「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         「おくりびと」 母の想い出

2009-02-24 06:42:42 | Weblog
「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が第81回アカデミー賞の「外国語映画賞」を
受賞した。映画を見ていないのに語る資格はないのだが、本木雅弘演ずる
納棺師から、亡き母の死化粧の綺麗だったことを想い出した。33年も前の
ことだ。

母は昭和51年、当時僕が勤務していた札幌で82歳で永眠した。東京出身の
僕には札幌に親類縁者が1人もなく、葬儀一切は会社にまかせ家の宗派の
浄土宗でお通夜と告別式を済ませた。葬儀は出来るだけ質素にと思ったが、
会社の関係で、わが家にはふさわしくないもになってしまった。

納棺のまえに葬儀社から納棺師(当時僕はその名前をしらなかった)が二人
来て母を死装束に着替えさせてくれ、唇に紅を差し、お化粧をしてくれた。会
社の先輩は”こんな綺麗な仏さまはみた事がない”と誉めてくれた。

「おくりびと」の舞台は山形県の酒田市だそうだが、僕がうまれた東京でも老妻
の故郷、長野市でも死化粧は施すが、専門の納棺師については、それまで知ら
なかった。地方によってか宗派によってか違うのだろう。

「生」から「死」へと永遠の旅立ちである。昔の人は多分、それを考え最高のおしゃ
れをさせ、特別の装束を着させたのであろう。最近は葬儀はすべて簡素化される
傾向にある。お墓にいったって誰もいない、という歌まである。何かわびしい気持ち
になるのは僕だけであろうか。