意思表示と具体的行動が不可欠なことを確認し、北朝鮮に対して中途半端な妥協をしないよう念押しする必要がある。…米朝首脳会談に応じるトランプ氏の判断は、ティラーソン氏の対話路線に沿う形ながら、軍事力の行使を辞さぬ圧力外交に積極的な大統領と対話重視の国務長官の見解の差は埋め難かったようだ。新国務長官に指名されたポンペオ中央情報局(CIA)長官は、トランプ氏の考え方に近いとされ、その点でトランプ外交の一貫性が保たれると評価することもできる。トランプ氏は、困難な米朝協議を支える政府全体の体制構築に全力を挙げてもらいたい。
京都新聞 米国務長官解任/外交の継続性問われる 2018/3/15
トランプ政権は、大統領を中枢で支えるスタッフ間の内部対立が深まっており、高官の辞任が相次いでいる。そんな中でのティラーソン氏の解任は、各国との外交の継続性に影響を及ぼしかねない。国務省では先ごろ、ティラーソン氏と二人三脚で北朝鮮との対話を模索してきたジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が辞任した。ホワイトハウスの意向で思うように政策が進められないことが背景にあるとも指摘されている。指名が内定していた駐韓大使の人事も覆った。混乱が表面化している。こんな状態では、米国と外交上の重要な約束ができるのか、各国に不信感を抱かれても仕方ないだろう。米外交の信用が問われる事態である。安倍晋三首相はトランプ氏との蜜月ぶりを強調してきたが、米政府内の混乱に巻き込まれることは避けたい。冷静な視点を持って対応することが必要だ。
山陰中央新報 米国務長官解任/不意打ちリスクに備えよ 2018/3/16
…首脳会談の開催で合意した米朝関係は難航が予想されている。トランプ氏が激情に駆られて軍事圧力に突然かじを切ったり、手柄を焦って非核化に結び付かない合意で満足したりする恐れがある。北朝鮮との交渉実務を担う特別代表も最近辞任し、次期駐韓大使候補も政権内で検討された限定攻撃論に反対して身を引いてしまい、態勢が弱い。…トランプ政権では閣僚や補佐官の解任が続いている。トランプ氏は能力よりも忠誠心を重視し、今後も解任をためらわない姿勢だ。
日本はトランプ政権の米国第一主義や保護主義を一層警戒し、他の主要国との関係を構築するなどの手を打っておかないと、米国からの不意打ちのような外交や貿易政策で国益を損なう懸念がある。トランプ氏はティラーソン氏本人に知らせないままツイッターで解任を公表した。この非情さは、同盟国にも向けられると覚悟すべきだ。
中國新聞 米国務長官解任/外交の混迷を憂慮する 2018/3/18
北朝鮮への対応では、トランプ氏が「米国第一」を掲げ、攻撃的な言動を繰り返す中、一貫して対話による外交解決を訴えた。イランとの核合意についても、破棄を目指すトランプ氏に対し、同盟国や関係国の意向を受け止め、合意の維持を強く唱えてきた。意見の異なる「歯止め役」がいなくなったことで、トランプ氏がますます自国第一主義への傾斜を強めないか心配だ。北朝鮮対応や通商政策を巡り、日本にとっても国益を損なうリスク要因になりかねない。後任に指名されるポンペオ中央情報局(CIA)長官は、北朝鮮やイランに厳しい姿勢を取る保守強硬派として知られる。トランプ氏は「(自分と)思考回路が似ている」と評した。
それだけに米朝首脳会談が不調に終わった場合、軍事力行使に踏み切る可能性も指摘されている。イラン核合意も維持されるかどうか見通せなくなった。不透明さを増す米国の外交政策が、国際社会にとって深刻な懸念材料になりつつある。
発足1年余りにもかかわらず、トランプ政権では閣僚や高官の辞任、解任が相次ぐ。今月に入って経済政策を仕切ってきたコーン国家経済会議委員長も辞めている。ティラーソン氏とともに国際協調派とされ、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限に強く反対したが、トランプ氏に受け入れられなかった。ほかにも安全保障担当のマクマスター大統領補佐官や、政権の要であるケリー大統領首席補佐官にも更迭説が流れている。
トランプ氏は閣僚やスタッフの人選で、能力よりも自分への忠誠心を重視するといわれる。異論を唱える人物を排除する姿勢こそ最大の問題だ。日常茶飯事のように、政権を支える主要ポストの「首」がすげ替わっていること自体、正常でない。
