「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

            孫の犯罪

2007-08-24 05:40:29 | Weblog
ドフトコフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の新訳本が26万部も売れ「アマ
ゾン」の文藝本ランキングのベストテン入りしているという。60年前の夏
休み、僕は一夏かかって、この本を読んだ当時のことを思い出した。
今はまったく筋など忘れてしまったが、戦後の暗い時代、読了の達成感だ
けが残っている。

中学5年(新制高校2年)の夏休みだった。扇風機もない時代だった。窓
を一杯にあけ寝転がりながら、この本を読んだ。戦争中姉が結核でなくなり
一人っ子になった僕は引っ越してまもなく近所にも友人もいなかった。父の
48歳の時の子供なので、当時父は60歳を越えていた。”勉強せよ”とは
いわなかったが、いろいろと生活上の干渉がありうるさく感じた。だから僕
にとって読書が唯一の逃げ場であった。

山口県上関町の高校1年生の祖父殺人事件を知り、僕はあの当時の自分
の生活と重なりあった。孤独の話相手のいない自分に対して、些細なことに
まで口を出す父親がうとましく何度か取っ組み合いをしたこともあった。
事件の少年は両親が離婚し、祖父母宅に引き取られていた。祖父は教育熱
心でゲーム遊びにまで干渉していたようだ。僕には少年の気持ちがわかる。

僕にも高校1年の孫がいる。同じ屋根の下に住んでいるが、ほとんど僕は
孫の教育には無干渉、むしろ娘から怒られるほどだ。孫達はサッカーに夢
中で,娘夫婦もそのサポートに忙しい。僕が口を出す余裕などない。
少年の場合、両親の離婚の犠牲者である。犯罪は犯罪だが、なんとか立ち
なおる機会を与えてやりたい。