気掛かりなのは、難航が予想される米朝首脳会談である。今回の混乱もあって国務省では、北朝鮮担当特別代表や駐韓国大使などのポストが空席のままだ。準備不足のまま会談に臨むのは極めて危うい。朝鮮半島の非核化への一歩となるよう態勢を立て直すべきだ。
4月には日米首脳会談が予定されている。安倍晋三首相はトランプ氏との親密な関係をアピールしてきたが、米政権の混乱に巻き込まれないことが肝要だ。米外交の方向性を冷静に見極め、対応する必要がある。(引用ここまで)
徳島新聞 米国務長官解任 外交の混乱が招くものは 2018/3/18
・・・・国務省では、幹部の辞任や解任が相次いでいるのも懸念材料だ。ユン北朝鮮担当特別代表が辞任し、シャノン次官も辞意を表明した。駐韓国大使も空席が続いている。外交当局がそんな状態で大丈夫なのだろうか。しかも、ティラーソン氏は政権の暴走の監視役も務めてきたが、ポンペオ氏にはその役割は期待できそうにない。次々に高官を追放していくトランプ流の政権運営には、日本政府も戸惑いを隠せないでいる。安倍晋三首相は4月上旬にも訪米し、トランプ氏と首脳会談を行う。米朝会談に向けて、安全保障や拉致問題に関する日本の立場もいま一度、訴えておくことが大事だ。
高知新聞 米国務長官解任/外交混乱を強く懸念する 2018/3/16
…危惧するのは、トランプ氏を補佐する上でどういった関わり方をするのかだ。外交の基本は、相手国との対話の積み重ねによる信頼関係と継続性である。強気一辺倒のトランプ氏と同じ考え方で対処するなら、混乱を深める恐れがある。トランプ政権では、政府高官の辞任・解任が相次ぐ。外交を巡りホワイトハウスとの主導権争いが続く国務省は、人材流出が続いている。外交に一貫性を欠けば、各国との信頼関係を損ないかねない。国務省は、幹部や重要国大使など空席の主要ポストがいまだに多く残る。内定していた駐韓国大使の人事案も白紙になった。この状況で各国からの信頼を維持できようか。米外交の混乱が、国際社会に影響を及ぼす重さをトランプ氏は考慮する必要がある。空席の高官人事と合わせ、早急に態勢を立て直し安定させなければならない。日本は北朝鮮による拉致問題の解決を図るため、河野外相が訪米し米朝首脳会談での提起を要請する考えだ。米外交の方向を冷静に見極めて意思疎通を重ねたい。
西日本 米国務長官解任/大事の前に混乱では困る 2018/3/15
…トランプ政権では閣僚や高官の辞任、解任が相次いでいる。発足1年余りで大統領首席補佐官、厚生長官、報道官などが政権を去った。3月に入ってもコーン国家経済会議委員長が辞意を表明した。混乱ぶりは隠しようもない。トランプ氏は閣僚や側近スタッフの人選で、自分への忠誠心を最重視するといわれる。結果的にイエスマンや素人の集団で政権運営する危険に陥るのではないか。ティラーソン氏の後任となるポンペオ中央情報局(CIA)長官は北朝鮮やイランへの厳しい姿勢で知られ、外交観はトランプ氏に近いという。「歯止め役」を失ったトランプ政権が強硬路線を加速させる可能性は大きい。政権混乱のあおりで、国務省の北朝鮮担当特別代表、駐韓大使など対北朝鮮外交の主要ポストが空席になっている。こうした状態で首脳会談の準備はできるのか。トランプ氏が早期に政権の混乱を収束させ、外交戦略を立て直さなければ、肝心の米朝首脳会談で後手に回ることになりかねない。
熊本日日 国務長官解任/「米国リスク」に備え必要だ 2018/3/16
トランプ氏は今後も解任をためらわない姿勢を示している。「素人集団になってきた」との指摘もあり、このままでは政権の弱体化が進む懸念もある。同盟国も深刻にとらえるべきだろう。日本としてはトランプ政権の米国第一主義や保護主義の動きに一層、警戒する必要がある。先日、鉄鋼やアルミニウムに高関税措置を導入すると発表したように、今後も不意打ちの政策に振り回されることもあり得よう。日本軽視の傾向が強まれば、米国追従の姿勢だけで国益を守ることは難しい。他の主要国との連携を密にし、「米国リスク」に備えておく必要があろう。
南日本新聞 国務長官解任/米外交の混乱に拍車か 2018/3/15
…仮に外交努力が失敗に終わった場合、軍事力行使も辞さないと考える可能性もある。だが、軍事力行使は甚大な犠牲を伴うことが予想され論外と言わざるを得ない。朝鮮半島の非核化にはあくまで粘り強い外交努力が欠かせない。 国務省では今月、ユン北朝鮮担当特別代表が辞任し、ナンバー3のシャノン次官も辞任の意向を表明したほか、駐韓国大使も空席が続いている。 政権がますます混乱状態に陥れば、北朝鮮に足元を見られかねない。トランプ氏は外交の空洞化を招いている責任を自覚すべきだ。